「住宅診断」で安心を手に!中古住宅を売買したい人も注目
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監修・ライター
ホームインスペクションとは、第三者の専門家が住宅の状態をチェックする「住宅診断」のこと。一見キレイに維持されている中古住宅でも、よく調べたら構造部分の劣化が進んでいるなど、表に現れない問題が隠されていることもあります。
こうした中古住宅の問題点を事前に見つけてくれる専門家が「ホームインスペクター(住宅診断士)」。一般的にはあまりなじみのない名称ですが、住宅を売りたい、買いたい人にとっては強い味方!
今回は住まいの専門家・松山真介さんと一緒に「さくら事務所ホームインスペクション九州」(福岡市博多区)に伺い、代表の河本敬嗣さんに「ホームインスペクション」について教えていただきました。
購入前に住宅の状態がわかれば、購入する価値があるかどうかの判断基準に!
中古住宅を購入する時に心配なのは、やっぱり“安心して暮らせる住宅かどうか”という点です。
「アメリカでは、州によって違いはあるようですが、住宅取引の際にホームインスペクターが建物の状況を確認し、その結果を購入時の判断材料にするというケースが多いようです。日本ではまだ一般的とはいえませんが、徐々に浸透してきています」(河本さん)
日本では、2009年にNPO法人日本ホームインスペクターズ協会が「公認ホームインスペクター」という民間資格をつくり、資格試験を行っています。
「住宅を診断して、ここがこんなふうに劣化していますという部分を“見える化”することは大事です。その結果で、『買わない』という判断をする人もいれば、『自分で直すからちょっと価格を下げて』と交渉する人もいるでしょう。判断基準がはっきりすれば、売り主も買い主も安心して取引できます」(松山さん)
4万5000円から可能な「住宅診断」。お手ごろ価格で”安心”を手に入れる
同社の場合、住宅の構造、面積にもよりますが、調査にかかる費用は4万5000円~(税別)。調査する時間は約2~3時間。思った以上に時間も費用もお手ごろです。
実際に調査した資料を見せていただきました。写真上が調査書です。外壁、建物の基礎、室内、床下、設備、小屋裏(屋根と天井の間の空間)など、100項目以上にわたって調査をします。
室内では、床の傾きがないか、水じみの跡はないかなど、丁寧に見ていきます。
年々ニーズが高まっているホームインスペクション(住宅診断)ですが、いざ依頼するとなると、何を基準に選べばいいか迷いますよね。
河本さんは「ホームインスペクション業者を選ぶポイントは、第三者性と技術力」と言います。
「ホームインスペクターは、売り主と買い主、どちらかの側に立つのではなく中立の立場で調査し、事実を伝えなくてはなりません。技術力を判断するには、会社の評判や実績をよく調べてみるといいでしょう」
なお、一般財団法人福岡県建築住宅センターでは「住まいの健康診断」という助成金が出る制度があります(諸条件あり)ので、福岡県在住の方はこちらを活用して「住宅診断」する方法もあります。
国も「住宅診断」を後押し。平成30年4月からは中古住宅の売買に「建物状況調査の記載」が必須に!
国の方針も「ホームインスペクション」の普及を後押ししています。
平成30年4月1日に改正宅建業法が施行予定(平成29年4月1日より一部施行)で、中古住宅を売買する際には「建物状況調査の記載」が必須になります。重要事項説明書(※1)に建物状況調査の実施の有無及び、調査をした場合はその結果を必ず記載することが求められ、調査を実施していない場合は、調査を希望するかどうかを買い主に確認しなければならなくなります。
この法律に基づく建物状況調査を行えるのは、「既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士」です。
(※1)重要事項説明書:物件の内容、取引の条件など、契約を決めるために必要な情報が記載された書類
この法改正には、日本の住宅流通事情の変化が背景にあります。
「これまでの日本の住宅流通は、欧米などと比べて新築物件に偏ったものでした。しかし、これからは既存住宅の取引も活性化していこうという流れになってきました」と河本さん。
松山さんは「税法で規定される資産の価値をはかる「法定耐用年数」と、建築の構造的な耐用年数はまったく別なんです。法定耐用年数を超えたから単純にダメというわけではありません。これからは、今ある良質な建造物を活用していくという視点がますます必要になってくるでしょう」と話します。
これから住宅を売り買いしようと考えている方にとって、「ホームインスペクション」はますます欠かせない存在になりそうですね。
《取材協力》さくら事務所ホームインスペクション九州