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やっぱり「有事の金」!?初心者でも知りたい金の価値と購入法とは

経済とお金のはなし 山下 耕太郎

やっぱり「有事の金」!?初心者でも知りたい金の価値と購入法とは

【画像出典元】「Alexander Limbach/Shutterstock.com」

円建ての金価格が、史上最高値になろうとしています。11月12日には、一時1グラム=6820 円台をつけ、史上最高値をつけた2020年8月の7032円が視野に入ったのです。この記事では金価格上昇の要因と、投資対象としての「金」の魅力について解説します。

「有事の金」とは

「有事の金」という言葉があります。有事とは、戦争や事変など非常の事態が起こることです。2000年代になって「有事の金」として注目を集めたのは、2001年9月の米国同時多発テロの時でした。

金は、1970年~1980年代の石油ショックによるインフレやソ連のアフガニスタン侵攻などによる価格高騰の後、長期的な下落トレンドが続いていました。しかし、米国同時多発テロにより世界情勢が混沌とする中で金の価格は上昇し、「有事の金」として投資家の注目を集めたのです。

さらに2008年のリーマンショック時には、世界のあらゆる資産が暴落した中で、金はすぐに価格が回復。金を保有していた投資家は、株で大きく損をしても資産全体の損失をカバーできたのです。

従来の軍事的・政治的有事に加え、リーマンショックのような「経済的有事」にも、金は実物資産としての強みを発揮しました。金の特徴は、世界共通で資産として認められているという点です。株式や債券は、発行している企業が倒産すると価値がなくなってしまいます。しかし、金は現物があるので価値がなくなることはありません。ですから、戦争や紛争、急激な景気後退といった「有事」で買われるようになったのです。

コロナ禍でも金価格は上昇

2020年のコロナ禍の中でも、金価格は上昇。8月には国際指標のニューヨーク先物と大阪取引所先物の金価格が、史上最高値を更新しました。新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化に対応するため、各国の中央銀行による金融緩和で金利低下が加速。金利のつかない金に対して、相対的に投資妙味が高まったうえ、株式市場などの動揺が続いたことで、資産防衛のために金に注目が集まったからです。

ただ、その後は景気回復期待による株価や金利の上昇により、金価格は今年になって一時的に値下がりしていました。

「金」はインフレにも強い

インフレの上昇グラフ
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しかし、金価格は今年の11月になって再び上昇に転じました。米国のインフレ懸念が高まったからです。11月10日に発表された米消費者物価指数(CPI) は、前年同月比6.2%の上昇となり、1990年12月以来、31年ぶりの高い伸びとなりました。消費者物価指数は、インフレを判断する材料として注目されている指標です。

金はインフレでも価値が下がりにくいとされ、インフレに強い資産とされています。また、通常のインフレでは米ドルの価値が低下して円高・ドル安になりやすい傾向がありますが、インフレ抑制のために米連邦準備理事会(FRB)が利上げに動くとの観測が高まり、米金利が上昇。日米の金利差拡大から円安・ドル高が進みました。円建ての金相場はドルで取引されている国際価格と、ドル円相場の変動に応じて日々動きます。ドル建ての金価格上昇と円安・ドル高によって、円建ての金価格が大きく上昇しているのです。

11月下旬に、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の脅威によって、金価格は一時下落しました。これは、オミクロン・ショックが深刻になれば景気が悪化し、インフレになる可能性が下がるからです。通常、景気が良くなるとモノがよく売れるので、価格が上がりますが、景気が悪化するとモノが売れなくなるので、インフレになる恐れは低くなるのです。

ただ、オミクロン株の脅威がそれほどでもなければ、再びインフレ懸念から金価格が上がる可能性は高いと考えられます。

インフレ対策として金を購入する

金の豚の貯金箱
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インフレとは、私たちが普段買っている日用品やサービスの値段(物価)が上がり、お金の価値が下がることです。現金や預貯金では、インフレになると実質的な価値は下落してしまいます。インフレ対策には株や不動産なども有効ですが、金もインフレ時に価値が上がる傾向にあります。

金利がつかないため、金は投資の主役にはなりませんが、資産の10%程度を金に振り分けることで、有事など万が一の時にインフレヘッジとしての効果が期待できるのです。
金投資というと、地金やコインなどの現物を思い浮かべる人も多いでしょう。ただ、地金やコインはある程度の資金が必要になるほか、管理が大変です。そこで、金の購入には純金積立や金ETF(上場投資信託)を利用するのがオススメです。

純金積立なら1000~3000円程度から始めることができ、金ETFも数千円程度から購入できます。また、金ETFは東京証券取引所に上場しているので、株式と同じようにリアルタイムで取引できます。

これまで投資を経験したことのない人は純金積立で、株式取引などをしている人は金ETFで金投資を始めるのがいいでしょう。

まとめ

有事やインフレへの備えとして金投資は有効です。ただ、金利がつかないため、保有しているだけでは利益を生みません。株式や債券などと組み合わせ、ポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)の一部として金を保有してみてはいかがでしょうか?