在宅ワーク用のパソコン購入は経費になる?確定申告の特定支出控除とは?
仕事で使う本、スーツ、転勤の際の引越し代など、仕事に必要な費用でも、会社に経費と認められていないため自腹を切る人や、在宅用のパソコンや机などの購入費用を自分で負担し、「これって経費にならないのかな…」とモヤモヤしている方も多いのではないでしょうか。
今回はサラリーマンでも経費計上ができ、税金の負担を減らせる確定申告の「特定支出控除」についてご紹介していきます。
サラリーマンでも経費計上できる確定申告の「特定支出控除」
特定支出控除とは、サラリーマン(給与所得者)の業務に必要とされる特定の支出に対して、税金の控除が受けられる制度のことです。確定申告をすることで「所得控除後の所得金額」から差し引くことができます。つまりその分所得税が減るというイメージです。
ただしこの控除を受けるには、特定支出の合計額がその年の給与所得控除額の2分の1を超えている必要があります。2分の1を下回る場合は利用できません。
具体的にどのような支出が対象になる?
特定支出控除は、以下7つの支出が対象になります。
<特定支出控除の対象>
1.通勤費・・・一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出
2.職務上の旅費・・・勤務する場所を離れて職務を遂行するための直接必要な旅行のために通常必要な支出
3.転居費・・・転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出
4.研修費・・・職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出
5.資格取得費・・・職務に直接必要な資格を取得するための支出(平成25年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も対象)
6.帰宅旅費・・・単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出
7.勤務必要経費・・・次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限る)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの
(1) 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2) 制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
(3) 交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)
出典:国税庁「No.1415 給与所得者の特定支出控除」より
たとえば業務の一環で出張や旅行をする場合、「職務上の旅費」として計上でき、業務の一環で資格を取得したのであれば「資格取得費」として計上できます。
ただし、自ら自己負担しており、会社側が支払ってくれない費用のみ該当します。
在宅ワークにかかる費用は特定支出控除の対象になる?
特定支出控除のルール内で、テレワークについて個別に謳った箇所はないため、逆にいえばテレワークでも条件に該当すれば特定支出控除を受けられることになります。
とはいえ現実的にテレワークの経費としてみなされるのは、前述した7つの支出のうち「7.勤務必要経費」になってきます。
国税庁のQ&Aによれば、情報記事や本はOK
国税庁の質疑応答資料で挙げられているQ&Aに、テレワーク(在宅勤務)の扱いについての質問と回答が一例として掲載されています。
これによれば、たとえばテレワークの業務の一環で、インターネット上に掲載されている有料記事を購入した場合、勤務必要経費(図書費)として計上できるとの回答が記されています。
一方、机・椅子・パソコン等の備品購入費用、文房具等の消耗品の購入のための費用、電気代等の水道光熱費やインターネット回線使用のための費用などは、特定支出控除に該当しないという回答が記されています。
特定支出控除は「会社からの証明書」「自己負担分」に注意
特定支出控除を行う上で、以下2点の注意点があります。
会社からの「証明書」が必要
「給与支払者(会社)がその必要性を認めたもの」が控除の対象になりますので、控除を受ける場合には、勤めている会社から必要性を証明できる「証明書」を貰っておく必要があります。
証明書がないと会社から認められていないことになりますので、控除は利用できません。
自己負担分のみが対象
特定支出に該当するのは、サラリーマン本人が自己負担した支出に限られます。会社側が補填している場合は特定支出に該当しません。
たとえば、業務の一環で転勤が発生し、転勤時の引っ越し費用や家賃などの支出が発生したとしても、後々会社側がその分を本人に支払っているのであれば、一時的に立て替えただけであり、特定支出に該当しません。
以上のように特定支出控除はサラリーマンでも利用できる経費計上の制度です。確定申告をしなければならないため面倒ではありますが、人によっては大きく税金を減らせるかもしれません。特に新型コロナウイルス感染拡大の影響でテレワークになり、最近自己負担額が増えてしまった人は検討してみてはいかがでしょうか。