サブスクモデルはユーザーとアーティストの関係性をどう変えた!?
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2020年は、CDが売れなくても、1位を取った初めての年になった
読者の皆さんはyoasobiというバンドをご存知でしょう。独特のサウンドと歌唱がマッチした魅力的な2人組です。
実はこのyoasobi、2020年に歴史的にも大きな偉業を達成しました。CDを発売していないにもかかわらず、ビルボードの年間チャートで1位となったのです。
皆さんはどこで、「夜に駆ける」を知ったでしょうか。広告つきの動画配信サービス(YouTubeなど)、音楽の定額聴き放題サービスなどで広く配信され、口コミやリンクからたくさんの人の耳に触れるようになったことが影響しています。
かつてはレコード、最近まではCDの売り上げ枚数が人気のバロメーターとされていました。しかしCDを発売せずに1位を取ることが可能であることが証明されたのが2020年だったというわけです(もちろん時代の変化に応じて集計方法も見直されています)。
「鬼滅の刃」大ヒットの背景もサブスク
同様に、2020年に時代の変化を象徴した作品はアニメ「鬼滅の刃」でしょう。劇場版映画が国内売り上げ第1位になったことは大きな話題となりました。その背景としてサブスクリプションサービス、つまり動画見放題サービスの普及が指摘されています。
第一期(映画前のエピソード)はテレビアニメで放送されましたが、これは2019年のことでした。ところが、このときの人気はまだひっそりとしていました。
実は、2020年に入ってからブームに火がついたとき、多くのファンは動画配信でこれを見ているのです。ちなみにうちの子どもも、動画配信で一気に見ました。友人から話を聞きつけてきて、見たいとせがまれたのです。
新型コロナウイルスに関連した巣ごもり生活の中、レンタルビデオショップに行くことも控えたいなか、NetflixやAmazonプライムビデオなどの動画配信サービスがすでに普及期に入っていたことが奏功しました。
劇場版がまだストーリーの途中でありながら国内売り上げの第1位になったのも、こうしたサブスクリプションの影響を抜きに語ることができないのです。
著作者と、ファンの関係が変わるサブスク
動画配信、マンガや雑誌の配信、音楽配信がサブスクリプションサービスの代表的なものです。毎月、一定額を支払うと、見放題、読み放題になる仕組みです。スマホやタブレットで利用したり、自宅の大画面テレビに出力することもできます。
便利なサブスクですが、実は私たちと著作者の関係をも変えつつあります。
あなたがyoasobiの曲を聴いたとき、広告収入やサブスクリプションの会費の一部が再生回数に応じてアーティストに直接的に還元されます。マンガや雑誌の読み放題でも、作家や編集部に月会費の一部が配分されています。
今までCDやDVDを借りたりレンタルしたり、雑誌を買ったときの著作者・制作者へのお金の流れは「一度限り」でした。テレビの音楽番組にでて出演料をもらう場合、私たちはむしろ「無関係」です。
しかし、サブスクリプションの普及により、もっとダイレクトに、そして継続的に「ファンのお金が著作者に流れる」仕組みに変わりつつあるのです。
大ファンであるアーティストがいたとき、あなたは「何度も聞く」ことでCDを1度限り買うよりも多くのお金をアーティストに届けることができるかもしれません。
懐かしのアーティストの音源も同様です。10年以上前に大ファンで、CDを全部買ったアーティストもCDを聞くだけでは経済的には何もつながっていませんが、サブスクで過去のアルバムを聞き返せば、視聴料がアーティストに「今」再び払われることになります。
私の知人に漫画家がいますが、絶版となったコミックの著作権を自分で管理し、マンガ読み放題サービスに提供しています。すると、かつてのファンが読み返してくれたり、絶版で読めずにいた新規のファンが読んでくれたことで、生活の糧を手にするようになりました。SNS経由の応援を力に、未完だったタイトルの続編を書き進めるようにもなっています。
サブスクによって、ファンと著作者の関わり方は変化しつつあるのです。
利用者にとっても、エコでお得なサブスク
サブスクはエコでもあります。マンガ雑誌を買ってはすぐ捨てるのは紙資源がもったいないですし、CDやDVDを作ればプラスチック等の資源を大量に消費します。一時期握手券のために何枚もCDを買うことが社会的に問題視されました。それに、売れ残りの雑誌やディスクが廃棄されるのも、やはり資源のムダづかいです。
これに比べてサブスクは社会的負荷も小さいことがあげられます。すでに持っているスマホやタブレットがあれば、印刷したり配送するような資源の消費がなく、気持ちよくコンテンツを使い放題できます。
サブスクの一番の魅力は使い放題ですが、利用するほどお得な仕組みになっています。雑誌読み放題サービスも毎週1~2冊の雑誌を読めば、店頭での購入費用のほうが上回りますし、音楽の聴き放題サービスは、CDを毎月1枚買うより安く利用できます。
ライフプラン3.0の時代は、「所有」ではなく「利用」する時代だと前回も説明しましたが、まさに所有から離れながら、利用の便利さやボリュームは充実していくのが、サブスクリプションサービスによって起きた変化なのです。
ただし便利なだけにムダ遣いにはご注意を
とはいえ、モノを所有せずにコンテンツに触れられ、「いつでも」「定額で好きなだけ」利用できるサブスクリプションサービスにも注意点があります。
それは、利用しなければどんなお得なサービスも、あなたの家計にとってはムダ、ということです。
また、雑誌やCDを買うときは日常生活費からお金を払ったという感覚がありますが、サブスクはクレジットカードやスマホ料金とまとめて払うことが多く、払った感覚が薄れてしまいがちです。
気軽にお試し体験ができるのも要注意で、とりあえず1カ月無料体験と思っていたらずるずると何年も課金されるような事になっていたりもします。
私たちは「利用するサービスを、必要なだけ契約する」という当たり前のことを再確認して、サブスクを利用したいものです。
例えば「雑誌読み放題サブスク」「音楽聴き放題サブスク」「動画見放題サブスク」を1つずつ契約することはムダではないと思います。
しかし、動画見放題を2つ3つ重複して契約しているようなことはあまりオススメできません。試してみてあまり利用しないサービスは、きちんと解約をしておきましょう。
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ライフプラン3.0の時代は、「所有」が豊かさであることから卒業し、サブスクを上手に活用することで豊富なコンテンツとふれあう時代です。そして「パッケージ」ではなく、その「中身」からより本質的な豊かさを感じる時代になってきたのです。