実は失業手当よりお得?「再就職手当」いつ、いくらもらえる?
目次
職を失ったときに受け取ることができる「失業手当(失業保険給付)」。これを受け取るよりも、もしかしたら得をするかもしれない「再就職手当」を皆さんはご存知でしょうか。
失業手当は知っていても、再就職手当は初めて聞いた、という人もいるでしょう。これは失業したのち再就職をした人の中で雇用保険に加入しており、一定の条件を満たしていれば、受け取ることができる制度です。
今回はこの意外と知られていない、知っている人だけがもらえる「再就職手当」について、いつ、どのくらいもらえるのか、受給条件や手続き、支給額の計算方法などを解説します。
1. 再就職手当とは
雇用保険に加入していた方が退職した場合、失業後は一定の期間失業給付を受け取ることができます。会社都合退職の場合は退職後すぐにもらえますが、自己都合退職の場合は3カ月ほど待機期間があります。
どうせなら、この失業給付金を満額受け取りたいと思う人が多いのではないでしょうか。しかしその結果、無職の期間が長くなり再就職する際に不利になることもあります。
そこでそのようなことがないように設けられた制度が「再就職手当」です。これは失業保険を受給している期間中に再就職が決まった場合に支給される制度です。
失業中の人を早期に再就職してもらうための制度なので、失業給付日数の3分の1以上を残して再就職した場合に支給されます。
2. 再就職手当の支給条件
再就職手当は、早期に安定した職業に就いてもらうよう促す制度なので、手当を受けるには下記の条件をすべて満たす必要があります。
1. 就職日の前日で、基本手当の支給残日数が45日以上あり、また所定給付日数の3分の1以上ある場合。
2.1年以上雇用されることが確実な職業に就いた場合、または事業を開始した場合。
(生命保険の外務員や損害保険会社の代理店研修生のように、1年以下の雇用期間を定め、一定の目標達成ができないと雇用契約を更新しない場合や、派遣社員として1年以下の雇用契約を結び、更新が見込まれない場合は支給対象になりません)
3.原則として、雇用保険の被保険者となっていること。
4.離職前に働いていた事業主(関連事業主を含む)に、再び雇用されたものでない場合。
5.求職の申し込みをした日以前に、雇い入れの約束を交わした事業主に雇用されたものでない場合。
6.待機期間(7日間)が経過した後に職業に就いた場合、または事業を開始した場合。
7.離職理由による給付制限期間中の方は、待機期間満了後1カ月間においては、公共職業安定所の紹介で職業に就いた場合。
8.再就職手当を支給することで職業の安定に役立つと認められる場合。
9.離職日前3年以内の就職について、再就職手当、常用就職支度手当、早期再就職支援金の支給を受けたことがない場合。
10.再就職手当の支給申請後、すぐに離職しない場合。
※ハローワークホームページより抜粋
では、実際にいくらもらえるのか?次は再就職手当の計算方法について見ていきましょう。
3. いくらもらえる?再就職手当の計算方法
続いて受給できる再就職手当の金額ですが、再就職した日に残っている失業給付の日数に基づき計算されます。失業給付の支給残日数が3分の2以上の人と、支給残日数が3分の1以上の人とでは支給率が異なります。具体的な計算式は以下のとおりです。
○失業給付の支給残日数が所定給付日数の「3分の2以上」ある方
所定給付日数の支給残日数 × 60% × 基本手当日額
○失業給付の支給残日数が所定給付日数の「3分の1以上」ある方
所定給付日数の支給残日数 × 50% × 基本手当日額
ここでいう支給残日数とは、「失業保険の給付日数-就職前日までの支給日数」となります。
また、基本手当日額とは失業手当の額を1日あたりに置き換えた金額となります。この基本手当日額には上限金額が設定されていて、上限を上回る受給をすることはできません。上限額は、59歳以下の場合「6,165円」、60~64歳の場合「4,990円」です(令和元年8月1日以降)。尚、この上限額は毎年8月1日に「毎月勤労統計」の平均給与額によって改定されています。
この再就職手当は、非課税のため確定申告の必要がありません。
4. ハローワークでの再就職手当の手続き方法
再就職手当を受給するためには必ず手続きが必要です。手当をもらうために必要な書類と手続きの流れについては次のとおりです。
(1)再就職が決まったことをハローワークへ報告
再就職が決まったことをハローワークへ報告します。その際、失業保険の残日数期間の認定も同時にしてもらうことになります。必要な書類は、雇用保険受給資格者証、失業認定申告書、採用証明書(再就職先の会社に記入してもらう)の3つです。
(2)ハローワークへ申請書を提出
再就職日の翌日から起算して1カ月以内に、再就職手当支給申請書(会社に記入してもらう箇所があります)と雇用保険の受給資格者証の2種類をハローワークへ提出します。郵送でも対応してもらえます。
5. いつもらえる?再就職手当の支給時期とは。支給決定通知書に注意
再就職手当の支給時期は、申請書を提出してから約1カ月後です。支給が決定すると「就業促進手当支給決定通知書」が届きます。この通知書が届いてから1週間程度で失業手当の受給で指定した金融機関の口座へ振り込まれます。
但し、ハローワークが混雑する3月~4月や、5月のゴールデンウィークと重なった場合は処理に時間がかかり1カ月以上かかることもあるようです。
再就職手当は支給されないケースもあります。注意点を含め、次の章で見ていきましょう。
6. 再就職手当が支給されないケースや、注意点は?
では、この再就職手当が支給されないケースがあるのでしょうか。支給されるには、先に紹介した支給条件を満たしている必要があります。その大前提は「雇用保険」に加入していることです。
正社員であっても、会社によっては雇用保険未加入の場合もあるので事前に確認しておいたほうが良いでしょう。逆にアルバイトやパートでも社員という雇用形態で働き、雇用保険に加入していれば支給されるケースもあります。また、契約社員などで更新の予定がない1年以下の有期雇用契約の場合も再就職手当は支給されませんので、ご注意ください。
支給されないケースで最も多いのが、支給残日数の不足です。再就職手当の支給条件に「失業給付の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上」という条件があります。1日足りないだけで支給されませんので、転職をするタイミングを見計らうことも重要です。自己都合退職などで所定給付日数が90日と短い人は、特にご注意ください。
また、再就職手当の申請後すぐに退職した場合も支給されませんので、職場に馴染めないからとすぐに退職を考えるのでなく頑張って長く勤めましょう。
長く勤めて再就職が定着した場合には、また別の手当が受給できます。それが「就業促進定着手当」です。
就業促進定着手当とは、再就職手当の受給者が引き続き再就職先に6カ月以上雇用され、かつ以前の職場での1日分の賃金より低い場合にもらえる手当のことです。再就職先の賃金が前職の賃金よりも低下した場合には、低下した賃金を補てんしてくれるうれしい手当なので、こちらも併せて確認しておくと良いでしょう。
再就職手当についてのQ&A
Q 再就職手当の待機期間とはどのくらいですか
A 7日間です。ここでいう待機期間とは仕事をしていない期間のことを指します。再就職手当の受給条件に「待機期間(7日間)が経過した後に職業に就いた場合、または事業を開始した場合」とありますので、ハローワークに確認しておきましょう。
Q 自己都合退職だと、再就職手当の額が減りますか
A 変わりません。しかし自己都合退職の場合、失業保険が自己都合退職などで3カ月の給付制限がある場合、説明会後1カ月間は直接応募等で採用されても、給付の対象になりませんのでご注意ください。