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Z世代の難問「家を買うか、賃貸か」、新たに出てきた問題点とは

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

Z世代の難問「家を買うか、賃貸か」、新たに出てきた問題点とは

世代を超えた永遠の課題「家を買うか賃貸か」

時代の変化、ライフスタイルの変化、そしてお金との付き合い方の変化を考えている本連載ですが、いくつか変わらないものもあります。それは「住む場所をどうするか」という問題です。

生活に欠かせない3つの要素として、「衣食住」といいますが、私たちはどこかに「住む」ことを考えなければなりません。そしてそれは一生続きます。

住む方法としては「賃貸」で部屋を借りる方法と、「持ち家」として自分の家を買って住む方法があります。賃貸の場合はその月の家賃を払えば1カ月の住む権利が確保でき、持ち家の場合は多くの場合、住宅ローンを組んで何十年もかけて返済し自分のものとします。

家を買う平均的な年齢は「アラフォー」です。30歳代の後半から40歳代の前半にかけて、多くの人が住宅ローンを設定し家を買います。これは住宅ローンの返済期間が20~30年くらいを設定することが一般的で、年齢的なタイムリミットとなっているからです。

一方で、「賃貸」派を名乗る人も増えています。重いローンが確定するよりは、無理のない金額で賃貸生活を送り、住みたいエリア、間取りの物件を乗り換えていく自由さを求める暮らし方です。

家を買わない選択のひとつとして、親が所有している「持ち家」に住まわせてもらうこともあります。通勤に支障がなければ結婚までは親と同居するケースは少なくありませんし、結婚後子どもができたあと、3世代同居の形で親の家に住むこともあります。

このテーマ、居心地のよい空間、帰る場所をどうするか、という問題ですが、お金の問題でもあります。

特に住宅ローンを組む場合、数千万円以上のお金を借り、利息を含めた返済義務を負うことになります。

家を買うのか、賃貸暮らしが正解か

ライフプラン1.0世代(団塊世代)において、家は基本的に買うものと考えられていました。実家を長男家族が支えるものとして、他の兄弟は自分の家を買うことが前提だったからです。

ライフプラン2.0世代(バブル入社~団塊ジュニア世代)においても、親世代のルールを基本的にはそのまま踏襲していました。国が年金生活に入るまでに自分の家を持てるよう、税制優遇策などを講じて支援したことは、マイホームを手に入れることが日本人の当たり前のものとして印象づけていました。

しかし、ライフプラン2.0世代と3.0世代の一部で「生涯賃貸派」という勢力が現れ始めました。家を買わずにずっと家賃を払い続けていこうという選択肢です。

さて、「家を買うのがお得か」「賃貸暮らしがお得か」はどちらが正解なのでしょうか。それぞれのメリット・デメリットを簡単にまとめると以下のとおりです。

試算をしてどちらが有利か比較する記事がしばしば見受けられます。結論はどちらにも一長一短ありというような拮抗した数字が示されることが多いようです。

家を買うか生涯賃貸派か、というテーマについて、ファイナンシャルプランナーの立場でいえば、「どちらにも転ぶ」としかいいようがありません。変動要因が多くて、いかようにも試算の数字は出せるからです。

ただひとつ、言えるのは「老後には、家賃を払わずに住む家が欲しい」ということです。年金生活に入ったとき、国の年金額は家賃を上乗せしてくれません。日常生活費のやりくりにはなんとか足りるくらいの年金額をもらえても、そこから家賃を引いたら家計は厳しくなります。

かといって「65歳から90歳までの家賃(月7万円として2100万円)」をリタイアする前に貯めておくというのは実現するのが難しいマネープランです。いわゆる「老後に2000万円」とは別に「老後の家賃2000万円」を貯めておくということだからです。

しかも長生きして100歳まで家賃を払うことになれば、家賃の予算は2940万円までふくらみます。これも不確定要因ですが、持ち家なら古くても家賃無用で住み続けることができます。

現役時代は賃貸で暮らしたとしても、老後は家を持っておいたほうが安心だと思います。普通の選択肢は、アラフォーの時期に20~30年のローンを組み、家を買うことです。賃貸の時間を長く取る場合は、ある程度のお金を貯めておき、老後は首都圏を離れて、中古で手狭な部屋を買う方法が考えられます。

これから判断の軸となる「親の家」の存在

ところが、「家を買わなくてもOK」という人もいます。ライフプラン1.0や2.0世代の親が、すでに自分の家を所有する時代となっており、少子化によりその家を相続することができるからです。

一人っ子の男女が結婚したとします。そして、それぞれの両親が持ち家を所有していたとします。この場合、「1組の夫婦に、2軒の家が相続される」ことになります。

メンテナンスをして住み続けられるとすれば、自分で家を買わなくても、いつかは親の家に住むことができるというわけです(親と同居するか、親が亡くなった後に越してくる)。この場合、何千万円もの住宅ローンと向き合わなくてもよく、賃貸暮らしでもOKとなります。

一人っ子の場合、おひとりさまでも親の家に住めるので家を買う必要はありません。同居し親の介護もしつつ、いつかはその家を相続することになるでしょう。

しかし、兄弟姉妹がいる場合はこの条件が崩れます。男の3人兄弟だとすれば、1軒の家を相続できるのは1人しかいません。残りの2人は家を相続しない代わりに金銭を相続で受け取るとしても自分の家を確保する必要があります。

兄と妹の二人だった場合、兄夫婦が親と同居していたなら、妹は自分の家を確保しなければなりません。
おひとりさま女子であったなら、住宅購入も大変なので、そのあたりもしっかり考えなければなりません。

「自分の家」について考えるとき、まずは「親の家」について一度考えてみてください。

そして、親の家に住めないとなれば、住宅ローンを活用しつつ自分の家を手に入れることを真剣に考えてみてください(家はあっても田舎なので自分は住めない、ということもありますよね)。

住宅ローンの極意は「少なく借りる、低金利で借りる、短期間で返す」

さて、住宅ローンを組むとなれば銀行に相談することになります。今はメインバンク(給与振込口座のある銀行)以外でも、住宅ローンの相談に乗るところが多くなっていますから、いろんな銀行の相談会で話をしてみましょう。

住宅ローンの基本的な借り方は3つです。

・できるだけ少なく借りる……頭金を多く用意するか、高額物件を避けることで借入額そのものを減らす。返済能力を背伸びして選んだ高額物件は返済が大変になる。

・低金利で借りる……同じ金額を借りるなら、低金利で借りたほうが返済の総負担が少なくなる。金利の設定には、固定金利と変動金利がある。

・短期間で返す……35年ローンのような長期設定も可能だが、少なくとも自分の引退年齢には終了するような期間とする。もっと短い期間で返す計画とすれば、毎月の返済額は多くなるが総返済額(利息の分)が少なくなる。

頭金をしっかり用意するためには、実際の購入よりもかなり早い段階から「家を買おう」という目標をはっきりさせ、そのための積立をしていく必要があります。

アラフォーの頃に家を買おう、と考えたら、アラサーの頃からボーナスからの貯金や毎月の積立定期預金などをがんばっておきたいところです。

基本的なローンの仕組みは、ライフプラン3.0世代と上の世代で変わりがありません。そこは先輩方のやりかたも参考になりそうです。

超低金利時代はいきなり終わるかもしれない

最後にひとつ、ライフプラン3.0世代にとっての難問が目の前に現れ始めています。それは住宅金利の問題です。

この数十年、住宅ローン金利は低いところを這ってきました。仮に3000万円を借りた初年度の金利が年1.0%と年3.0%で比較すれば、前者は30万円、後者は90万円の利息が乗ってきます。毎月10万円(年120万円)の返済をしたとき、どちらが大きく元本を返せるかは明らかです。この差は数十年の返済期間を考えるとさらに広がります。

特に近年はマイナス金利政策の結果、住宅ローン金利はきわめて低い水準にあり、これは私たちにとってプラスに働いてきました(定期預金の金利が低くなったが同時に住宅ローンの借入金利も低くなった)。

ところが、世界的には物価上昇とインフレが起きており、日本もこの流れに巻き込まれつつあります。国内の物価上昇の傾向が鮮明となってきましたし、外国との金利格差などによって生じている大幅な円安基調なども大きく日本経済に影響を及ぼしています。

もしかしたら、日本でもどこかのタイミングでマイナス金利政策を終了させることになるかもしれません。そうなると住宅ローン金利は今ほどの低金利では借りられなくなります。

かといって、「頭金ゼロでもとにかく住宅ローンを組もう」と焦るほうがよくありません。今後の金利情勢もにらみつつ、

「数十年後も納得して住み続けられる物件かどうか」
「物件価格は適切かどうか」
「頭金準備など購入するタイミングかどうか」

などを総合的に判断してみてください。

家を買うという人生の大きな決断は、あらゆる世代にとっての難問でした。そして、家を買うことはいつの時代も家族の笑顔のもとでした。

ライフプラン3.0世代も、家を買うかどうか、じっくり悩んで人生の決断に踏み切ってみてください。