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NISAは非課税期間5年以内に売却すべき?タイミングを教えて!

FPに聞きたいお金のこと 内山 貴博

NISAは非課税期間5年以内に売却すべき?タイミングを教えて!

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今回は、NISA枠で株を買ったものの値下がりして含み損が出ており、もうすぐ5年の非課税期間が終了する中で、売却のタイミングに悩んでいるAさんからのご相談です。

《相談内容》
2014年にNISAが始まった当初から、NISA枠(年間120万円)近くまで株主優待のあるX株を買いました。最近、米中関係はじめさまざまな不安要因で株価が下がって来ているようですが、早く見切りをつけて売却すべきか、このまま静観するか迷っています。もうすぐNISA非課税期間の5年が終わろうとしています。どう考えたらいいでしょうか?(60代・女性Aさん)

売却前にNISAの基本的な仕組みをおさらい

NISA
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まず、NISAとは少額非課税投資制度のことです。年間120万円まで非課税枠があり、同枠内で購入した株式や投資信託の配当(分配金)、売却益などが非課税になるという制度です。通常は利益とみなされる金額に20.315%の所得税と住民税等が課税されます。

なお、非課税の投資期間が5年間のため、5年経過すると、その時点での価格で課税口座に移すのか、それまでに売却するのか、あるいは翌年の120万円枠を使って、さらに5年非課税期間を続ける「ロールオーバー」をするのかといった判断をしなければなりません。

NISA非課税期間で含み損が生じているときの判断

5年以内に利益が生じ、どこかで売却できた場合はNISAの恩恵を受けることができますが、5年経過しても含み損(市場価格が購入時価格よりも下回っている状態)を抱えている場合は判断が難しくなります。以下のように含み損が生じており、NISA期間を満了して課税口座に移すと、そのときの価格が今後の課税対象となります。

よって、課税口座に移し、110万円で売却した事例の場合、非課税期間終了時の100万円から値上がりした10万円が課税対象となるため、実際は利益が出ていないにも関わらず税負担が生じる可能性もあるわけです。こういったNISAの特性を踏まえて判断してください。

NISA枠のルールに縛られ過ぎず、まずは投資の本質を優先して

判断に迷う男性
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Aさんの選択肢としては以下が想定されます。

(1)長期保有する(ロールオーバーまたは課税口座へ)
(2)あと5年様子を見る(ロールオーバーする)
(3)NISA期間満了を待たず、早めに売却する

おそらくAさんも上記選択肢を把握していると思いますが、どのように判断すべきか悩ましいところです。(3)だと、NISAのメリットを享受できませんが、その逆に先に説明したようなデメリットを受けることもありません。

一方(1)(2)の場合でロールオーバーをすると来年以降の非課税枠を使ってしまうことになります。よって、新たに株や投資信託をNISAで買う予定があるかどうかということも判断材料になります。

NISAは税制メリットを受けることができる大変魅力的な制度ですが、時として購入額に上限があること、投資期間に縛りがあることなどで、適切な投資判断ができない場合があります。非課税ルールを意識するあまり、つい早く売却してしまったり、投資額も年間120万円を意識し過ぎて、過剰に投資にお金を回したり、その逆で年間120万円以上投資可能な人が投資をしないということも。

よって「NISAを使って非課税のメリットを受けることができればラッキー」というぐらいの位置づけで向き合ってみてはいかがでしょうか。そもそもなぜそのX銘柄を購入したのか?これからも優待を受け続けたいのか?X社の業績は不調なのか?もしかすると相場全体の影響を受けているだけで、X社の業績は決して悪くないかもしれませんよ。

NISAの仕組みはおまけ程度と割り切り、一度、その銘柄のことを改めて見直す機会にしてみてください。そして、これからの投資についても同じことがいえます。「今年分のNISA枠があるから何か買わなきゃ」と無理に投資をしないでください。本当に投資したい銘柄、長期で運用したい投資対象かどうか、Aさんにとって適した投資を行ってくださいね。