【ここに注意】親や祖父母からの財産贈与時、知っておきたいミニ知識
目次
監修・ライター
日本には、約50種類ほどの税金があります。所得税や住民税、消費税などは身近な税金ですが、贈与税や相続税は、滅多にお目にかかることがありません。今回は、もしもの時に備え、贈与税について注意しておきたいことを見ていきましょう。
「贈与」って…何ですか
贈与とは一言でいうと「お金や物をあげること」をいいます。一般的には、親が金銭を子供にあげたり、または祖父母がお孫さんに不動産などの物(財産)をあげたりと、下記のようなケースがあります。
①祖父母がお孫さんに110万円のお金をあげた
②親が、子供に自宅をあげた
③親が、住宅を購入する子供に住宅取得資金500万円をあげた
こんなシーンも贈与にあたる
贈与となる行為は、日常のちょっとしたシーンにも潜んでいます。次のようなアクションを行おうとする時には、注意が必要です。心配な時は、税務署や専門家にご相談ください。
①親が払っていた生命保険の満期保険金を子供が受け取った場合
②同居する親の名義の家屋に、子供が増改築工事をした場合
③子供のローンを親が、肩代わりして一括返済した場合
贈与税を納める時ってどんな時?
年間110万円までの贈与は非課税
一定額を超える財産の贈与があると、もらった人に税金がかかります。この税金のことを「贈与税」といいます。ただしその年の1月1日から12月31日までの間に、一人あたり110万円までの財産をもらっても贈与税はかかりません。この課税方法を「暦年課税」と言います。
110万円を超えた場合は、翌年の3月15日までに税務署で確定申告と納付が必要となります。年間に受けた贈与の価額が110万円以下であれば申告の必要はありません。ちなみに、法律用語では、財産をあげる人のことを「贈与者」、もらう人のことを「受贈者」と言います。
贈与の申告は、誰がするのか
贈与税の申告は、財産をもらった方(受贈者)が税務署で確定申告を行います。同じ時期に、所得税の確定申告も行われています。贈与税の申告は、所得税の確定申告と別の様式の申告書となるため注意が必要です。
父母からそれぞれ110万円の贈与を受けた場合
ここで一つ、贈与についてのご相談例を見てみましょう。
相談内容
私は、令和6年6月にお父さんとお母さんから、それぞれ110万円ずつ現金をもらいました。合わせて220万円もらったので、お父さんに「贈与税はかからないの?」と尋ねると、「一人あたり年間110万円までは、贈与税はかからないから大丈夫だよ」との回答でした。本当に大丈夫なのでしょうか。
回答「一人あたり年間110万円」と言うのは…
ご相談者は、令和7年3月15日までに、贈与税の申告と納付が必要となります。「一人あたり110万円まで贈与税がかからない」と言うのは、現金や財産をもらう受贈者ごとに年間に110万円までもらっても、贈与税がかからないという意味です。今回のご相談者は、受贈者として年間に110万円×2人=220万円の贈与を受けたことになります。
従って、ご相談者は、翌年の3月15日までに贈与税の確定申告を行い、贈与税を納付する必要があります。ただし、令和5年税制改正において「相続時精算課税制度」の特例を適用した場合は、要件を満たし申告を行うことにより、贈与税の納税をしなくてよい方法もあります。
課税されるのはもらった220万円から基礎控除110万円を引いた110万円です。これに10%の税率をかけた11万円を納めることになります。税率は課税額によって変わります。
参考:「贈与税の速算表」
贈与は、二人の共同作業です
「あげるよ」と「ありがとう」が成立して初めて「贈与」となる
親が子供に100万円の金銭をあげる場合、親が「100万円をあげるよ」と言って金銭を渡し、子供は親に「ありがとう」と言えることが「贈与」の考え方の大前提となります。従って下記のような取引は贈与として認められません。
①父親が認知症などで意思能力がないにも関わらず、子供が勝手に引き出してお金をもらった
②息子が知らない間に、父親が勝手に、息子名義の通帳に100万円を振り込んでいた
税務署がチェックする視点は…
正しく贈与をした場合、その財産は贈与者(親)から受贈者(子)に移転しています。しかし、双方の同意が行われていない場合、その財産は贈与とならず、移転せずに贈与者(親)のところに存在していることとなります。そうすると将来、父親に相続税がかかる場合、税金が増加することがありますので注意が必要です。
双方の同意が行われ、正しく贈与ができているかどうかを税務署は何で判断するのでしょうか。その一つに「贈与契約書の有無」があります。
他にも下記のようなケースがあり、これらを総合的に勘案して判断します。
①贈与税の申告を正しく行っているかどうか
②税務当局は質問検査権があるため、贈与した親に意思能力があったかどうかを、病院や施設に確認する
③贈与の手続きを行った銀行へ、筆跡が贈与者(親)のものであるかどうかの調査に行く
贈与契約書の作り方とは
家族間での贈与で、わざわざ贈与契約書を作成しなくてもいいのでは…と思うところですが、出来る限り、贈与契約書を作成することをおすすめします。110万円以下の贈与であっても、贈与契約書は作成しておきましょう。
特に定められた形式はない
贈与契約書は特に定められた形式はありませんが、一般的に次のような内容が盛り込まれているとよいでしょう。
①贈与する財産の内容(金銭、不動産、株式など)
②贈与した年月日
③贈与者(あげた人)と受贈者(もらった人)の住所・自署押印
パソコンで作成しても大丈夫?
贈与契約書は、手書き、パソコンどちらでも認められます。その場合、贈与者と受贈者の住所までは、パソコンで作成してもよいですが、氏名の部分は自署しておくことをおすすめします。将来、トラブルになった時でも、お互いの同意のもとに贈与があったことの客観的証拠として有用になります。
「贈与契約書」をより強いものにするために
贈与者と受贈者が、贈与契約書を作成し契約を交わした後に、できれば近くの公証役場で、贈与契約書に「確定日付」をもらいましょう。作成された贈与契約書に、日付を押印してくれるスタンプのことを「確定日付」といいます。一通につき700円がかかります。
日付の大切さ
家族で贈与契約書を作成して日付を記入しても、その贈与契約書がその日に作成されたかどうかを客観的に証明することができません。そんな時、公証役場で贈与契約書に確定日付を付してもらうことにより、贈与契約書が存在していた日を証明することができます。
まとめ
今回の記事で、押さえておきたい要点をまとめます。
①生前に財産をもらうことを「贈与」といいます
②贈与税は受贈者(もらった人)が年間110万円以下の贈与であればかかりません
③贈与は、「あげるよ」と「ありがとう」の両方が成立していることを言います
④贈与契約書を作成しておきましょう。署名は自署が望ましいです
⑤出来れば公証役場で「確定日付」をもらっておきましょう
税金のことは、学校などではなかなか学ぶ機会がありませんが、大人になって、いざ現実にお目にかかると、知らないまま通り過ぎてしまいそうなことが多々あります。
税金の法律は、「知らなかった」が通用しない厳しい内容もたくさんあります。
逆に、知っておいてお得な税金の情報もたくさんありますので、みなさんもぜひ興味を持ってみてくださいね。