トランプ政権によってもたらされる家計への影響は?
トランプ大統領が今年の1月に就任して以来、アメリカではTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)離脱をはじめとする大胆な政策が打ち出され、良くも悪くも日本でもその影響が拡がっています。難しい話は抜きにして、これから私たちの生活にどのような影響があるのでしょうか?
昨年11月のアメリカ大統領選以降、トランプ相場やトランプノミクスという言葉が生まれるほど、アメリカではドル高、株高、長期金利高が進みました。その影響を受け、日本でも円安、株高が進み一見すると景気が回復してきたように思えます。しかし、喜んでばかりいられません。実は、私たちの生活に悪い影響も出始めています。今回はそんな時代を背景にして、私たちはこれからどのように家計や資産を守っていく必要があるのか一緒に考えていきましょう。
1.家計への影響
今春から、私たちの家計に影響を与えるさまざまなものが値上げしています。
例えば光熱費。これについては大手電力10社や都市ガス大手4社が値上げをしました。この背景には資源高もありますが、為替の影響も少なくありません。家計の中でも毎月必ず負担しなくてはいけない光熱費の負担増は家計にとってダメージが大きいですね。
次に食費や日用品。オリーブオイルやバターやチーズ、トイレットペーパーの一部のメーカーは約10%値上げすると発表しています。これは原材料の不作や輸入価格が上昇していることが原因。普段の買い物でも今後負担は増えていきそうです。
続いて嗜好品や娯楽費。一部のタバコや車のタイヤ、国際線の旅客運賃(燃油サーチャージ)等も値上げとなっています。少なからずともこちらの値上げも私たちの家計に影響はありそうです。
またトランプ政権とは関係ありませんが、生命保険や国民年金保険料、はがきの切手代も値上げとなっています。生命保険については、昨年からのマイナス金利の影響で今年の4月から生命保険会社各社が予定利率を下げ、積立商品を中心に保険料が値上がりしました。国民年金保険料については段階的に毎年引き上げられており、今年の4月から毎月の保険料が230円高くなりました。はがきの切手代については、6月から52円から62円に引き上げられます(封書は82円のまま据え置き)。
2.家計を守る
なんだか値上げのニュースばかり聞いていると、将来のことがだんだん不安になりますが、嘆いているばかりでは問題は解決しません。私たちに何ができるかを一つずつ考えていきましょう。
まず毎月おおよそ決まった額が出ていく固定費「光熱費」については、今年の4月から一部の地域で都市ガスが自由化されたことに注目を。これにより、契約ガス会社を変えることで光熱費を大幅に削減できるケースがあります。また昨年から電力も自由化となっています。これからは、電力会社でガスもまとめて契約するか、ガス会社等で電力を契約するか、よく検討して光熱費の見直していく必要があるでしょう。
生命保険の保険料については、もうすでに値上がりしていますので今から見直すのは手遅れです。しかし、無駄な保障がないか、同内容で少しでも保険料が安い保険会社はないか、などの見直しは有効といえます。最近保険を見直していないという方は、検討されてはいかがでしょうか。
これら固定費の見直しは、一度見直すと翌月以降は何もしなくても節約できているため、家計見直しの中で一番効果的な見直しだといわれています。
最後に流動費。食費や日用品、娯楽費などはその月によって出ていく金額は違うでしょう。なかなか把握しづらい出費ですが、家計簿をつけるなどして、どこかに無駄がないかをチェックしてみてはいかがでしょうか。毎月の支出をしっかりと把握して翌月からの予算をきっちりと立てていくことができれば、家計を守ることはできます。
3.資産を守る
昨年の大統領選以降急激に円安が進んだり、最近の世界情勢不安により円高が進んだりと、為替相場はとても不安定です。でも長期的に見た場合、トランプ大統領の発言通り「強いアメリカ」が実現できたとすると、今よりも円安になるといわれています。円安が進むと前述した食料品や日用品などの値上げばかりではなく、私たちの貯金(現預金)も実質価値が下がったことになります。
この問題を解決してくれるのが、外貨投資です。徐々に価値が下がる「円」に資産を置いておくより、今後上昇が期待されるドルなどの「外貨」に資産を預けておくことで、今後予想される物価上昇(インフレ)にも対応できるといえます。
みなさんの中には、「私はずっと日本にいて外国には行かない(住まない)から関係ない」と言う人もいるでしょう。はたしてそうでしょうか。
今まで見てきたように、ずっと日本に住んでいても円安が進めば食費や日用品、光熱費等が値上がりしていきます。ということは、どんどん家計が逼迫(ひっぱく)していくということです。
ここで簡単な事例で説明します。
現在「1ドル=100円」と仮定します。この為替レートが将来「1ドル=200円」になると、輸入食品や原材料が高騰して今まで100円で買えていたものが200円を出さないと買えなくなります。しかし今、外貨投資を始めて「100円」と「1ドル」を交換しておくと、将来円安となった場合でも十分に対応できます。
外貨投資といっても、直接ドル預金など外貨預金を始める必要はありません。保険会社で販売されている外貨建ての生命保険や、銀行や証券会社で販売されている外貨建ての投資信託に投資することで、間接的ではありますが外貨を保有していることと同じ効果があります。
このように、外貨投資を行うことは、今後の円安に対応できる方法の一つといえるでしょう。今、世界経済は不安定な状態なので、今後の展開はなかなか読めません。しかし、トランプ政権の目指す強いアメリカが実現するのであれば、今から外貨投資を始めておくのに越したことはないでしょう。
今まで私が受けてきた相談でも、リスクをあまり取りたくないという方は少なくありませんでした。でも、今後起こりうる円安やインフレのことを考えると、何もしない方がリスクかもしれません。日本は今、昔のような右肩あがりの経済情勢ではないので、何もしなければ今後の時代の流れについていけないでしょう。私は、資産を増やすためではなく資産を守るためにも資産運用が必要と考えます。
今回は外貨のことばかり触れましたが、株式や債券、金や不動産など投資には選択肢がたくさんあります。ご自身のライフプランや資産状況に応じて、リスクを分散させた運用をおすすめします。そうすることでトランプ大統領の政策にも左右されず、安定した将来が待っているのではないでしょうか。
(ファイナンシャルプランナー/中村賢司)