日本の投資姿勢に変化の兆し。2022年の資産運用のカギとは?
監修・ライター
日本銀行が2021年12月20日に発表した国内の個人金融資産(2021年9月末時点)は、1999兆8000億円で、2022年に2000兆円を突破する見通しとなり 、ここ30年で倍増しました。ただ、増加率は欧米に比べて劣っています。その原因は何なのか、そして今後どのような資産運用を行うべきかについて解説します。
日本では個人金融資産の半分以上が現預金
2021年の日経平均株価は28,791.71円で取引を終了し、年末終値としては史上最高値を付けた1989年の38,915円以来、32年ぶりの高値水準となりました。
こうした株高も追い風となり、日本の個人の金融資産は30年前から倍増しました。一方で株や投資信託などのリスク資産が金融資産の半分を占める米国の個人金融資産は、株高も影響して利益が膨らみ、30年で6.7倍にも増えました。
日本では保有する金融資産のうち半分強を現預金が占め、株式や投資信託の比率は15%程度と横ばいが続いており、貯蓄から投資への流れは未だ鈍い状態です。日本人は、まだ安全志向が強いのです。
最近の株高で若者を中心に投資に対する変化の兆しも
ただ、ここ数年株高基調が続いているので、若者を中心に投資に対する姿勢が変化してきています。日本株だけでなく、米国株を中心とした海外株式ファンドなどで投資を始める人が増えているのです。
日本人の株式と投資信託の保有額は307兆円となり、3年ぶりに過去最多となりました。少額投資非課税制度(NISA)などの制度が整ってきたこともあり、今後貯蓄から投資への流れは緩やかながら進んでいきそうです。
米国など外国株に資金が集まる現状
日本の個人投資家は、海外株式への投資を増やしています。2021年は、米国を代表する株価指数であるS&P500種株価指数が27%上昇するなど、パフォーマンスが好調だからです。
日興リサーチセンターによると、海外株ファンド(ETF=上場投資信託を除く)への2021年の純流入額(流入から流出を引いた値)は、2021年12月16日時点で7兆9,196億円でした。 これまで最大だった2007年の5兆6,760億円を大きく上回っています。
一方、日本株へ投資する投資信託の純流入額は357億円と3年ぶりにプラスになりましたが、海外株ファンドに比べると規模は非常に小さくなっています。
これは、国内の株価指数である日経平均株価は2021年に+5%程度と、米国を代表する株価指数であるS&P500種株価指数の+27%に比べるとかなり劣り、上値の重い展開が続いたことも関係しているでしょう。
米国株の一人勝ちは続くのか
2021年の株式市場は、米国株の「独り勝ち」となりました。約480兆円と国際投資で最も利用されているMSCI の「オール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」 は、2021年に18%上昇しました。ただ、米国株だけで見ると24%上昇したのに対し、米国株を除く世界株は9%高にとどまっています。
ACWIは、先進国24カ国、新興国21カ国、フロンティア国25カ国の約70カ国を対象とする指数で、各国市場の時価総額上位85%をカバーしています。
同指数に占める米国株の時価総額シェアは、2021年11月末に過去最高の61.5%に達しました。10年前のシェアは45.7%だったので、約16%も上昇しています。
世界の株式市場に分散投資しても米国株のシェアが60%を超えているので、リスク軽減効果は限られてしまいます。ほぼ、米国株の値動きで投資成果が決まってしまうような状況になっているのです。
前述したように、2021年のS&P500種株価指数は27%上昇しました。しかし、過去30年間の上昇率は平均で8%程度です。2022年はFRB(米連邦準備理事会)のテーパリング(量的緩和の縮小)前倒しや、利上げによって金利が上昇する可能性が高く、このような金利上昇局面では、株価は下がりやすい傾向があるため、2021年のような上昇は難しいと考えます。
2022年の資産運用法とは
2022年の資産運用を考えるならば、好調な米国株を中心とした運用も良いでしょう。ただ、高値警戒感もあるので、米国株を中心にしつつ、日本株や中国株など他の国・地域の株式にも資金を振り分け、地域の分散をした方がよりリスクを抑えた運用ができます。
また、株式だけではリスクが高いので、債券や不動産投資信託(REIT)など複数の資産に分散投資をして、リスクを抑えた運用を心がけるようにしてください。自分で選ぶのが難しい場合は、「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」などの、1本で国内外の株式や債券、リート(不動産投資信託)といった複数の資産に分散投資できるバランスファンドに投資するのもいいでしょう。
まとめ
今後はインフレ(物価上昇)が進む可能性もあるので、現金や預貯金だけでは資産が目減りする可能性があります。ですから「インフレに強い」といわれている株式を中心とした運用を考えた方が良いでしょう。モノの値段が上がるインフレになると、モノの値段が下がるデフレよりも企業の利益は大きくなるので、株価も上がりやすくなるからです。
株式を中心とした分散投資をおこない、今後は「インフレに負けない運用」を心がけるようにすると良いでしょう。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。