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どうなる「同一労働同一賃金」賞与も同一?派遣と正社員の今後は? (3ページ目)

ためる 中村 賢司

●小売業
資本金の額または出資の総額が5000万円以下、または常時使用する労働者数が50人以下

●サービス業
資本金の額または出資の総額が5000万円以下、または常時使用する労働者数が100人以下

●卸売業
資本金の額または出資の総額が1億円以下、または常時使用する労働者数が100人以下

●その他(製造業、運輸業、建設業など)
資本金の額または出資の総額が3億円以下、または常時使用する労働者数が300人以下

上記の基準よりも規模が大きければ大企業に定義されます。大企業であれば就業規則が整備され、福利厚生も充実していますが、中小企業の中には就業規則があっても従業員が自由に閲覧できる環境にない場合や、賃金や手当が不明確な企業もあります。

そこで中小企業は、同一労働同一賃金を導入するにあたり、説明義務を果たせるよう次に挙げるような見直しや整備を求められることになります。

1. 賃金や各種手当の整備

雇用側は、正社員と派遣などの非正規社員の賃金を全く同じにしないといけないということではなく、職務内容や仕事の難易度に差はあるのか、また残業を許容できる時間の範囲や転勤が可能かどうか、転勤を伴わなくても配置変更ができる範囲はどうかなど、もし正社員と非正規社員の賃金に差があるのであれば、その理由を説明できるようにしておかなければいけません。そして担う仕事や条件に違いがなく、同一とみなされるのであれば賃金の差がないように整備しなければいけません。

2. 就業規則の整備

例えば正社員は毎年賃金が昇給する制度であれば、非正規社員もそれに準じて昇給させないのは不合理とみなされるでしょう。賞与についても正社員は年2回支給があるのに非正規社員にはないというのはこれもまた不合理とみなされます。退職金についても正社員が整備されていて非正規社員には退職金がないという企業も多いのですが、これについても不合理な差が出ないよう整備を進めていく必要があります。

3. 福利厚生の整備

有給休暇や慶弔に伴う特別休暇等、非正規社員の正社員が同一の労働条件であれば休暇制度も統一する必要があります。また自社に厚生施設がない中小企業に多い、外部委託の福利厚生サービスを導入している企業は、非正規社員にもそのサービスを受けることができるようにする必要があるでしょう。

その他にもスキルアップやキャリアアップの教育訓練制度があるのであれば、非正規社員にも同じように提供していかなければいけません。

大企業に比べると中小企業は上記のような整備がやや遅れているので、同一労働同一賃金が導入されるにあたり見直しや再整備が迫られることになるでしょう。皆さんがお勤めの企業はどのようになっているのか、確認してみてください。

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いきいきと働く女性たち
【画像出典元】「iStock.com/metamorworks」

同一労働同一賃金のガイドラインは、派遣社員の待遇を良くするための法改正ですが、合理的な理由があり、その説明が明確にできれば、派遣社員と正社員に待遇の差があっても問題はないとされています。これを逆手に取り、派遣社員の仕事内容や仕事の量を減らしてくる企業があるかもしれません。

派遣社員と正社員の仕事の違いを設ける企業が増えてくると、その分恩恵を受けるはずの派遣社員が減ってしまうので、何のための法改正か分からなくなります。

また、今まで責任感もあり自身のキャリアアップにつながるような仕事をしていた派遣社員でも、今後その仕事から外され、単純作業しか任せてもらえない可能性もあるので、長期的な視野に立って考えると派遣社員より正社員が明らかに有利になることは間違いありません。

家計の足しに短期間だけ働こうと考えている人はパートやアルバイト、派遣社員で良いかもしれませんが、老後を迎えるまで長く働こうと考えている人は、正社員で勤めることを前提に考えていた方が良いでしょう。

さらに企業が社員に対してどのように考えているかを見極める必要もあるでしょう。真に社員のことを考えている企業は賃金に限らず、福利厚生や教育訓練も充実しています。これらも今回同一にするよう改善の対象となっていますので、派遣社員でもスキルアップやキャリアアップにつながる仕事ができ、正社員への起用や転職に有利になることも考えられます。

まとめ

同一労働同一賃金とは派遣社員の待遇を改善するための法改正ですが、実際企業がどのように対応するかによって、働く側にとって良くなることも悪くなることも両方考えられます。

長い人生にとって仕事はどういう位置付けなのか自分と向き合い、有期雇用かパートタイムか派遣で働くのか、それとも正社員を選ぶのか。この改正が自分の働き方を見つめなおすきっかけになりそうです。よく考えてみてください。

企業の対応にも注目です。就業規則や福利厚生がしっかり整備された大企業を選ぶのか、責任感のある仕事を任される可能性が高い中小企業で働くのか、企業規模にも注目し、そしてその企業は社員を大切にしているかどうかなど、働く側からもしっかり企業を見極める機会にもしてください。

派遣で働き続けたいという人は、2020年4月以降派遣元となる派遣会社のホームページなどをしっかりチェックして同一労働同一賃金に対しての対応をよく確認しておきましょう。

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同一労働同一賃金についてのQ&A

Q.働き方改革の一環で、派遣社員と正社員の待遇が同一になるのはいつからですか。

A.派遣社員として雇用されていても無期雇用の正社員同様、ボーナスや退職金、賃金や交通費の待遇差をなくす法改正が同一労働同一賃金です。派遣社員の場合は、企業規模に関係なく2020年4月から施行されます。

Q.今までずっと派遣社員で働いていたので退職金がありません。老後がとても心配です。派遣社員の退職金は待遇が良くなるのでしょうか。

A.同一労働同一賃金により、派遣社員にも退職金制度が整備されるようになりました。具体的には、①勤続年数により退職金の額が決まる方法、②時給の金額が6%アップして退職金を前払いでもらう方法、③国が実施している共済制度に加入して退職金を会社からでなく国から直接受け取る方法があります。

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