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男性が取れる新・育休制度を確認、会社側も準備しないとアウト!? (2ページ目)

ためる 内山 貴博

実は給料の大部分をカバーできる?

例えば、以下のケースを考えてみましょう。

Aさん28歳

会社員(健康保険は福岡県協会けんぽ)

標準報酬月額30万円

○健康保険料&厚生年金保険料 1万5000円

○毎月の源泉徴収税額

(所得税)5000円

(住民税)10000円

※概算です。また、便宜上賞与はゼロとします。
※住民税は前年所得に対しての源泉徴収額(特別徴収)であるため実際は以下のシミュレーションとは異なります

Aさんの場合、給与支給額が30万円ですが、保険料や税金を差し引くと手取りは27万円となります。1カ月間育休を取得した場合の給付金は30万円×0.67=20万1000円となります。給付金は非課税のためこの金額をそのまま受け取ることができます。よって手取りの約75%は給付金でカバーできていることになります。

・6カ月分給付金を受け取った場合の総額(手取り総額との比較)

<差額41万4000円>

・12カ月分給付金を受け取った場合の総額

<差額113万4000円>

どうしても半年(180日)経過後からは支給率が50%となるため、本来の手取り額との差が拡大してしまいますが、この差額をどうとらえるか?ということをあらかじめ夫婦で話し合っておくと不安も軽減すると思います。または「何日育休を取得しようか?」という判断材料にもなると思います。

男性が育休を取るメリットは?

【画像出典元】「stock.adobe.com/Syda Productions」

このような改正も行われるため、育休を取得する男性が増えていくことが見込まれますが、取得する本人にはどのようなメリットがあるでしょうか?また会社側のメリットについても考えてみたいと思います。

<本人>

一番のメリットは子供と過ごす時間が増えることです。筆者も娘2人の父親ですが、もし今会社員で子供が生まれるなら育休を取得するか?と問われれば、迷わず「はい」と答えると思います。生まれたばかりの赤ちゃんは何もできません。産休が「産前6周・産後8週」と産後の方が長い理由もうなずけます。産後の育児を母親一人で担うのはとても大変です。

育休を取得していれば翌日の仕事を気にせず父親が育児を担うことができます。また「子供は3歳までに一生分の親孝行をする」と言われることがありますが、大変な反面、本当にかわいい時期でもあります。父親としてこの子のためにしっかり働きたい気持ちもあると思いますが、子供の寝顔や笑った顔を見てたっぷり親孝行をしてもらうためにも、あっという間に過ぎていく時期を大切にするためにも、育休は大きなメリットとなるはずです。

<企業側>

企業側のメリットは、近年の大きなテーマでもある「働きやすい環境づくり」に取り組むこととなり、結果として優秀な人材の確保や離職率の低下、企業イメージの向上などが期待できることです。

残念ながら今なお男性の育休取得についてはマイナスなイメージを持つ人がいるように感じます。これは何も育休に限ったことではなく、有給休暇の取得もしかりです。若手社員が何度も申請する有給休暇に理解を示す上司がいる一方で、「アイツは休み過ぎだ」と不満を漏らす人もいるでしょう。

しかし、コロナ禍におけるリモートワークは働き方改革を加速させ、仕事に対する価値観、職場の在り方は確実に変わってきています。先に紹介したように若い人の多くは積極的に育休を取得したいと考えています。それに対応できる企業は、顧客に対してもそしてリクルート面でもプラスに働くはずです。

また、「両立支援等助成金」という制度があり、男性の育休取得を促進した企業には「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」があります。こういった助成金を活用することで、育休社員の穴を埋めることも十分見込めます。

転職が珍しくない昨今においては、「誰か一人に依存する仕事」というのは大きなリスクになりえます。組織、会社としての対応体制が特に重要視されている現状においては、男性従業員の育休取得を促進することは、企業イメージの向上、助成金なども活用した、より効率的な働き方、職場づくりを行うといった好機となりえそうです。

まとめ~まだまだ低い男性の育休取得。これからが重要~

子供と一緒に掃除機をかける男性
【画像出典元】「stock.adobe.com/Halfpoint」

先日、ある外国人に育休取得率の男女の違いを伝えたところ、「なんて男性の取得率が低いの!」と驚いていました。私は10%台まで上昇していることを強調したかったのですが、「それだけ充実した制度があるのに、なぜ使わないの?私の国は男女平等で男性も積極的に育児を行っているよ」という返答がありました。男性の取得率が高まっているとはいえ、世界標準で見ればまだまだ日本は取得率が低く、いびつな状況に見えるようです。

男女・夫婦の在り方も多様性を重視する風潮が高まっています。この流れにのって、「育児は女性のもの」という考え方から脱却していきたいですね。ここまで私が一度も男性が育児に「参加する」とか「協力する」といった表現を使っていないのもそのためです。子育て世代のみならず、周りの理解も大切です。ぜひ一度、この記事を読みながらゆっくり考える時間を設けてください。

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育休についてのQ&A

Q.幼稚園の子供がいます。子供がケガしたときや体調がすぐれないときに1日や半日単位ではなく、時間単位で休暇を取ることは可能でしょうか?

A.可能です。それまでは半日・または1日単位でしたが、2021年1月より「看護休暇および介護休暇」が時間単位で取得できるようになりました。子供の通院や実家に預けに行くといった数時間だけ休暇を取ることができます。幼稚園からお子さんの体調不良の連絡があった際もこういった休暇制度があると使いやすいですね。

Q.男性が育休取得した場合、事業主や会社に助成金が支払われると本文中にありますが、女性の場合も同様の制度がありますか?

A.あります。両立支援等助成金の1つに「育児休業等支援コース」があり、これは男女限らず育児休業する場合で一定の条件を満たすと助成金の対象となります。詳細は以下厚生労働省のリーフレットをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000811565.pdf

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