マイナンバーと預金口座が勝手に紐づけされるの!?口座管理法とは
監修・ライター
令和6年4月1日から口座管理法が施行され、いよいよ本格的に預金口座とマイナンバーの紐づけを行う手続きが銀行などの金融機関の窓口で始まりました。これにともない、「預金口座にマイナンバーが強制的に紐づけられてしまう」「すべての財産を管理されてしまう」などの不安の声がSNS上では叫ばれています。
そこで本記事では、口座管理法とはどのような法律で、マイナンバーとの紐づけは実際にどのように行われているのかを整理したうえで、メリットとデメリットについて解説します。
そもそも口座管理法とは?
口座管理法とは令和3年に成立した法律で、正式には「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」といいます。この法律が成立する際に、成立から3年以内に預貯金口座への個人番号(マイナンバー)の付番を始めることが決定されました。そして、その付番が実際に令和6年4月1日から始まったわけです。
口座管理法は何のために?
口座管理法のおもな目的は、相続時や災害時などに、預金口座の所在を簡単に確認できるようにするためです。
相続を経験したことのある方であればご存知かもしれませんが、亡くなった方がどの銀行に預金口座を持っているのかを調べるのは、実は簡単なことではありません。頻繁に入出金を繰り返している口座であればすぐに分かりますが、複数の金融機関に定期預金などがあり、満期が来たら自動継続されるように設定してあるような場合は、証書などが見つからなければ口座の存在を知ること自体が非常に困難になります。
これが災害時となるとさらに深刻で、災害で亡くなった方の預金口座などを親族が調べようとしても、通帳も証書も紛失してしまっていることが多いため、すべてを正しく調べるにはかなりの手間と時間が必要です。
こうした状況を鑑み、マイナンバーを口座に紐づけすることで利用者及び相続人等の利便性を高めようとしたのが、この口座管理法のおもな導入目的です。
マイナンバーと預金口座はすでに紐づけられた?
冒頭で述べたように、4月1日から口座管理法が施行されました。では、私たちの口座はすでにマイナンバーと紐づけられてしまったのでしょうか?
紐づけるかどうかは本人次第
口座管理法では、利用者が新規口座を開設する際に、マイナンバーと預金口座とを紐づけるかどうかを金融機関が確認することを義務化しています。したがって、4月1日以降に新たに口座を開設した人のうち、ご自身の意志でマイナンバーとの紐づけを希望された方の口座に関しては、マイナンバーとの紐づけが行われています。
しかし、それ以外の人は、口座番号とマイナンバーの紐づけは行われていません。
ですから、X(旧ツイッター)やTikTokなどで拡散されている「4月1日以降に自治体などから届く書類を返送しないと、預金口座のすべてが自動的にマイナンバーに紐づけされる」ということはありませんし、今のところそのような法律も作られていません。
マイナンバーを口座に紐づけて得られるメリットとデメリット
ではここであらためて、マイナンバーを口座に紐づけるメリットとデメリットを整理してみます。まずはメリットからです。
預金口座との紐づけで得られるメリット
マイナンバーカードと預金口座を紐づけて得られるメリットは、上述のように、相続や災害などの際の手続きが圧倒的に楽になることです。災害に関しては、生涯被災することのない人の方が多いと思いますが、相続に関してはすべての人が必ず関わります。相続人となった経験のある筆者としても、このメリットはかなり大きいといえます。
ただし、これは相続の際に相続人が得られるメリットであり、口座とマイナンバーを紐づけしたご本人が得られるメリットでない点には注意が必要です。
預金口座との紐づけによるデメリット
では反対に、預金口座にマイナンバーを紐づけることによるデメリットについて考えてみます。「隠し口座がバレてしまう」などの特殊な例を除けば、一般的に口座との紐づけによって考えられる最大のデメリットとは、個人情報の漏えいです。
令和5年12月に、マイナンバーと紐づけられた健康保険証の情報に関して、政府が住民基本台帳と照合したところ、氏名などが一致しないケースがおよそ139万件にのぼっていることが報道されました。
このうち450人程度は別人の情報が紐づけられていると推測されていることから、マイナンバーカードと預金口座が紐づけられてしまうと、本人の預金口座の情報が第三者に流出してしまう恐れがあります。
これまでも、マイナンバーカードと一体化した健康保険証に他人の情報が登録されていたケースや、国の給付金などを受け取る公金受取口座に本人以外の口座が登録されていたケースなどは後を絶たず、紐づけのミス以外にも誤って家族の口座を登録してしまったと思われるケースも14万件ほどもありました。
こうしたトラブルの数々から考えると、口座番号との紐づけ時に何らかの間違いが生じ、その結果自分の財産の内訳が第三者に流出してしまう恐れは今後も否定できません。これが、預金口座にマイナンバーが紐づけられる最大のデメリットとなります。
もちろんこれ以外にも、将来的にはハッキングなどにより大量の情報が流出してしまう恐れも可能性としては挙げられます。
問題の本質はマイナンバー制度に対する不信感
少子高齢化が進み、自治体などが提供するサービスも従来通りに行うことは難しくなることから、一般企業だけでなく政府自治体もDX化を進め、より効率的な運営を行わなければなりません。今回の口座管理法の導入も、こうした社会全体のデジタル化の流れから生まれた施策のひとつです。
相続手続きに関しては、被相続人の全口座がマイナンバーと紐づけされていれば簡単に情報が取り出せるため、大変便利です。ですが、SNS上で間違った情報が錯綜したりデマが飛び交ったりするのは、マイナンバー制度に対する不信感からです。
新しいことに取り組む際に失敗をする点がでてくるのは仕方ありませんが、国民が安心してより進化したデジタル社会を迎えられるように、政府にはできるだけ丁寧な説明を辛抱強くしていただくことを望みます。