奨学金の「予約採用」「在学採用」どっちが良い?違いやメリットを比較解説
目次
経済的な理由や家庭の事情で進学が難しい人に貸与などを行う奨学金制度。中でも多くの人が利用する日本学生支援機構の奨学金の申し込みには「予約採用」「在学採用」の2つの方法があります。
「お金がかかるから」と進学をあきらめる前に、自分に合った奨学金制度がないか探してみてはいかがでしょうか。今回は奨学金の基本的な知識と、申込みの期限が大きく違う「予約採用」と「在学採用」の違いについて解説します。また、奨学金を上手に返している人の傾向なども見ていきましょう。
日本学生支援機構の奨学金制度の種類と利用条件
奨学金制度は主に以下のように3つに分けることができます。「貸与型」と「給付型」があり、多くは「貸与型」で「無利子」と「有利子」に分かれます。給付型は返還義務がありません。(以下表参照)
奨学金は他のローンなどと比べると金利水準が低くなっています。さらには第一種奨学金であれば「無利息」のため、金利負担が生じません。有利息の第二種奨学金より第一種の方が良いと誰しもが思うわけですが、第一種奨学金の方が条件は厳しくなり、借りる本人の成績も一定水準が求められます。
返還不要の給付型奨学金は住民税非課税世帯に該当するなど、経済的に困難な状況の学生が対象となります。「無利息」や「返還不要」は限られた一部の人を対象にした制度であると踏まえておいてください。
(奨学金の条件)
奨学金制度を活用する人は学生の約3人に1人
日本学生支援機構の調査(令和元年)によると学生348万人のうち、127万人が貸与奨学金を利用しています。実に学生2.7人に1人に及びます。
(「日本学生支援機構について」より)
なお、15年前までの貸与割合は「4人に1人」でした。貸与割合の高まりは大学へ進学する人が増えていることも背景にあると思います。「大学へ進学するのが当たり前」となり「奨学金を借りるのも一般的」となっているのです。
筆者は大学で非常勤講師を務めていますが、授業の合間の休憩時間中に学生同士が奨学金の話をしている場面を何度も見たことがあります。
「予約採用」と「在学採用」の違いとそれぞれのメリット
ここまで奨学金の基本的な内容を確認してきましたが、奨学金は申し込むタイミングも大きなポイントとなります。大学進学前の高校3年時に申し込む「予約採用」と大学入学後に申し込む「在学採用」があります。それぞれのメリットと注意点を説明します。
予約採用
「予約採用」は入学前に奨学金を受け取れることが分かるため、安心して受験、進学の準備を進めることができます。入学後に奨学金を実際に受け取るかどうか決めることができ、月額の変更なども可能なので、大きなデメリットはありません。入学前に採用されても、入学後にも各種手続きがあるため、その点は覚えておいてください。
在学採用
現在の奨学金の多くは「予約採用」となっているため、奨学金を検討している場合はなるべく予約採用で申し込み手続きをする方がよいでしょう。ただし、在学採用にもメリットがあります。
それは収入などの条件がやや緩和される点です。例えば予約採用だと世帯収入が基準以上で条件から外れて申し込めない場合でも、在学採用であれば申し込めるという場合もあります。
収入が基準以上の世帯でも、住宅ローンや親の介護などで支出が多く家計が厳しいというケースもあるでしょう。そういった場合は在学採用での奨学金を検討してみてください。ただし、申し込み手続きが入学した後になり、必ず採用されるわけではないこと、採用されても予約採用に比べ数ヵ月ほど支給が遅くなる点に注意してください。
奨学金の返済を延滞してしまうとどうなるの?
給付型を除けば奨学金は返済することが大原則となります。「奨学金」も「借金」の一種です。返済が延滞した場合は本人や保証人に督促が届くことになります。延滞が続くと「個人信用情報機関」に登録され、ご自身の信用を低下させてしまいます。
また最終的には強制執行といった法的手段にまで及びますので、奨学金は延滞することなく返済するという意識をしっかりと持っておくことが大切です。
しかし卒業後、「給料が少なくて奨学金の返済までできない」「失業してなかなか再就職できない」といった厳しい状況に直面する可能性もあります。そういう場合のために、返済方法を変更して返済額を軽減したり、一定期間返済を猶予してもらう制度もあります。早めに日本学生支援機構に相談するということを覚えておいてください。
奨学金を上手に借りて、上手に返す
今回は奨学金の基礎知識と「予約採用」と「在学採用」について紹介しました。経済的な事情で学ぶ機会を失わなくていいように、奨学金について事前に調べておくようにしてください。
なお、最後に紹介しました「延滞」についてですが、独立行政法人日本学生支援機構の令和元年度奨学金の返還者に関する属性調査結果を見ると「延滞する人」と「そうじゃない人」に明らかに違う点があることに気付きました。1つは「奨学金の申込手続き」を自分で行ったかどうかです。
・奨学金申請時の申込手続き
延滞者 :本人39.9% 親28.2%
無延滞者:本人60.0% 親11.1%
延滞しなかった人(無延滞者)は延滞者に比べてみると自分で奨学金の申請手続きを行っています。一方延滞者は親に任せている比率が高いようです。
また「申し込み前」に奨学金の返済義務を知っていた割合にも大きな差があります。
・「申し込み前」に奨学金返還義務を知っていた割合
延滞者 :50.3%
無延滞者:89.4%
延滞者の半数近くは申し込み前に返済義務があることを知らなかったようです。
「返済義務がある奨学金を借りている」としっかり認識することは、「授業への意識が高まり、その結果、就職活動がうまくいき、社会人として活躍できる。」という好循環につながるでしょう。奨学金の申し込みの段階から、学生本人がしっかり「学費」や「奨学金」に向き合うことが、その後の長い人生を左右するかもしれません。