資産運用の「リスク」、そして「ボラティリティ」とは?
監修・ライター
そろそろ資産運用を始めてみたいと思っているみなさん。ようこそ、泉先生の「資産運用 超入門」講座へ。
この講座は、「お金をとことん増やしたい!」と考えてはいるものの、「まだ何もはじめていない」、「何からはじめていいかわからない……」という人に、自分に合った資産運用法を見つけ、実際に行動に移せる力を身につけてもらう講座です。
資産運用の方法をマスターできれば、夢や目標をかなえたり、老後にゆとりを持って暮らしたりするための資産を自分でつくることができるように。さぁ、心もお金も豊かに、自分らしいライフスタイルを楽しめる人生をここから手に入れましょう!
「リスク=危険」じゃない!?
さて今回は、資産運用にはメリットがあると同時に、リスクもあるということを話していこう。
出た!リスク。つまり「危険」ってことですよね?
やっぱりそうイメージしちゃったか…(笑)。実際のリスクは、「悪い結果となる可能性」のことをいうんだけどね。そしてリスクの中には、「知識や経験で和らげることができるリスク」と「知識や経験ではどうすることもできない商品の値動き幅」の2つの側面があるんだよ。
ほぉぉ。ではまず、「知識や経験で和らげることができるリスク」から教えてください。
全部で5つあるよ。まずは「価格変動リスク」。これは価格が変動することによって、投資した金融商品の価値が変動するリスクのこと。株価、為替、債券、不動産などの取引価格は、市場における需給によって決まるんだけど、一般的に、政治や経済情勢、地価、企業の業績などの影響も受けるので注意が必要なんだ。
回避する方法とかあるんですか?
投資する金融商品の特性をしっかりと理解すること。それはたとえば、株式投資についての理解というだけでなく、投資する業界や企業についても掘り下げて理解し、どのようなときに、どの程度の値動きがあるのかを把握しておくことが大切なんだ。
やっぱり「知ること」なんですね。
そうだね。そして2つめに「信用リスク」。これは、株式や債券といった有価証券の発行体…つまり国や企業なんだけど、それらが財政難、経営不振などの理由で、利息や元本などをあらかじめ決められた条件で支払うことができなくなる、債務不履行が起こるリスクのこと。倒産すれば、投資元本が払い戻しされないというおそれも出てくる。
ええっ!それ、かなり困るんですけど…。
でもこれも、国や企業の財政状況をしっかり理解しておくことで回避できるよ。大切なのは、まだ理解していないうちは、信用リスクが高い金融商品は購入しないこと。たとえば、事業内容がよくわからない海外の会社よりも、誰もが知っている日本の代表的な会社のほうが信用リスクはずっと低い。
なるほど。初心者はまず、安心なところからチャレンジしてみる…と。
3つめは「流動性リスク」。これは売買が極端に少なくなることで取引が成立せず、売りたいときに売れない可能性があるというリスクのこと。
そんなことあるんですか?
たとえば、不動産はその特性から売れるまでに時間がかかり、換金できるまでの期間が比較的長いので、「流動性が低い」といい、日本円と米ドルのようにいつでも取引できて、いつでも換金できるものを「流動性が高い」という。このリスクを回避する方法は…。
流動性の高いもので取引をしよう!ということですね?
お、いいね~!でも一見、流動性の高そうな上場企業の株式でも、1日の間でほとんど取引されていない銘柄もある。そういう銘柄を購入した場合、売りたいときに売れず、すぐに売ろうとすると価格が下がってしまうんだ。だから、出来高の多い銘柄を中心に取引を行うことがリスク回避につながるといえるかな。
ちなみに不動産の場合、株式よりも時間はかかるけれど、人気エリアであれば売りたいときに売ることができる。逆に、田舎の山奥の一軒家のような物件であればなかなか買い手が見つからなくて、流動性が低い物件となる。この場合は価格を下げて売るしかなくなるので、流動性リスクがとても重要になってくるんだ。
ここまでリスク回避について考えておけばもう大丈夫だろう、って思うんですけど、まだあるんですよね(笑)。
あと2つね(笑)。4つめは「為替変動リスク」。これは日本円と外国通貨の為替相場によって、外貨建て資産の価値が変動するリスクのこと。為替相場は各国の経済成長率や国際収支によって日々動いている。さらに日本円と外国通貨の為替相場はシーソーの関係になっていて、どちらかが高くなると、もう一方は低くなる。おもに、FXや外国株式、外国債券、それらを含む投資信託、外貨建ての積立保険などが影響を受けることになるんだけど、これについては、為替相場を固定させる保険的要素の「為替ヘッジ」というやり方でリスク回避は可能なんだ。でも為替ヘッジを行うにはコストがかかって、一般的にはそのコストがいくらかかっているかが見えづらい。ここには先物や通貨オプションなど中級者向け以上の知識が必要なので、その仕組みを理解しておくことも大切になってくる。
これはなかなか、初心者にはレベルが高いですね。
そうだね。でも、「こんなリスクもある」と、知っておくだけでも違うと思うよ。そして、最後は「インフレリスク」。これは継続的な物価の上昇が原因で、現金の価値が目減りするリスクを意味するもの。たとえば、1万円で買えたモノが、物価の上昇、つまりインフレによって1万5000円になったとする。1万円の貯金をしていた人は、持っている現金の額である1万円は変わらないのに、1万5000円を出さないとそのモノを手にすることができないので、相対的に現金の価値が目減りしたことになる。
うわっ、これは悲しい。どうしたらいいんですか!?
リスク回避の基本は、現金ではなく物、つまり資産に変えるということ。物は、物価上昇にともなって価格上昇していくものが理想で、その対象として不動産、株式などがある。つまり、預貯金だけで資産を持たないことが大事なんだよ。
おおお…。やっぱり資産運用って、ちょっと怖い? いや、でも…。
おっと、Kくん。それぞれのリスクには、回避方法があるということもわかったよね? それに今はまだ、リスク回避方法についてしっかりと理解できていなくても大丈夫。これから資産運用の方法をしっかりと学んでいくので、それと同時にリスク回避についてもさらに理解していこう!
はい!
「ボラティリティ」ってなんだろう?
Kくん、「ボラティリティ」って知ってる?
え?え? 北極星?
おっと、それは「ポラリス」。「ボラティリティ」とは、知識や経験ではどうすることもできない「商品の値動き幅」のことなんだ。
あれ?それって、さっき出てきた「価格変動リスク」と似てませんか?
う~ん。近い意味で使われることも多いけど、実は似て非なるもので、「ボラティリティ」は一般的に「価格変動の度合い」を示す言葉で、「ボラティリティが大きい」というのは、その商品の価格変動が大きいことを意味する。逆に、「ボラティリティが小さい」というのは、その商品の価格変動が小さいことを意味する。
わかるような、わからないような。
例えば、仮想通貨の「ビットコイン」は、2015年から2021年の現在までに、次のグラフのような動きとなっている。その後も激しい動きを続け、2021年2月16日には初めて5万ドルを突破したことでも話題になったよね。いかに仮想通貨の知識を身につけたとしても、この値動き幅を和らげることはできないんだ。「ボラティリティが大きい」と言われる商品は、リターンも大きいけれど、リスクも大きい。つまり、ボラティリティが大きい商品に投資をするのは、ある程度資産運用に慣れてから、もしくは余裕資金で行うことをおすすめしたい。
確かにこのビットコインの動きを見ると、知識をつけてからでないと危険ですね。
さて、リスクとボラティリティに関して理解してもらえたところで、「リターン」についても考えてみよう。多くの人が資産運用をするのは、「お金を増やす」というリターンを求めて行うことが一般的だよね。そして、よく「リターンが大きいものは、リスクも大きいから危険」「リターンが小さいものは、リスクも小さい」と考えられている。でもさっき説明したように、リスクは知識と経験で軽減できるんだ。知識と経験があれば、「リターンは最大に、リスクは最小に」ということが可能になってくるんだよ。
リターンは最大、リスクは最小。夢ですね!
たとえば、世界有数の富豪として知られる投資家のウォーレン・バフェット氏が行う株式投資と、何の知識もない社会人1年目のサラリーマンが行う株式投資のリスクは大きく違う。それは決して、動かす資産額が違うから、という話ではなく……。
センスがあるから?
うん、センスもあるかもしれない。でもそれだけではない。では何が違うかというと、「知識と経験」なんだ。これはなにも、ウォーレン・バフェット氏に限った話ではなく、株式投資の知識を体系的に学んでしっかり知識を身につけた人と、何の知識もない社会人1年目のサラリーマンを比較しても、リスクは大きく違うということだよ。
そのためにも、基礎を知り、知識を少しずつ身につけていくことが大事なんですね。
ステップを踏みながら、正しい経験を積み重ねれば、リスクは限りなく小さくなっていく。そうすることで、前回の講義であげたような5つのキーワードのメリットのみを得られるようになるんだ。つまり、同じように株式投資をする人がいたとして、ある人にとっては大きなリスクかもしれないけれど、ある人にとってはリスクは限りなく低く、リターンだけが大きくあるということもありえるということだよ。
無知こそ、最大のリスクである
ここであらためて伝えておきたい大事なことは、「無知こそ最大のリスク」だということ。
それなら僕は今、まさに最大のリスクを抱えていることになりますね。
ははは。これは、車の運転を例に考えるとわかりやすいかもしれないね。たとえば、車の構造や交通ルールを何も知らない中学生がいたとする。つまり、車の運転についての知識がない状態だ。その中学生が車を運転するとなると、誰もがリスクが高いと考えるよね。でもそのリスクというのは、車自体や交通ルールのリスクではなく、誰もがその人(中学生)自身のリスクと想像できる。
それはそうですね。
資産運用もこれと同じ。資産運用には、車の構造と同じように金融商品の構造があり、標識や交通ルールのように当然守るべきルールがある。でもそれを知らないと、事故を起こしてしまうんだ。
と、いうことは、リスクは車の運転と一緒で、知識と実地トレーニングにより回避することができるということですね。
そう! 車の運転のリスクを回避するために、僕たちは誰もが、交通ルールの知識を学び、教習所などで実地トレーニングをするよね。そのうえで、事故のリスクが少なくなったときに運転免許証が発行され、一人で運転してもリスクが低い状態になる。
なるほど。このことからも、資産運用のリスク回避には、まず知識をつけることだということがよくわかりました。でも先生、無知の状態であるならば、そもそも資産運用をしなければリスクがなくなるのでは?とも思っちゃうんですけど…。
そういう考えもある。でも資産運用を行わなかった場合、別の大きなリスクが発生することにも目を向けなくてはいけないよ。
え?別の大きなリスク?
それは、「将来、お金が足りなくなる」というリスク。車の運転で例えるなら、車の運転は危険だからといって、遠い目的地まで歩いていくこと。車の運転での事故はなくなるけれど、目的地に到着できないというリスクが発生してしまう。これと同じこと。
おっと!まさか、そんなリスクが待っているとは!
車と同様に、資産運用にはさまざまなメリットがある。でも放棄してしまうと、前回挙げたような「インカムゲイン」や、「キャピタルゲイン」、そして「複利効果」といった、資産運用を行なった結果としての大きなメリットが得られなくなる。もしも将来、お金が足りなくなったときに気づいてももう手遅れになってしまうんだ。
資産運用をしないでいると勝手に貯金が減ることはないけれど、人生を豊かにするための目標金額を達成するためには、自分の身体を酷使して働き続けるか、欲しいものもすべて我慢する節約生活を続けなければいけないかもしれないと…。
そう。つまり資産運用における真のリスクとは、株式や不動産の価格変動、未来の世界情勢や景気動向ではない。投資をする人自身のリスクであり、将来、お金が足りなくなるというリスクなんだよ。
よし。「知識と経験でリターンを最大に、リスクを最小にする」。を目標に、これから資産運用、頑張っていきます!
その調子! 次回からはいよいよ、Kくんに大きなリターンをもたらすであろう資産運用の種類には、どのようなものがあるのかを解説していこう。
よろしくお願いします!
まとめ
資産運用の中でリスクとは、「悪い結果となる可能性」のことで、そこには、「知識や経験で和らげることができるリスク」と「知識や経験ではどうすることもできない商品の値動き幅」の2つの側面が存在します。「知識や経験で和らげることができるリスク」にはそれぞれ回避方法があるので、まずはそれを知っておきましょう。また「知識や経験ではどうすることもできない商品の値動き幅」のことをボラティリティといい、例えば「ビットコイン」などは「ボラティリティが大きい」と表現されます。
ここではさまざまなリスクと回避方法を学びましたが、「最大のリスクは、無知であること」。知らないからと進まなければ、その先にはもっと大変な人生が待っている可能性もあるのです。少しずつ知識と経験を身につけながら、小さなリスクで大きなリターンを得て、人生を豊かにするための目標金額を達成させましょう!
次回は、「自分にぴったりの金融商品を見つけよう!その1・株式」を学んでいきます。お楽しみに!