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こんな場合も通勤災害に?!意外と知らない労災まとめ

そなえる 内山 貴博

こんな場合も通勤災害に?!意外と知らない労災まとめ

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目次

ケガや病気で病院に行く際に、皆さんは健康保険証を病院に持っていき、受付で提示していると思います。会社員や自営業など立場によって加入している制度に違いはありますが、私たちには健康保険証があり、そのおかげで医療費の一部負担で診療を受けることができます。日本は「国民皆保険」と呼ばれ、原則として全員が加入することになっているのです。

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ただし、この保険証を使えるのは「仕事以外」での病気やケガです。実は、健康保険法の第1条にはこういう記載があります。

「労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」(一部省略)

つまり、「業務関連での病気やケガは対象外ですよ」と記載されているのです。なぜなら、業務上の病気やケガは今回のテーマでもある「労災保険」があるからです。

労災保険はどういう場合にどのくらい給付される?休業補償は?

治療する男性
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労災保険は正式には「労働者災害補償保険」といいます。
会社の従業員は「与えられた仕事をしますので、それに対して賃金をください」、「仕事に関して、指導・監督してください」といった契約を会社と交わし勤務することになります。

労災保険には「業務災害」と「通勤災害」の2種類があります。仕事中のみならず通勤中も労災保険の対象となるのです。

よって、会社側からすると、従業員の勤務中、および通勤中などの病気やケガに対しては監督者として責任を取る必要があり、そのための労災保険とも言えます。「従業員のいざというときに備えて会社側が保険に加入」しているため、保険料も従業員の負担はありません。

労災保険の給付には「療養(補償)給付」、「休業(補償)給付」、「遺族(補償)給付」はじめ、さまざまな給付制度があります。なお、勤務中の労災事故の場合「〇〇補償給付」といい、通勤災害の場合は「〇〇給付」といいますが、両者に大きな違いはありません。

「療養(補償)給付」とは病気やケガの治療費を負担してくれる制度です。療養(補償)給付のおかげで、従業員は原則、医療費を一切負担する必要はありません。

また、療養のため働くことができず、賃金がもらえなくなることも想定されます。その際は「休業(補償)給付」があります。給付基礎日額の80%が支給されます。「給付基礎日額」を簡単に説明すると、1日あたりの給料額です。よって、今までもらっていたお給料の8割程度が支給されることとなります。

また、死亡した場合にも手厚い給付があります。葬儀代として、原則31万5000円+給付基礎日額30日分が給付されます。また、一時金として300万円、加えて、遺族の人数に応じて、支給される年金もあります。
それ以外にも介護や障害など幅広く補償給付してくれるのが労災保険です。

※上記は「特別支給金」を加えた金額です。特別支給金とは社会復帰促進等事業として「労災の上乗せ」として給付されるものです。

通勤災害になる場合とならない場合

コンビニで買い物する会社員
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業務中のみならず、通勤中も労災保険の対象となりますが、例えば寄り道をした場合などは通勤中に見なされるのでしょうか?

例えば、「仕事帰りに居酒屋に寄って一杯」というのを楽しみにしている人も多いと思いますが、居酒屋は寄り道であり、その後、ほろ酔いで転倒してケガを負ったとしても通勤災害とは見なされません。

一方、コンビニに寄り道した場合はどうでしょうか?もし、日常生活上必要な行為と見なされれば、「中断・逸脱」後の移動は通勤災害と見なされます。

「中断・逸脱」についてもう少し詳しくみていきます。
皆さんがいつも通勤している路上にコンビニがあり立ち寄ったとします。これを中断といい、この立ち寄っている時間、つまりコンビニにいる間は通勤災害の対象外となります。また、通勤と関係のない目的で少し離れたコンビニに立ち寄った場合を「逸脱」といい、通勤路から逸れた時から通勤災害の対象外となります。

ただし、この中断や逸脱が日用品を購入するという具合に、日常生活上必要な行為であれば、その「逸脱・中断」が終わった後、つまり、本来の通勤路に戻ってから帰宅するまでは通勤災害の対象となります。

中断    コンビニで買い物中は通勤災害の対象外。買い物が終わり、帰宅し始めると対象。
逸脱    コンビニに寄るために通勤路から逸れたところから対象外。買い物を終え、本来の通勤路に戻ると対象に。

日常生活上必要な行為には、治療のため病院に寄った場合や要介護状態にある父母などの介護も含まれます。
なお、出張中にホテルから取引先に向かっている場合などは、そもそも通勤災害ではなく「業務災害」に該当します。

※上記は一般的なケースです。

具体的な申請の仕方・注意点

業務中や通勤中にケガや病気になった場合は、まず会社に届けてください。一般的には会社が窓口となり、対応してくれます。ただ、事業主(会社側)は労働災害を防ぐための「安全・衛生」の管理責任があるため、あまりに業務中のケガなどが多いと、当局に調査されるといったことが想定されます。

そういった調査を警戒して、労働保険の手続きを嫌がる事業主も少なくありません。ただし、労働事故を隠すことはルール違反です。従業員として毅然と「仕事中にケガをした」と申し出をすることを覚えておいてください。

これは労災?通勤災害?よくある事例

大学生などによくありますが、「アルバイト先のコーヒーショップでやけどをし、翌日病院に行きました」というケースです。この場合、労災保険の対象でしょうか?

労災保険は働く人を守るための保険であるため、正社員のみならず、アルバイトやパート、日雇いも対象となります。店長にやけどのことをいわず、翌日、健康保険証を持って病院にいってしまうと、「アルバイト中ではなく、日常生活中にやけどをした」と見なされてしまいます。この場合もためらうことなく、店長に報告した上で治療を開始してください。

ただ、店長が「労災ということを隠したい。」というケースも少なからずあるようです。また、病気やケガによっては、一刻も早く病院にいかなければならない場合もあります。よって、大切なことは、病院の窓口で「労災です」ということだけを覚えておいてください。手続き等は全てその後になります。

労災指定以外の病院であれば、医療費を全額負担しなければならない場合もあります。その後、書類提出など手続きを経て、負担した金額は戻ってきます。よって、できれば労災指定の病院で治療してください。

なお、学校の帰りにそのままアルバイトに行く人も多いでしょう。大学から自転車でアルバイト先に向かっている時に転倒してケガをしたという場合は「通勤災害」に見なされるでしょうか?

残念ながらこのケースは通勤災害とはなりません。その理由は、「通勤」とは、原則「住居⇔就業場所」の経路を指すからです。「大学⇔アルバイト先」は通勤経路とはならないため、その点、注意してください。

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まとめ~働き方改革と労災保険~

新型コロナウイルスの影響もあり、改めて「在宅ワーク」をはじめとした「テレワーク」など、多様な働き方が注目されています。残業を減らす代わりに副業を許可する会社も増えてきています。

働き方が変わることで、「この場合は労災保険の対象になるかどうか?」と判断に迷うケースも増えそうです。紹介したように、労災事故がきっかけで治療や療養をする場合、そして亡くなった場合なども、かなり手厚い補償給付があります。自分自身はもちろん、家族がケガや病気をした場合も「労災では?」と念のため確認するようにしてください。

ここまでまとめてきましたが、筆者はFPとしてフリーで活動する事業主であるため、労災保険の対象ではありません。「勤務時間」、「出勤」という概念がなく、自由に働けるのがメリットですが、労災保険がないというのは大きなデメリットであると感じています。これから起業や転職はじめ、働き方が大きく変わる人もいると思いますが、こういった点も踏まえた上で、ご自身のキャリアプランと向き合ってみてください。

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