要注意!火災保険がおりないケースとは?その理由と請求時の対処法
ここ数年、保険料の値上げが続いている火災保険。しかし実際に申請しても保険が下りないケースがあることを御存じでしょうか?どのようなケースが下りないのか事前に把握した上で、そのときの対処法や相談先を知り、もしもの時にキチンと備えましょう。
火災保険料の値上げ推移
近年、大型台風の接近や豪雨・冬の豪雪など自然災害の大型化・激甚化の影響で火災保険の支払いが増加しています。その影響を受け、ここ最近で4回の値上げが行われました。
2015年10月~ 最長保険期間を36年間から10年間へ短縮
2019年10月~ 地域やプランによっては+50%や+70%を超える値上げも
2021年 1月~ 築年数が浅い住宅への割引導入
2022年10月~ 最長保険期間を10年間から5年間へ短縮
2022年10月の改定では平均10%程度の保険料の値上げや、最長10年の保険期間を最長5年に短縮するような変更が行われました。これは長期的な自然災害リスクの増加に対応したものと言えます。また支払件数が増加している「水ぬれ」と「不測かつ突発的な事故」に対する自己負担額(免責額)が見直されています。
火災保険がおりないよくあるケース
火災保険は火災という名前がついていますが、火災以外の原因でも建物や家財の損失を補償してくれます。まずは火災保険で補償される原因を整理しましょう。
- 火災、落雷、破裂・爆発 :火災により損害を受けた等
- 風災、雹災、雪災 :台風で屋根が壊れた等
- 水ぬれ :給排水設備が破損し部屋が水浸しになった等
- 盗難 :泥棒により窓ガラスを壊された等
- 水災 :大雨による洪水で損害を受けた等
- 不測かつ突発的な事故による破損・汚損:模様替え中に壁に穴を開けてしまった等
上記のように、火災以外の自然災害や事故による損害も補償してくれるのが火災保険です。ただし火災保険も万能ではありません。次に火災保険で補償されない代表的な事例をいくつか挙げてみます。
そもそも契約していない
建物の火災保険は契約しているが、家財の保険には未加入というケースがあります。例えば建物の火災保険のみ契約しているケースで、給排水設備にトラブルがあり、屋内で水ぬれ事故があったとします。事故で天井や壁だけではなく家具や電化製品にも被害が発生したとしても、建物の火災保険のみでは家具などの家財の損失は補償されません。
該当する災害を補償する保険に未加入
火災保険は契約内容によって補償範囲が変わります。補償範囲が広ければ保険料も上がるため、保険料を抑えるために補償範囲を狭めていることがあります。そのため事故が起きた場合、そもそも補償範囲外であるというケースが見受けられます。よくある例として、水ぬれや不測かつ突発的な事故を補償外にしていて事故が起きてしまった、ということがあります。
雨漏りや強風等で吹き込んだ雨による水ぬれ
大雨や台風などが原因で雨が屋内に吹き込み、天井や壁などの水ぬれが発生する事故があります。建物の破損が伴った事故であれば補償範囲ですが、破損を伴わず雨が吹き込んだだけのようなケースでは補償されません。
免責金額に満たない
火災保険では、契約時に事故が発生した際の「自己負担額(=免責金額)」を選択します。保険会社によって異なりますが、おおむね免責金額なし~免責金額20万円までの間で契約者が決めることができます。免責金額が高ければ保険料が安くなるため、免責金額を高めにしている契約も少なくありません。仮に免責金額を10万円に設定し、事故発生時の損害金額が8万円だった場合、火災保険からの補償はありません。
経年劣化が原因の事故
建物は建築から年数が経過すると、屋根や壁が経年劣化で傷んできます。適切にメンテナンスを行っていない状態で事故が発生すると、災害で損傷が出たのかどうかの判断が難しくなり、補償されないケースが出てきます。また「火災保険で家のメンテナンスが可能です」と言ってくる業者がいますが、これは詐欺ですので決して利用しないでください。損害保険各社も注意喚起のアナウンスをしています。
損害が発生して3年以上経過している
火災保険を含む損害保険は、請求可能期間を事故発生から3年間有効としています。そのため3年以上経過すると時効となって補償されません。
地震や噴火、それらによる津波
地震を原因とする損害は火災保険では補償されません。地震を原因とする損害は地震保険で補償されます。
火災保険が昔のもの
2015年9月までは最長36年間の保険期間の火災保険があり、保険料も格安だったため、大部分の家庭が36年契約や30年契約を選択しています。しかしこのような超長期の火災保険は、補償範囲が現行の火災保険と比べて十分ではないことが多いようです。水災を例にとると、今は水災による損害額を100%補償してくれる保険が主流ですが、以前の火災保険では水災そのものが契約範囲外であることが多いです。また水災を補償する契約になっていても、契約上、十分な補償を受けられないケースもあります。
実際に保険を請求する場面になったら?
もし建物や家財に事故が発生した場合、基本的には以下のような流れで事故処理が進んでいきます。
1. まずは身の安全を確保する
2. 事故現場の写真や動画を撮る(携帯電話のカメラで可)
3. 保険会社のコールセンターに連絡する
4. 保険会社から保険金の請求用紙が届くので被害状況や被害金額、修理代金の見積もりなどを記入して提出する
5. 保険会社が被害金額を査定し、契約者に支払い金額を通知する
6. 契約者が支払い金額を了承すると保険金が支払われる
自然災害による事故が発生した場合は、まずは身の安全を確保するのが優先です。台風や大雨などで被害が発生しても、まずは避難を優先しましょう。身の安全が確保できたら、被害状況や事故の状況をスマートフォン等の写真や動画などで記録しましょう。もし手元にスマートフォンがなければ、メモを取りましょう。その際は大きさや広さ、高さなどが分かるものを被害箇所の横に置いて記録を残すと良いでしょう。
とりあえずの記録が取れたら損害保険会社に連絡します。近頃は電話だけではなく、LINEアプリやインターネットを使った連絡も可能な保険会社が増えてきました。自然災害発生時などは特に電話窓口が混み合うことも多いので、LINEアプリやインターネットの活用がおすすめです。損害保険会社に連絡すれば、今後の手続きについて詳しく案内があるので安心してください。
交渉で請求がおりる場合もある?
損害が発生して損害保険会社に請求した場合、自分が考えていた金額とは違う査定金額が提示されることがあります。そのような時はどうすればいいのでしょうか?
一つは損害保険会社のお客様センターなど、事故受付とは異なる窓口への問い合わせです。違う窓口に問い合わせたからといって、支払い金額が変わるということはあまりないかもしれませんが、担当者が変わることで違う提案を受けることができるかもしれません。
もう一つは日本損害保険協会が運営している「そんぽADRセンター」に相談することです。そんぽADRセンターは保険業法という法律に基づき、損害保険会社とのトラブルが解決しない場合の苦情の受付や損害保険会社とのトラブル解決のサポートをしています。支払い金額について納得できず、損害保険会社との交渉がうまく行かない時は相談してみましょう。
まとめ
保険は大きく分けると、生命保険と損害保険に分けられますが、火災保険や自動車保険などの損害保険については十分な補償範囲で契約しましょう。日本の公的年金制度や健康保険制度は充実していますが、自然災害や事故などによる損害については自己負担・自己責任です。
もしもの時に十分な補償が受けられなければ、大袈裟なようですが自分の人生が変わるだけではなく、他の人の人生を変えてしまうこともあります。まずは火災保険の補償範囲を確認し、不明な点があれば損害保険会社や加入した保険代理店に問い合わせることをおすすめします。