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モノづくりに欠かせぬ半導体とは?どうなる供給不足問題

経済とお金のはなし 中新 大地

モノづくりに欠かせぬ半導体とは?どうなる供給不足問題

【画像出典元】「Spyro the Dragon/Shutterstock.com」

こんにちは、ライター/ランサーズ新しい働き方LABコミュニティマネージャーの中新大地です。

ずっと前に売約したあの車が、まだ納車されない。早く乗りたいのに。
買い替えるはずだったスマホが、まだ納品されない。早く使いたいのに。
その遅れ、もしかすると、今話題の“半導体の供給不足”問題のせいかもしれません。

この半導体不足は昨年から話題に上がっているもので、今も解決されないどころか、これからも自動車メーカーや家電メーカー、さらにはスマートフォンなどのIT企業にも影響が出てくるとされています。

今回はそんな半導体の供給不足問題や、そもそも半導体とはどんなものなのかについてご紹介していきます。

条件つきで電気を通す?今注目の半導体とは

そもそも半導体とは、いったいどのようなものなのか、皆さんはご存じでしょうか?

半導体とは、“半”とある通り、「ある物質」と「ある物質」の中間の性質をもった物質のことです。
「ある物質」とは、ひとつが「導体」、もうひとつが「絶縁体(不導体とも)」のことです。
導体は、金、銀、銅、鉄、アルミニウムなど、主に金属とされる物質のことを指します。これらは電気をよく通すことで知られていますよね。

対する絶縁体は、ガラスや紙、ゴムなどの物質のことを指します。これらは電気を通さないことで知られています。子どもの頃、最初から電池が入っているタイプのおもちゃに紙のシートが挟まれていたことがありませんか?あの絶縁シートがまさにそうです。

半導体はこの間の性質を持っており、温度を上げるという条件のもとで電気を通すものを指します。代表的なものには、シリコンやゲルマニウムなどがありますが、これらの原料を使って作られたダイオードやトランジスタ、そしてそれらが組み合わさったCPUやメモリなどの部品を指すこともあります。

半導体は大人気!技術の進歩で増す需要

チップを持つロボットの手
【画像出典元】「stock.adobe.com/phonlamaiphoto」

私たちの世界は、常に速く、新しいものを求める世界です。そのために技術の研究・開発が日夜続けられています。
技術の結晶である機械には、便利な機能が数多く搭載されるようになりました。
今までは人が運転していたのに、いつしか自動で走れるようになった車やそれとともに機能する最先端のナビゲーションシステム。電話しかできなかったのに、今ではお財布機能やゲーム機にもなるスマートフォンなど。
多機能すぎて、ときにはその機能を持て余すことすらある、そんな超がつくほどのハイテクな機械が相次いで登場しています。

家、家電、車など、これまでインターネットが接続されていなかったモノたちが、ネットワークを通じて相互に情報連携できるようになることをIoTと呼びます。この新技術が主流になるにつれ、ひとつの機械が果たせる役割は、もっと増えていくでしょう。

こうした技術の進歩に比例するように、機械の頭脳であるフラッシュメモリ半導体の需要がますます増えています。それも爆発的に。自動車、スマートフォンのほかにも、太陽光発電、5G、AI、ビッグデータ、クラウドなどの分野でも、半導体は必要不可欠なのですが、現在はその需要に供給が追い付いていません。
また、コロナ禍による巣ごもり需要に紐づく、テレワークおよびゲーミング用PCなどの需要増加も半導体不足に影響していると言われています。

増やさないのではなく増やせない?悩める半導体の生産事情

「需要が増えるなら、供給も増やせばいい。だって、半導体はこれからもいろいろなものに使えるんでしょ?増やす価値があるのでは?」というのが、一般の意見ではないでしょうか。

しかし、半導体自体を作るのにも、多くの技術や専用の装置を用います。工場の開設や生産レーンの増加には、1兆円規模の設備投資が必要です。いくら現在需要があっても、今後技術の進歩による大量生産化で安価となったり、半導体に取って代わるような部品が生まれたりすれば、減価償却できないおそれも・・・。
社の命運を動かすような決断ができる、胆力も財力もあるような企業というのはそう多くありません。

また、供給増加が見込まれた中国の半導体業界では、アメリカとの関係悪化とそれに紐づく経済制裁により、半導体の生産に必要な装置の入手が難しくなっています 。

打開目指す半導体供給不足、各企業・各国の取り組み

ビジネス競争
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では、今後半導体を使う製品の供給は滞り続けるのか?というと決してそんなことはありません。
日本ではキオクシア(旧東芝メモリ)、ソニーセミコンダクターソリューションズ、ルネサスエレクトロニクスなどが、日本の半導体業界をけん引する存在として注目を集めています。

特にキオクシアは、半導体メーカーの世界ランキングでも10位にランクイン。
約200億円をかけて行われる、横浜テクノロジーキャンパス技術開発新棟と新子安研究拠点の新設、総投資額約2兆円とされる、岩手県北上工場(岩手県北上市)での製造棟の新設を控えています。
どちらも2023年の稼働が予定されており、日本の半導体業界の躍進を支える存在として期待されています 。

ちなみに、世界の半導体市場売り上げは2017年に40兆円を突破。コロナ禍の2020年においても上昇傾向にあり、2022年には50兆円を突破するとみられています。
汎用性の広さと市場規模の大きさからみても、大いに投資する価値がある業界であることがわかります。

2021年2月末、バイデン大統領は、半導体製造業者へ約5.5兆円もの支援を行うと発表。技術はあれど、製造を海外に頼っている状態を打開するためです。
中国でも、技術への投資と地方政府に存在する基金を合わせて約10兆円を超える支援を実施。
日本のお隣韓国も、2019年末時点でAI半導体技術の開発に1000億円、2022年までに半導体の装置産業も含めた技術開発に5000億円を投じることを決めています。

こうした各国に対して、日本は数字でみると世界に遅れをとっているのが事実です。1988年時点のシェアはアメリカの36.8%を押さえて、50.3%とトップを記録していた日本でしたが、2019年時点では10.0%となっています。
これを打開するべく日本が掲げるのは、ポスト5G基金を活用しての海外ファウンドリ(半導体を生産する工場)や産総研、大学などの研究機関との技術開発面での連携と、工場の誘致です。この基金には2000億円の予算が組まれており、5Gの産業用途への活用を見越し、それに必要となる半導体の技術開発に力を入れようとしています。

今後、EV、AI、産業用ロボットの分野は、まだまだ開拓の余地があります。半導体は、そうしたブルーオーシャンで、日本が主導権を握るために欠かすことのできない技術です。今まで以上に、官民一体で取り組む動きとなるでしょう 。

今後もしばらく続く半導体不足

ゲームをする
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冒頭で述べた通り、半導体不足は自動車、スマートフォン、PC、ゲーム機などに使うCPUの生産に影響を及ぼしています。
自動車の分野では、フォードやトヨタが半導体不足を理由に、生産の削減を発表。2020年11月に発売された、Playstation 5も半導体不足などを理由になかなか手に入らない状況が続いています。時折抽選による購入が受け付けられていますが、そのたびにすさまじい数の応募が集まっていますよね。SNSでは当たった人が歓喜する様子も見受けられます。
ソニーの関係者は2022年もこうした状況が続くとみています 。

また、企業が半導体を確保することができても、素材の仕入れにコストがかかるため、それが販売価格を引き上げ、消費者の家計を圧迫する状況になることも考えられます。

なんとも窮屈な話ですが、今後一般消費者としては、家電の買い替えもタイミングや予算について、今まで以上に吟味を重ねなくてはならないかもしれません。
私も今ある家電やデバイスを、できるだけ長く使えるよう、大切に扱おうと思います・・・。