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どうなる「同一労働同一賃金」賞与も同一?派遣と正社員の今後は? (2ページ目)

ためる 中村 賢司

1.「派遣先均等・均衡方式

派遣先の会社の正社員に合わせて給与や賞与、諸手当や福利厚生などすべての待遇について差が出ないように決める方式です。この場合、派遣社員が派遣される会社が変わるたびにその派遣先の会社の賃金や賞与に水準を合わせないといけないので、派遣会社にとっては手間がかかるばかりでなく、派遣先の会社は自社の給与水準をすべて開示する必要があります。これに抵抗を感じる会社は多いと考えられるため、こちらを選ぶ派遣会社は、現状では少ないとも思われます。

2.「労使協定方式

派遣社員と派遣会社が労使協定を結ぶというもので、その比較対象は派遣先の会社ではなく派遣元の派遣会社の中で協定を決める方式です。具体的には職務の内容、成果等を公正に評価した賃金決定、有給休暇や慶弔休暇など福利厚生制度の決定方法、待遇の決定方法、段階的、計画的な教育訓練の実施、その他事項等を定めた労使協定を書面で締結します。このとき、労働組合があれば過半数労働組合、労働組合がなければ過半数代表者と派遣元事業主が労使協定を結ぶ形を取ります。

労使協定といっても派遣元の会社が勝手に自社の基準を持って賃金を決定することはできません。厚生労働省によると、派遣先の事業所の所在地における同じ業務に従事する労働者とその派遣労働者が同程度の能力や経験を有する場合は、同等もしくはそれ以上の賃金額と定義されていて、職種ごとの賃金能力、経験、地域別の賃金性をもとに決定することになっています。この職種ごとの賃金については毎年6月から7月、国から通知される予定です。

この労使協定を締結した派遣元会社は、毎年6月30日までに職種ごとの人数と職種ごとの賃金の平均額を併せて報告しなければいけません。またホームページへの掲載も必要とされています。

退職金を受け取る方法は、派遣社員の場合次の3つの方法からどれか1つを選択することとなります。

1.勤続年数から計算する方法
2.時給に6%加算する方法
3.中小企業退職金共済制度に加入する方法

まず1つ目の勤続年数から計算する方法は、一般的な方法で退職までの勤続年数から退職金を試算するというのです。退職金の水準は、正社員と同等とするように定められています。

次に2つ目の時給に6%加算する方法は、退職金の前払いともいわれ退職するときに一時金を受け取るのではなく毎月の給与に時給を6%上乗せして受け取る方法です。

そして最後の「中小企業退職金共済制度」に加入する方法は、国が運営している退職金共済制度に加入するという方法で、会社は毎月派遣社員のために毎月掛け金を拠出して退職金を積み立てます。派遣社員は退職するときに退職金を一時金か年金で受け取ることができます。

正社員の評価や給料・待遇は今後どうなる?

これまで見てきたように同一労働同一賃金が導入されれば、派遣社員などの非正規社員の待遇が良くなることが期待されます。一方で正社員から見た場合のこの法改正はどのように影響してくるのでしょうか。

非正規社員の賃金を正社員にそろえるということは必然的に人件費が増額されることになります。事業主の立場からすると、経営上の理由から社員の給与や賞与などの人件費(固定費)はあまり上げたくないと考える企業もあるでしょう。そこで正社員の給与水準を下げて非正規社員の賃金の上昇を抑えるということが懸念されます。もしそうなると正社員にとっては単純に給与ダウンとなってしまいます。

企業の中には、定期昇給や基本給にプラスされる役職手当や営業手当等の各種手当を抑制して、派遣社員と正社員の全体的なバランスを取るという企業も出てくるでしょう。

基本給が低く各種手当が手厚い企業に勤めている正社員の方は注意深く今回の動向を見守る必要があります。

大企業と中小企業では取り組みや対応に遅れや差がある?

同一労働同一賃金の導入される時期が企業規模により違いがあるのは前述のとおりです。既に施行されている大企業に比べ、中小企業の方がまだ少しの準備期間がありますが、まだ整備が済んだという企業はそれほど多くないのが現状でしょう。

「中小企業」の定義ですが、業種により資本金や従業員の人数により次のような基準となっています。