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躊躇わずに転職してもOKの時代、でも注意が必要な4つのお金の事

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

躊躇わずに転職してもOKの時代、でも注意が必要な4つのお金の事

ライフプラン3.0世代、Z世代は転職にためらいがない?

先日、若い世代の特性について話を聞く機会がありましたが、転職へのためらいは小さくなっているという指摘がありました。

かつて、団塊世代(今70歳代)の頃は「ひとつの会社に就職から定年まで働き続ける」という不文律がありました。会社が倒産したとか、余程やむを得ない事情がなければ転職は想定されておらず、転職者はむしろ「何か辞めざるを得ない事情があったのであろう」と陰口を叩かれたものです。いわゆるライフプラン1.0世代の話です。

現在、40歳代から50歳代にかけての世代、ライフプラン2.0の世代はどうかというと、転職そのものはよくあることになりました。転職経験者と、ひとつの会社しか勤めたことのない会社員の割合は逆転するほどになりました。一方で、転職をしてきた社員は役員人事などで冷遇される(外様扱い)慣習があったりしました。

今は転職がキャリアにマイナスの影響を及ぼすことはほぼありません。転職してきた人材が役員になることも珍しくありません。

新卒社会人を対象とした調査では、就職先の会社でいつまで働きたいかという質問にたいし、「定年まで」が21.1%で、10年前の同調査結果が35.1%だったことから、大きく減少していたそうです。

別の調査では、若い世代ほど転職意識が強く、「今の仕事は3年以内に転職するつもりだ」と回答した人が47.8%とほぼ半数となっています。上の世代になるほどその割合は低くなるので、若い世代の転職意識の高さが伺えます。

転職することは問題なし。でも、3つのキーワードでしっかり考えてみよう

多くの人がもう転職についてタブーと考えていませんし、そう考えてためらう必要はありません。

ではマネープランの目線で考えた時はどうでしょうか。もっとも重要なのは「年収が上がるかどうか」でしょう。今の会社の年収では生活に余裕が生じない、また自分の能力に見合った年収ではないと感じた場合、これは転職活動を決意する大きな動機となります。

あるいは「職場環境、人間関係の問題」も転職を考えるに値するキーワードです。ハラスメントが放置されている、理不尽なストレスがキツい、ブラック企業である……それらの改善の見込みがないというような場合は、無理をして頑張り続けるよりも転職をして良好な職場環境に移ったほうが得策です。

そしてもうひとつは「自分の能力向上、仕事の満足度」といったキーワードです。自分の成長、また仕事への意欲と職場がマッチしておらず、その改善の可能性が乏しい場合もまた、転職をする理由となるでしょう(とはいえ、一度は会社の人材配置の意図を面談で確認してみてください)。

3つのキーワード、シンプルにいえば「年収」「環境」「仕事」ということになります。今のあなたは自分の仕事を分析してみた時、2つのキーワードで黄色信号がつくというのなら転職を考えてもいいと思います。

大事なことは「無職期間は作らない」「次の職場での目標を考えておく」こと

近年は、全国的な人材不足もあいまって、転職を考えている人にとっては募集も多くチャンスが広がっています。しかし、なんとなく転職をしたり、なんとなく辞表を出して「辞めてから考えよう」はあまり得策ではありません。

転職活動は「辞めてから考える」より、「辞める前に決めておく」ことをおすすめします。次の仕事がなかなか決まらずイライラしながら次を探すくらいなら、今の仕事をちょっとゆるめにしながら次を見つける方がいい。納得のいく条件がみつかったら転職を決めればいいのです。

同時に「転職をして、どうするか」を考えながら転職活動をします。面接を受けているうちに、今足りなくて転職に求めているものがハッキリしてきますが、見極めが大事です。新しい職場に求めているものをはっきり示せる人は、面接でいい条件の結果も出るものです。

今の職場から「逃げる」ことが転職の目的ではなく、次の職場での「成長」を目的としてみてください。

転職で注意したい4つのお金のこと

転職をためらう必要がない時代とはいえ、転職が「お金」の面で損がないか事前にきちんと確認をしておきましょう。

①退職金がこまぎれになる恐れがある……一般的に退職金は入社~定年までを1つの会社に勤め上げたものとしてモデル金額が説明されます。転職すれば、当然ながら退職時までの勤続年数に応じた退職金をもらって終わりとなります。

この時、多くの会社では短期在職で自己都合退職をした場合、退職金額を減額する設定となっているため、「(40年1社で勤めた退職金額)>(10年ごとに転職し4社に勤めた場合の退職金合計額)」となることに注意が必要です(いずれの会社もモデル退職金が同じだったと仮定)。

また、転職時にお金をもらってしまうと60歳以降のために残しておくことは難しく、老後のお金の準備については自覚的になる必要があります。この点は転職のウイークポイントです。

②確定拠出年金の手続きを忘れないこと……退職金・企業年金制度の一部として確定拠出年金制度を会社が実施している場合、転職時に全額を引き出し(3年以上の勤続なら減らされることもない)、別の確定拠出年金口座に移すことになります。これにより取り崩しを防ぎ、確実な老後の資産形成とすることができます。

転職先に確定拠出年金があれば転職時に申し出れば引き継ぎが行われ、ない場合はiDeCo(個人型確定拠出年金)に移します。iDeCoの場合、自分で口座開設と資金移動の手続きをする必要がありますので、忘れずに手続きしましょう。

退職時の中途解約は原則できませんので、(残高が1万5000円以下で退職した場合などごくごく限定的に認められる)注意してください。

③公的年金には影響なし……転職をして会社員で働き続ける場合、新たに厚生年金に加入し直すことになりますが、加入の履歴は国の方で一元管理されています。働き続ける場合は年金制度ではマイナスが生じません。

無職期間が長くなる、あるいは独立してフリーランスになる場合等は、国民年金の手続きをして保険料を自分で納めます(市区町村役場で手続き)。またこの場合、年金額も下がってしまいます。基本的には中断期間を長く置かずに転職する方がいいでしょう。

④自己都合で辞めても雇用保険のお金をもらえるが制限がある……いわゆる失業給付(雇用保険の求職者給付)というのは、本来会社が倒産するなどいきなり無職になった人がもらう仕組みですが、自己都合で辞表を出した人も対象です。ただし会社が倒産していきなり無職になった人と比べて、支給開始が遅れたり、支給日数が少ないなどの制限があります(現況は、退職から2カ月と7日待たないと給付がされず、勤続10年未満の離職なら90日間の給付ですが、2025年4月より、2カ月の待期期間を1カ月に短縮するほか、教育訓練を受けている場合、待期期間をなくす改正が行われる予定です)

転職を、お金の問題とキャリアの問題を一気に解決するきっかけに!

新しい会社はあなたの人生を大きく広げてくれることがしばしばあります。

私の友人にも「年収アップ」「仕事でもスケールアップ」「職場関係は良好」とすべての条件で前の会社よりもステップアップしたという人がいますが、そういう転職となればまさに人生が大きく変わってきます。

しかし、その友人も転職前は不安を抱え悩んでいたものです。特に新しいチャレンジがうまくいかなかったらどうしようとか、今の会社に迷惑をかけないのかと逡巡を繰り返していました。

今の仕事や職場の環境に不満を感じていてステップアップを考えているなら、お試しでいいのでまずは転職サイトやアプリを活用してみましょう。

もしかすると、その後の人生数十年を大きく左右することになる第一歩を踏み出すことになるかもしれません。