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終わらないガソリン価格高騰…なのに二重課税はおかしくない?

経済とお金のはなし 箕輪 健伸

終わらないガソリン価格高騰…なのに二重課税はおかしくない?

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「ガソリン価格」と聞いて、いくらぐらいを思い浮かべるでしょうか?ここ数年で車に乗り始めた方の中には、「150円くらい?」「170円くらいでしょ?」という方もいるかもしれません。しかし、ベテランドライバーの方の中には、「100円くらい」と回答する方もいるでしょう。

「石油情報センター」のデータによると、1990年以降でガソリン価格の史上最安値は、1999年6月7日に記録した1リットルあたり91円でした。しかし、それだけで、1999年と最近のガソリン価格にこれほどの差がでているという訳でもなさそうです。実は、税金にさらに上乗せするような二重課税の構造という、ガソリンならではの税制も大きく関わっているのです。

原油価格は1バレル100ドルから120ドルを推移

現在のガソリン価格は、全国平均で1リットルあたり170円台という高止まり傾向が続いています(5月16日時点)。特に地方に住む方にとって車は、「日常生活の足」として利用することが多く、生活必需品という側面があるものです。ガソリン価格の高止まりに頭を痛めている方も多いのではないでしょうか。

ガソリン価格を最も大きく左右するのは、言うまでもなく、ガソリンの原料となる原油価格です。ガソリン価格が1リットル91円を記録した1999年の原油価格は、1バレル20~30ドルでした。それが今年は大体、1バレル100~120ドルを行き来しています。「原料価格がこれだけ上がっているのだから、ガソリン価格が2倍近くになっても仕方がない」と感じる方もいると思います。しかし、ガソリン価格がこれほどまでに上がっている理由は、原油価格の高騰だけではないのです。

ガソリン価格が上がっているのは、原料価格の高騰に加えて、「Tax on Tax」と「当分の間税率(かんぜいりつ)」というガソリンならではの税制が大きく影響しています。

「二重課税」「当分の間税率とは?

税金
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「Tax on Tax」とは、税金に税金がかかっていることです。「二重課税」とも言われています。

車の燃料として使うガソリンの場合、もともと1リットルあたり53.8円の税金がかけられています。内訳は1リットルあたり48.6円の「揮発油税」と1リットルあたり5.2円の「地方揮発油税」です。つまり、ガソリン価格が1リットル170円であれば、そのうちの53.8円は税金なのです。ガソリンの税制に関しておかしいのはここからで、この53.8円の税金に対しても10%の消費税がかけられているのです。これが、「Tax on Tax」です。

ちなみに、1990年以降でガソリン価格の史上最安値だった1999年の消費税率は、5%でした。この5%分の消費税率の差も、1999年と現在のガソリン価格の差の要因というわけです。

そして、もう一つの「当分の間税率」とは、揮発油税と地方揮発油税に対して「当分の間」かけられている特例税率のことです。先ほど、揮発油税と地方揮発油税は1リットルあたり53.8円と紹介しましたが、これは実は本来の税率ではありません。本来の揮発油税と地方揮発油税を合わせた税率は、ガソリン1リットルあたり28.7円です。1リットルあたり、25.1円が「当分の間」上乗せされ続けている状況が続いているのです。財務省は、「財政事情が非常に厳しい状況にある」ことを理由にしていますが、納得できる人はどれくらいいるでしょうか。

政府はガソリンの小売価格が連続3カ月にわたって160円を超えた場合、この「当分の間税率」の適用を停止するとしています。しかし、前出の「石油情報センター」で価格推移を確認してみると、3カ月どころか1年以上にわたって、ガソリンの店頭での平均価格は160円を超えています。そんな中でも、一向に「当分の間税率」の適用が停止されるという話は聞こえてきません。

ガソリン税制はおかしい…できる対策はある?

BENZINと刻まれた重い石を背負った人
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現在のガソリンの税制について、「おかしいのでは?」と問われれば、筆者は「おかしい」と思いますし、多くの読者の方も同じ意見ではないでしょうか。

とはいえ、制度がいくらおかしくても、現行制度がそうなっている以上、従うほかありません。ガソリンスタンドに「税制がおかしいので、“Tax on Tax”と“当分の間税率”の分は支払いません」と言うわけにはいきませんよね。

私たちができることと言えば、今まで車で行っていた近所の買い物は、徒歩や自転車で行くようにするなど、できるだけガソリンを使わないように生活していくことくらいかもしれません。もちろん、ガソリン税制の抜本的な改革を公約に打ち出した政治家に投票するということも大切ではありますが、即効性はありません。

案外、「ガソリン価格の高騰をきっかけに歩くようになって、健康になった」ということになるかもしれません。そのくらい、何事も前向きに捉えて、たくましく生き抜いていくしかないと筆者は思います。