離婚後はすぐに児童扶養手当の手続きを!ひとり親の支援制度も確認
目次
日本では3組に1組が離婚をするほど離婚率が上昇しています。それに伴いシングルマザーやシングルファザーなどひとり親の家庭も増え、厚生労働省の調査結果では母子世帯が約123万世帯、父子世帯が約18万世帯もあるのが現状です。
※平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要
さらにこの母子家庭での貧困という社会問題も昨今増加傾向にあります。このようなひとり親家庭を対象に支援してくれる制度が「児童扶養手当」です。
この児童扶養手当は、以前は母子家庭のみが対象でしたが2010年8月から父子家庭も対象となりました。
そこで今回はこの児童扶養手当の支給額や、養育費をもらっている場合や、所得が多い場合の受給条件について分かりやすく解説します。
児童扶養手当をもらう条件、支給時期、回数
児童扶養手当とは、父母の離婚や死亡などによって、父親または母親と児童が暮らしている家庭(ひとり親家庭)に支給される手当のことです。該当する児童は18歳に達する日以降の最初の3月31日までが対象です。(障がい児については20歳未満)
児童を監護している母親や父親以外に、その児童を養育している者にも支給されます。例えば父母に代わって祖父母や叔父・叔母などが児童を監護している場合です。
具体的な児童扶養手当の受給要件は次の通りです。
・父母が婚姻を解消した児童
・父(または母)が死亡した児童
・父(または母)が政令で定める程度の障がいの状態にある児童
・父(または母)の生死が明らかでない児童
・父(または母)から引き続き1年以上遺棄されている児童
・父(または母)が裁判所からのDV保護命令を受けた児童
・父(または母)が法令により引き続き1年以上拘禁されている児童
・母が婚姻によらないで出産した児童
ただし上記の場合でも次のいずれかに当てはまるときは、児童扶養手当を受給することはできません。
・母(または父)が婚姻の届出をしなくても事実上の婚姻関係(内縁関係など)にある場合
・請求者(母、父または養育者)もしくは児童が日本に住んでいない場合
・児童が里親に委託されている、児童福祉施設(母子生活支援施設、保育所、通所施設を除く)や少年院に入所している場合
児童扶養手当の支給時期は令和元年11月分から、支払回数が2カ月分ずつ年6回となりました(以前は、4カ月分ずつ年3回)。具体的には1月、3月、5月、7月、9月、11月の奇数月の11日(支払日が金融機関の休日にあたる場合はその直前の営業日)に、2カ月分ずつ指定された金融機関の受給者口座に振り込まれます。
どのくらいもらえる?所得制限や支給額の計算方法
児童扶養手当は、請求者の所得や児童の人数により支給額が変わります。
所得制限の限度額以内であれば「全部支給」となり、受給者の前年の所得が高ければ「一部支給」となります。それぞれの金額は次表の通りです。
この児童扶養手当の額は、物価スライド制で、物価の変動に応じて毎年支給額が改定されています。
児童扶養手当を満額受給できる年収は?
児童扶養手当には所得制限があり、受給者の年収と扶養人数によって限度額が変わります。受給するには、養育者の所得が一定以下であることが条件になります。
全部支給となる所得制限限度額(受給資格者本人の前年所得)
上表のように児童扶養手当には所得制限があり、受給資格者の所得に応じて全部支給、一部支給を確認する必要があります。
ここでいう所得制限限度額の所得額の計算方法は以下の通りです。
所得額=年間収入額-必要経費(※1)+ 養育費×0.8(※2)- 8万円(社会保険料相当額) -下記の主な控除(※3、該当する場合に適用)
※1:収入が給与所得の場合、必要経費は給与所得控除となります
※2:養育費をもらっている場合は全額計上するのではなく80%が所得となります
※3:主な控除には、障がい者27万円、寡婦(夫)27万円、特別寡婦35万円、特別障がい者40万円、勤労学生27万円があります。(福岡市のホームページより)
児童扶養手当の一部支給の場合、計算式は次の通りです
1人目の児童
手当月額=4万3160円-(請求者の所得-全額支給所得制限額)×(所得制限係数:0.0230559)
2人目の児童
手当月額=1万190円-(請求者の所得-全額支給所得制限額)×(所得制限係数:0.0035524)
3人目の児童
手当月額=6110円-(請求者の所得-全額支給所得制限額)×(所得制限係数:0.0021259)
具体例を1つ挙げます。
(例)児童1人、請求者の給与収入200万円(給与所得控除後の所得130万円)の場合
4万3160円-(130万円-87万円)×0.0230559=3万3246円
この例の場合、毎月の児童扶養手当額は一部支給となり、3万3246円となります。
養育費をもらっていると支給額が減る?
離婚後養育費をもらいながら生活しているひとり親の方もいるでしょう。この場合この養育費は所得制限の金額に加算しなければいけません。
前述した所得制限限度額の計算式の通り、養育費を全額計上する必要はなく8割の金額を所得額に加算します。
受給者が養育費をもらっている場合、その養育費の額により児童扶養手当の額は全額支給されず、一部支給や支給停止となることもあります。
具体的な事例を2つ挙げます。
(例1)
児童1人、請求者のパート収入100万円(給与所得控除後の所得45万円)、養育費月額5万円の場合
請求者の前年の所得は、給与所得45万+(養育費年間60万×0.8)=93万となり、全額支給の所得制限限度額を超えることになるため、この場合一部支給となります。一部支給の支給額は以下の通りです。
4万3160円-(93万円-87万円)×0.0230559=4万1777円
(例2)児童2人、パート収入100万円、養育費の月額10万円の場合
請求者の前年の所得は、給与所得45万円+(養育費年間120万円×0.8)=141万円となり、一部支給となります。
一部支給の支給額は以下の通りです。
(1人目)4万3160円-(141万円-87万円)×0.0230559=3万710円
(2人目)1万190円-(141万円-87万円)×0.0035524=8272円
離婚後は「児童手当」も引き続きもらえるの?
「児童手当」は児童を養育する人に手当を支給することにより、家庭における生活の安定及び時代を担う児童の健全な育成を目的とした制度です。「児童扶養手当」と混同されやすいですが、また別の手当です。
児童が生まれてから、15歳の誕生日を迎えた後の最初の3月31日まで、児童養育している人へ4カ月ごとに支給されます。金額は下表の通りです。
(※)児童養育している人の所得が所得制限限度額以上の場合は特例給付として一律5000円の支給額となります。所得制限の限度額の目安は、配偶者と児童2人を養育扶養している場合、年収ベースで960万円未満となります。
この児童手当は、児童扶養手当を受給中であっても支給されます。児童手当はひとり親・ふたり親に限らず受給できる手当で、所得制限もありますが、限度額は児童扶養手当に比べかなり高い金額設定となっています。
また、児童手当と児童扶養手当では、対象となる児童の年齢に差があります。児童手当は中学校卒業までの児童、児童扶養手当は高校卒業まで(18歳到達後最初の3月31日)となっており、児童扶養手当の方が受給期間が長くなります。
児童扶養手当の手続き、申請方法、必要なものは
児童扶養手当の具体的な手続きは、住民票のある市区町村の役場で申請してください。その際必要な書類は下記のようなものがありますが、支給要件や自治体により異なりますので詳しくは各自治体にお問い合わせください。
児童扶養手当の申請に必要なもの
・請求者と対象児童の戸籍謄本(原本)
・マイナンバーが確認できるもの(マイナンバーカード、マイナンバーが記載された住民票など)
・印鑑
・前年の所得証明書
・預金通帳(請求者本人名義)
・養育費がある場合は申告書も必要(窓口にて記入)
児童扶養手当は一度申請して認定された後、毎年8月に現況届の提出が必要です。毎年8月1日から8月31日の間にこの現況届を提出しない場合は児童扶養手当の支給が差し止めとなることもありますのでご注意ください。
ひとり親を支えるその他支援について
ひとり親を支える支援策としては、児童扶養手当以外にも地域によっては下記のような支援策があります。
ひとり親家庭等医療費助成制度(福岡市)
母子家庭の母および児童、父子家庭の父および児童、父母のない児童の保健の向上と福祉の増進を図るため、一定の所得額未満の人に医療費の助成があります。入院500円/日、通院500円/月(高校生の児童と親の場合は800円/月)を超えた自己負担相当額が全額助成されます。
母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業
母子家庭の母または父子家庭の父の経済的な自立を支援するための就業支援制度です。対象教育訓練を受講し、修了した場合にその経費の60%(下限は1万2001円、上限は修学年数×20万円、最大80万円)が支給されます。
高等職業訓練促進給付金
ひとり親が資格取得を目指して修業する期間の生活費を支援する制度です。訓練期間中は月額10万円(住民税課税世帯は月額7万500円)、訓練修了後は月額5万円(住民税課税世帯は2万5000円)が支給されます。
母子父子寡婦福祉資金貸付金(福岡市)
母子家庭、父子家庭の経済的自立と、その扶養する児童(子)の福祉の増進を図るため、原則、無利子で各資金を借りることができる制度です。
養育費相談支援センター
各地方自治体のひとり親家庭支援窓口に養育費等に関する相談員が配置されています。
婦人相談所
配偶者からの暴力全般に関する相談窓口。全国に相談窓口があります。
まとめ
今回は児童扶養手当について受給するための条件やその支給額、養育費をもらっている場合や所得が多い場合などの減額についてまとめてみました。特に以下の点について理解を深めていただければと思います。
・離婚や死別等でひとり親となった場合、児童扶養手当をもらうことができる
・児童扶養手当をもらうには所得などの条件がある
・児童扶養手当は児童の人数や前年の所得により支給額が異なる
・養育費をもらいながらでも児童扶養手当をもらうことができる
児童扶養手当の支給額について、具体的な事例を挙げて解説してきましたが、児童扶養手当は請求するタイミングによっては支給される金額が変わることもあります。
この制度は生活に困窮するひとり親家庭を支えるためのとても良い制度なので、該当する方はお住まいの自治体まで申請手続きをして利用してください。
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児童扶養手当に関するQ&A
Q.子供に耳が聞こえない障がいがあるのですが、この場合児童扶養手当の受給はどのようになりますか。
A.20歳未満の障がい児を監護する父母または養育者に対して支給される手当として、特別児童扶養手当(特児)があります。この特児はひとり親に限らず支給され、また所得制限も児童扶養手当より高い年収でももらえる条件となっています。
Q.児童扶養手当を受給していますが、再婚することになりました。受給資格はどうなるのでしょうか。また何か手続きは必要ですか。
A.児童扶養手当受給中の方が婚姻された場合は、受給停止となります。この場合、婚姻した配偶者の収入の金額に関係なく受給資格がなくなりますので、至急資格喪失届を提出してください。