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要注意?今後起こるかもしれない住宅ローンの重大な変化と対応策

経済とお金のはなし 竹中 英生

要注意?今後起こるかもしれない住宅ローンの重大な変化と対応策

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住宅金融支援機構が令和4年8月19日に発表した、住宅ローンの新規貸出額に関する調査結果によると、令和4年度の新規貸出額は、21 兆 6896 億円と対前年度比で3.5%増加し、6年連続で 20 兆円台と堅調な推移を見せています。

国土交通省が発表している不動産価格指数を見ても、新築マンション(都内)の不動産価格はこの10年で2倍近く上昇しているものの、住宅ローン金利は極めて低い水準で推移し続けているため、利払いを含めた毎月の返済額は20年前と比べてほとんど変わっていません。これが追い風となって住宅ローンを利用する人やその貸出額は増え続けています。

しかし、こうした風景も、もうそんなに長く続かないかもしれません。なぜなら住宅ローンの低金利時代が、ある日いきなり終わりを告げるかもしれないからです。

そこで今回は、既に住宅ローンを借りている人や、これから借りようと考えている人のために、これから起こるかもしれない重大な変化について解説していきます。

物価の上昇に日銀はどこまで耐えられるか

日本銀行
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昨今の物価の上昇はとどまる気配をまったく見せず、10月以降には更なる値上げが各メーカーから発表されています。

この値上げの要因には、今年2月から続くロシアによるウクライナ侵攻に端を発したエネルギー価格の高騰がありますが、それだけではありません。急激な円安が進み、輸入物価が大幅に高騰してしまったためです。この原因と言われているのが、日米の金利差です。

新型コロナウイルスの影響で、日本以上に工場の海外移転が進んでいた米国では、サプライチェーンの供給不足による物価上昇が急激に進行します。これに対して行われたバイデン政権による大規模な経済対策が功を奏し、物価が上昇したまま旺盛な消費意欲が回復。その結果、物価の上昇に拍車がかかってしまいます。

ここへウクライナ侵攻の影響が加わり、物価はさらに上昇を続け、2022年3月の消費者物価指数は前年と比べ8.5%も上昇してしまいます。

これに対抗するためFRBは利上げを行い、加熱する景気を冷やして何とか物価の上昇を抑え込もうとします。その結果、日米の間には大幅な金利差が生じてしまいました。

金利の高い米ドルに対してゼロ金利の日本円ではとても太刀打ちできません。瞬く間に円安は進み、9月13日にはとうとう1ドル144円台まで来てしまいました。

円安に対する有効な対策は?

円安であれ円高であれ、どちらにもプラスとマイナスの両面があります。したがって、必ずしも「円安が悪い」「円高が悪い」とは言えませんが、いずれにしても急激な為替の変化は日本国内に悪い影響を及ぼす可能性が高いため、好ましいとは言えません。

では、日本国として、物価高に対抗するために円高にシフトしていくための手段があるかというと、今のところ有効な手段がそれほどあるわけではありません。

米国がドル高を容認している以上、かつてのように日米で協調して為替介入を行うことはできません。また日本の持つ外貨準備高には限りがあるため、日本単独での介入にも限界があります。とはいえこのまま放置し続けるわけにも行きません。

したがって、円安を少しでも是正するためには、米ドルに対抗して日本円も、いつかどこかで利上げをせざるを得ない状況なのです。

債権と利回りの関係

天秤を持つ女性の手
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長期金利を見る場合の最も代表的な指標は、10年国債の利回りです。この利回りに住宅ローンの金利も大きな影響を受けています。

そこでまず、債権と利回りがどのような関係にあるのかを整理しておきましょう。なお、便宜上国債の利回りに対する税金は加味しておりません。

国債が売られて値が下がると金利が上がる

1年満期で額面1万円の日本国債(利回り1%)を例に考えてみましょう。この国債を1年後の満期まで保有していると、額面の1万円と金利100円の合計1万100円が得られます。利益は100円なわけですから、利回りは以下のようになります。

  • 利益100円÷額面1万円=利回り1%

では、日本経済の先行き不安などから国債の価格が低下し、額面1万円のものが9950円に値下がりして売られたらどうなるでしょうか?

この国債を満期まで保有すると、上述のように1万100円が得られるわけですから、その利益は150円(1万100円-9950円)となり、金利を含めた利回りは以下のようになります。

  • 利益150円÷額面1万円=利回り1.5%

このように、国債の値が下がると利回りは上がり、逆に国債の値が上がると利回りは下がるわけです。

金利を上げるにはどうすれば良いか?

それでは、米国のFRBはどのようにして金利を引き上げているのでしょうか?

先程説明したように、債権は売買価格の値下がりによって金利が上昇します。金利が上昇すればお金が借りにくくなるわけですから、景気は冷えていき物価の値上げは止まります。

FRBは国債の買い入れ量を減らす(=国債の取引量が減って価格が落ちる)ことにより米国債の値下げを誘発させ、それによって長期金利を上昇させているわけです(それがすべてではありませんが)。

したがって、日本も長期国債の利回りを上げようとしたければ、日銀が大量に買い込み続けている日本国債の買い入れ量を減らすことで日本国債の価格が下落し、その結果金利が上昇に転じるわけです。

利上げしたくても簡単に利上げできない日銀

いろいろな方向の矢印と男性
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「円安による物価高を解消できるなら利上げすれば良いじゃないか」と思われるかもしれませんが、簡単にすることはできません。なぜなら、金融機関からの借入利息が軒並み上昇してしまうからです。

これによって最も大きなダメージを受けるのが、これから住宅ローンを借り入れようとする人やすでに変動金利で住宅ローンを借りている人です。  もちろん金融機関から資金を借りている一般企業にとっても金利上昇により資金調達コストが上昇してしまいますが、最終的に製品の販売する価格などに転嫁できます。

しかし、住宅ローン金利の上昇は、何かに転嫁することができません。上昇した金利は、すべて借りている人が負担することになります。収入や蓄えがある程度以上ある人であれば問題ありませんが、そうでない人もたくさんいます。一歩間違えれば、日本経済を支える柱の一つである「不動産市場」に悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。

とはいえ、150円をいつ突破してもおかしくない円安の状態を、この先いつまでも容認できるとも思えません。今、日銀は、「進むも地獄、とどまるも地獄」のジレンマに陥っています。

今後の対処法について

今のところ、政府からは具体的な円安対策を行うことなどは発表されていませんが  、このまま進むようであればいつかは利上げが起こってもおかしくない状況にあります。

住宅ローン金利の利上げに対処する方法には、おもに「変動金利型から固定金利型への借り換え」と「繰り上げ返済」の2つが考えられます。恐らく、多くの方が金利の変動を見ながら借り換えのタイミングを計ることになると思われますが、タイミングを見誤ると大幅に金利が増えてしまう可能性も考えられるだけに、細心の注意が必要です。

また、繰り上げ返済は利息の支払い額を減らすのに有効な手段ではありますが、繰り上げ返済のための資金をある程度以上持っている人しか対応できません。

したがって現状では、住宅ローンを借りている(もしくは借りようとしている)誰にでも確実に通用する有効な対策を見出すことは難しいですが、金利上昇が生じた場合の備えについて今のうちからどうすべきかを検討しておくことがもっとも大切だと思われます。

個人で判断するのが難しい場合は、融資を受けた金融機関の窓口などに相談をしながら、金利の推移を注意深く見守ることがこれから必要となるでしょう。