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20代のiDeCo加入が加速!? 早く始めるほどお得なワケとは

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

20代のiDeCo加入が加速!? 早く始めるほどお得なワケとは

2022年10月からiDeCoの利用対象者が780万人拡大へ

ライフプラン3.0世代のうち会社員である人の多くはもしかすると、「私たちはiDeCoに入れない!」と思っていたかもしれません。会社が企業型確定拠出年金を実施しており、これに加入している場合、iDeCoの同時加入が制限されていたからです。

今の時代、企業型確定拠出年金を会社の退職金・企業年金制度として採用する企業が増えています。企業数では40000社以上が採用していますし、企業年金制度としてもっとも採用割合が高い制度という調査もあるほどです。

企業型確定拠出年金は会社が実施する退職金制度の一部(ないし全部)です。基本的には会社がお金を出し社員は全員が入ります。一方で、iDeCoは個人が任意で老後に備えて自分のお金を積み立てる自助努力の制度ですから、この2つは違う性格の制度です。

それなのに、企業型確定拠出年金に加入している会社員はiDeCoに同時加入することが制限されているというのはおかしな話のようですが、実はiDeCoの本当の名前は個人型確定拠出年金といいます。iDeCoと企業型確定拠出年金は同じ法律にもとづき設定されている仕組みです。そうした理由もあって、同時加入には制限がありました。

今回、「企業型確定拠出年金のマッチング拠出を利用してない(自分のお金を会社の制度に追加入金しiDeCoと同等の税制優遇を得るしくみ)」人であれば、基本的に誰でもiDeCoに加入できるようになります。企業型確定拠出年金の加入者はすでに780万人を突破していますので、「今まで入れなかった人」はかなり多くいました。そう考えるとiDeCoの対象者が大きく拡大したことになります。

あなたがもしライフプラン3.0世代として、このiDeCo加入を考える場合、どのあたりに注意していけばいいでしょうか。今回は「今まで加入できたけどまだ加入していない人」「今回加入できるようになった人」のためのiDeCo活用術を考えてみます。

未来のことを考えている若い人ほど、iDeCoに加入している

未来の自分を意識し、そのために早くから備えていくことができるのはライフプラン3.0世代の新しい感覚です。ライフプラン1.0世代および2.0世代は基本的に「借金を先行させてライフプランを実現する」という発想が強かったからです。

しかし、ライフプラン3.0世代は「毎月の家計は基本的に黒字にする(キャッシングなどで赤字を先送りしない)」「ムダな消費は抑える(カーローンやリボ払いを前提としない)」という感覚があり、また将来のための備えも進めている傾向があります。

個人型確定拠出年金にiDeCoという愛称がつき、対象者が大きく拡大したのが2017年1月です。このとき、全体の加入者数が45.1万人、20歳代の加入者数はわずか17,364人でした(2017年3月末データ)。

2021年3月末のデータではなんと、全体の加入者数194.6万人、20歳代121,537人と急増しています。おもしろいのは、全体の伸びが4.3倍のところ、20歳代の伸び率は7.0倍とこれを上回っていることです。

人数でいえば、40~50歳代に及ばないとはいえ、20歳代からiDeCoを使って将来に備えようという意識がある、というのはかつては考えられなかったことです。

これはまさにライフプラン3.0世代の動きのひとつだろうと思います。

ライフプラン3.0世代のiDeCo活用の注意点とメリット

若い世代におけるiDeCo活用についてはいくつかの注意点があります。しかし注意点をクリアしてでも活用するだけのメリットもあります。


注意1:積立金は60歳以降まで戻ってこない

iDeCoの積立金は年金目的にのみ用いることを前提としているため税制優遇が得られます。中途解約の規定はあるものの条件はかなり厳しく、現実的には受けられないと考えてください。

メリット1:何があっても老後にもらえる

しかしこれ、見方を変えると老後のお金の準備にとって最強の手段でもあります。短期的な誘惑でお金を使っちゃおうとしても、制度がそれを阻んで「老後まで取っておきなさい」とガマンさせてくれます。何せ自己破産に陥ってもiDeCoの資金が解約させられることはなく老後に残しておけるほどです(もちろん、若くして死んでしまったときは遺族にお金は支払われます。国が没収することはありません)。

注意2:所得税・住民税の軽減メリットは「利用開始後」のみ得られ、必ずゼロ円スタートになる

どんなにiDeCoの税制優遇が強力であっても、実際に掛金を拠出した人にだけ与えられます。また手元にどんなにお金があっても、iDeCoに加入したときはゼロ円からスタートしなければなりません。

メリット2:つまり早く始めるほど税制優遇も積立元本も大きくなる

“注意2”を読み替えれば、早く始めた人ほど税制優遇が大きくなるということです。仮に月23,000円を積み立てられるとして、税率20%の人の場合、35年積み立てれば元本966万円、税制優遇がそのうち193.2万円となりますが、50歳に気づいて15年しか積み立てなければ元本414万円、税制優遇82.8万円です。「お金は出せるからもっと積み立てたい」と言ってもそうはいきません。早くがんばった人ほど、たくさん税制優遇を得られます。

あえて早く、iDeCoを始めてみよう

あなたがもし、20歳代あるいは30歳代でiDeCoに興味があったとしたら、早めに口座開設をしてみることをオススメします。

もし中途解約の条件が気になるようでしたら、掛金を月1万円以下にして「これだけは老後のために絶対下ろさない積立なのだ」と自分に言い聞かせてください。最低金額は月5000円からなので、「とりあえず5000円」でもかまいません。それでも積み立てた額の20%くらいの税制優遇が確実に生まれます(税率は所得状況などによって変化します)。

また、早く始めることにより少額から投資経験をスタートできるのもメリットです。最初は数万円から数十万円の積立をしているうちに、株価が大きく上下動する経験をしておけば、数十年後に資産が1,000万円を超えてきても焦らず投資を続けられるようになります。

今の時代に投資知識が重要になってきているのは明らかですが、知識だけではなく実際の経験を重ねることも重要です。iDeCoがその助けとなるはずです。

もし興味や関心があって、投資の範囲を広げてみたいと思うなら、iDeCoの上限枠に達したあとは一般NISAやつみたてNISAの口座を開いて資産運用をより積極的に行ってみてください。

私も今までは「45歳までにはiDeCoを始めましょう」とよくアドバイスをしてきました。しかしライフプラン3.0世代が意識を高めてきている今はちょっとメッセージも違ってきているようです。

あなたが老後のことにも関心を持って「何かしなくちゃ」と思ったのなら、20歳代でも30歳代でもiDeCoをスタートしてみましょう。きっと後悔することはないはずです。

 

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。