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遺言書を書く人が急増?7月から法務局で保管できる画期的な新制度とは

そなえる 権藤 知弘

遺言書を書く人が急増?7月から法務局で保管できる画期的な新制度とは

【画像出典元】「stock.adobe.com/beeboys」

映画や小説などでよく取り上げられる遺言書をめぐって相続人が争う悲喜こもごものドラマ。皆さんも一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか? 

もしくは読者の皆さんのなかで「そういえばおじいちゃんが亡くなったときに、お父さんが兄弟と揉めてたなぁ」とか「もしお父さんが天国に行ったら、この家はどうするんだろう?」というようなことはありませんか?

誰かが天国に行くことによって相続が始まりますが、その時に重要な役割を果たすのが遺言書です。身近な関係だからこそ「こうしてくれるはず」という、それぞれの立場での考えとのギャップが原因で「相続」が「争族・争続」になってしまうことも多くみられます。ちょっと重たいテーマですが、「うちのお父さん、知ってるかな?」ぐらいの気持ちで、頭の片隅に置いてほしいテーマです。

今回は2020年7月から、遺言書が法務局で保管できるようになるという新しい制度についてお伝えしていきます。

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【1】そもそも遺言書とは?

遺言。「ゆいごん」と読むことが多いと思いますが、実は正式には「いごん」と読みます。ご存知でしたか?
遺言書とは「自分が死んだ後に、財産の処分や分割の方法、遺言書の指示を誰に実行してほしいか、誰に未成年の子どもの世話をしてほしいか」などを明記し、法的な効力を持つ書類のことをいいます。

【2】今、遺言書を書く人が増加している理由

近年では遺言書を書く人が増加しています。これは「相続=争族・争続」という言葉も聞かれるように、遺産相続をめぐる兄弟や親族間トラブルの増加や、核家族化など家族のあり方が多様化していることもあり、現在定められている法律とは違った相続の形を望む人が増えていることが背景にあります。そのため相続に関して、遺言状で自分の意思を親族に伝えるということが一般化しつつあるのです。

【3】遺言書の種類は3つ

遺言書
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さて、一口に遺言書といっても実は下記の3種類に分類されます。それぞれに決められた様式があり、遺言書は様式を満たしていることが重要です。

    自筆証書遺言

自分で紙に書く遺言書です。紙、ペンと印鑑(認印でOK)があれば、誰でも作成が可能で費用もかかりません。注意点としてパソコンは使用不可(※)で、あくまでも自筆であることが必要です。

また、書き間違えがあったり、遺言内容が曖昧だったりすると、遺言書として無効になってしまう可能性があります。

※財産目録に関してはパソコンの使用が認められています

    公正証書遺言

遺言者の指示により公証人が筆記し、遺言者・公証人および2人以上の証人が、内容を承認の上で署名・捺印した遺言書です。公証人が筆記してくれるので法的にも要件を満たした遺言書が確実に作成できます。また遺言書は公証役場で保管をしてくれるので安心です。

※公証人/法務大臣から任命された法律の専門家。中立・公正な立場で、国の公務である公証事務を担い、国民の権利保護と私的紛争の予防を行う。

    秘密証書遺言

公正証書遺言と同じく公証役場で作成しますが、遺言の内容は公証人も知ることができません。秘密をあくまでも守りたい等の希望で作成されますが、あまり活用されていないようです。

手軽さでいえば自筆証書遺言ですが、実際には「法的に不備がないか?」「キチンと保管できるか?」「改ざんをされないか?」など運用上のさまざまな問題があります。

【4】2020年7月から法務局で遺言書を保管できるように

高齢化が進む一方で、今後30年間は、多死社会(※)になるといわれています。そのような社会の中で自筆証書遺言を書く人も今よりさらに増えていくでしょう。この状況を踏まえ、2020年7月10日(金)から全国各地の法務局の本局と支局で自筆証書遺言を預かる制度がスタートします。これまでなかった制度で非常に画期的なものとなります。

※高齢化社会の次に来る社会形態。人口の多数を占める高齢者の死亡が増え、人口が減少するであろう時期

【5】法務局で保管してもらうための申請方法

遺言書の相談をする家族
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実際に法務局で保管をしてもらうためには下記の手順を踏む必要があります。

1.    自筆証書遺言を作成する
2.    保管の申請をする法務局を決める
3.    申請書を作成する
4.    保管申請の予約をする
5.    保管の申請をする
6.    保管証を受け取る

おおよそ上記の流れとなります。また保管に際しては手数料を納める必要があります。

【6】法務局で保管するメリット・デメリット

新しく画期的な保管制度がスタートしますが、そのメリットやデメリットも見ておきましょう。

メリット
・法務局に保管することにより紛失することがなくなる
・相続人による遺言書の廃棄や改ざんなどを防ぐ

デメリット
・保管料や閲覧料などの手数料がかかる

各種の手数料がかかりますが金額的にはそれほど過大なものではなく、紛失や改ざんなどの恐れがなくなるのでメリットが多い制度です。注意点としては自筆証書遺言を作成する際に書き方のアドバイス等はありますが、法的要因を満たしているか等の判断はありませんので内容に関しては従来通り注意が必要です。

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【7】まとめ

新しく始まる自筆証書遺言の保管制度ですが、まだまだ認知度は低いようです。人の死に関わる制度であり、積極的に活用するにはなかなか心理的なハードルが高いのも事実です。ただ「自分が天国に行ったらこうしてほしい」という意思を表示しておくことは残された家族にとっても有益なことでしょう。若い世代にとっても「やがては・・・」ということで考えていただければと思います。