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クレジットヒストリーって?米国でなぜ重要なのか、分かり易く解説

N.Y.発、安部かすみの今気になる最新マネートピック 安部 かすみ(あべかすみ)

クレジットヒストリーって?米国でなぜ重要なのか、分かり易く解説

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最近日本でも聞かれるようになった「クレジットヒストリー」。クレカ大国アメリカでは、住宅や自動車のローンを組む際や2枚目以降のクレジットカードを申請する際に「鍵」となるものです。日本で重要とされている信用情報にあたるもので、最近は「クレヒス」という言葉と共にその概念が少しずつ浸透しつつあるようです。どうすればクレジットヒストリーは良くなるのでしょうか? 日本における与信とはどう違うのでしょう?本記事では特にアメリカ生活で重要とされているクレジットヒストリーについて解説します。

財布を忘れたことで誕生したクレカ

クレカ大国アメリカでは、住宅や自動車などのローンを組む際、または2枚目以降のクレジットカードを申請する際などに「個人の社会的信用度を測る鍵」として、昔から「クレジットヒストリー」(信用履歴)が重要視されてきました。

日本では最近「クレヒス」と呼ばれているようで、クレヒスという言葉がその概念と共に、少しずつ浸透しつつあるようです。クレヒス自体はまだアメリカほど重視されていないようですが、日本でも昔から信用情報(CICなどの記録)はローンなどの審査に影響を与えるものです。

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以前の記事で、近年キャッシュレス決済が日本をはじめ世界中で広まりつつあると書きました。キャッシュレスの原点はクレカ決済であることはいうまでもないです、そのクレカが誕生したアメリカは世界でも有数のクレカ大国です。

クレジットカードの誕生は第2次世界大戦が終わって間もない1950年(昭和25年)に遡ります。その前年、ニューヨークのマンハッタンにあるレストランでビジネスマンのフランク・マクナマラ氏がクライアントのラルフ・シュナイダー氏と食事をした際、財布を忘れたことに気づきました。この思いもよらぬハプニングがクレカの概念の原点に繋がります。

結局、夫人に現金を届けてもらいなんとか支払いを済ませたものの、財布の到着を待っている間は相当気まずかったようです。これがきっかけとなり、現金を持ち歩かずに支払いができる方法として翌50年2月に紙製のダイナースクラブカードが発明されたのです。

まさに、グローバルに浸透するキャッシュレス経済、クレカ文化への移行の端緒となったのです。
※ダイナースとは「食事をする人」という意味。

ダイナースクラブカードの使用は当初地元のレストランでのみ許可されていましたが、利用範囲は徐々に小売店にも拡大されていきました。金融機関のキャピタルワンの情報によると、翌51年までにダイナースクラブの会員数は4万2000人規模に膨れ、53年までにカナダ、キューバ、メキシコ、イギリスでも使えるようになったといいます。

日本初のクレカもダイナースクラブカードでした。アメリカに遅れること10年後の60年(昭和35年)、日本のダイナースクラブが創立されました。

ちなみに現在のようなプラスチック製のクレカを発行し始めた会社は諸説あります。日本のダイナースクラブは自社であると公式ホームページで言明していますが、アメリカでは「1959年にアメリカで」と言われています。国立アメリカ歴史博物館の公式ホームページには「プラスチックの BankAmericard (Visaの前身) および American Express カードが1950年代後半に消費者に提供されました。Master Charge (Mastercardの前身) は1966年に続きました」と書かれています。

国立アメリカ歴史博物館の情報によると、現在のようなプラスチック製クレカに磁気ストライプが追加されたのは80年代ということです。このストライプ技術の浸透により支払い処理がより速くより安全になり、クレカの使用が世界中の国々に広まったのです。

クレジットヒストリー(通称クレヒス)とは?

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そのようにして世界中に浸透したクレカ。今では日常使いされています。

次にクレジットヒストリー(クレヒス)についてです。冒頭で「クレヒスとは信用履歴=個人の信用度のこと」だと説明しました。つまりクレカを使い(お金を借りて)支払い期限までに返済した記録のことで、クレジット会社や金融機関が申し込んだ人の信用を判断するために利用するものです。

アメリカでは住宅や自動車のローンを組む際に、また2枚目以降のクレカを申請する際に、社会的な信用度の物差しとして広く利用されています。クレカ企業や住宅ローン貸付業者、家主などがクレヒスを確認し、過去にその人が金融債務をどのように管理してきたかを評価したり、お金や不動産の融資を任せられる人物かどうかを判断したりするのです。

クレヒスが良好な人はクレジットスコアが高くなります。そうすると賃貸住居の申請がしやすくなったり、低利率でのローンが可能になります。逆にスコアが悪いと、賃貸住居の申請が通りづらくなったり、ローンの際により高い金利が適用される場合があります。アメリカ社会でクレジットヒストリーが重要視される理由はそこにあります。

ちなみに個人ローンの資格を得るには、クレジットスコア次第です。クレジットスコアは一例として300~850の範囲で評価され、スコアが高いほど信用度が高いと見なされます。どの程度のローンをするかによっても異なりますが、一般的な個人ローンには580以上のクレジットスコアが必要とされています。もちろんケースバイケースで異なってくるものです(クレジットスコアは複雑なため、別の機会に説明します)。

日本人が留学や転勤などでアメリカに移住する場合、最初はクレジットヒストリーがありませんよね。その場合、まずアメリカで開設した銀行口座と紐づくセキュア・クレジットカード(セキュアカード)を銀行で発行してもらいます。それを最初はクレジットカードのように利用してクレジットスコアを構築します。

セキュアカードは見た目も通常のクレカと大差はありません。セキュアカードを申し込むと、銀行口座にデポジット(補償金の貯金)をします。その額はさまざまですが、最低補償金は200ドル(約3万円)程度からスタートするのが一般的です。つまり500ドルのデポジットをしたら500ドル分をクレジットカードのように利用できるようになります。

大学に在籍している場合は学生用カード(ディスカバー学生用クレジットカードなど)でもクレジットスコアを構築できます。そのようなセキュアカードの利用で、毎月の支払いを期日通りに行い、少しずつ信用を構築して正式なクレカを作り、その後も同じように信用を構築しながら強力なクレジットヒストリーを形成するのです。

クレヒスと日本の与信は何が違う?

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クレジットヒストリーと日本における与信(信用供与)は何が違うのでしょうか?

与信とは「信用を与えること」という意味です。金融機関やクレジット会社が「いくらまで貸せるか」を判断する際、収入や借入状況、クレヒスなどが総合的に評価されて決定されます。例えば「クレカの利用限度額は~~万円」といった利用限度額(利用可能額)が決まるのは与信審査の結果です。クレジットヒストリーは与信判断の重要な要素の一つであり、クレヒスは過去の実績、与信は未来への判断とも言えるでしょう。