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今大切なのはコスパよりも「タイパ」?その恩恵と弊害とは

経済とお金のはなし 中新 大地

今大切なのはコスパよりも「タイパ」?その恩恵と弊害とは

【画像出典元】「Khosro/Shutterstock.com」

こんにちは、ライター/ランサーズ新しい働き方LABコミュニティマネージャーの中新大地です。

賃上げが進まないのに物価は高騰していく日本社会において、長年重視されてきた「コストパフォーマンス(費用対効果)」略して「コスパ」。一方、これまで以上に極まる忙しさや多様なライフスタイルのニーズが高まる最近のトレンドは、「タイムパフォーマンス(時間対効果)」略して「タイパ」。これもコスパと同じくらい、もしくはそれ以上に重視される価値観となりつつあります。

今回はそんなタイパがもたらす恩恵と弊害についてご紹介いたします。

お金よりも時間が大事?「タイムパフォーマンス」とは

時間対効果を重要視するタイムパフォーマンス、略して「タイパ」は、近年注目を集めている価値観です。国語辞典で有名な三省堂書店がまとめた、2022年の新語・流行語大賞では、このタイパが「○○構文(2位)」「きまず(3位)」「メタバース(4位)」「○○くない(5位)」などをおさえて大賞に選ばれています。

タイパはその言葉通り「時間に見合った効果を得たい」という意味になりますが、もっと具体的に言えば「よりたくさんの体験を効率よく享受したい」という願望であると私は認識しています。

ちなみに最初に断っておきたいのですが、タイパとだけ聞くと10~20代の非常に若い世代言葉・考えのように聞こえますし、メディアでもデジタルネイティブなZ世代を中心に語られることが多いようです。

しかし、こういった考えは何も若者だけでなくもっと幅広い世代の根底にもあると言ってもよく、もっと広い視野でこの行き過ぎた“完璧主義”について考えてみるべきです。

なぜ重視する?タイパの恩恵とは

用事に追われる女性
【画像出典元】「stock.adobe.com/Wayhome Studio」

タイムパフォーマンスという言葉・考えが広がるに至ったのは、やはり現代人ならではの忙しさもあるでしょう。仕事もプライベートもやることだらけの現代人は、ひとつひとつの行動をできるだけ効率化したい、時間をかけるのであればそれに見合った成果が欲しいと考えるものですし、時間が浮けばそれを他のことに使いたいと考えるものです。

それは、仕事で言えば「無駄な会議には出たくない」であり、浮いた時間の分だけ「自分の仕事を早く終わらせたい」かもしれません。プライベートで言えば「いつも同じ話しかしない仲間内とは距離を置いて、自分自身や家族との時間にまわしたい」などかもしれませんね。

こうしたタイパ向上の徹底は、「可処分時間を増やす」という点にだけ評価軸を置けば、非常に効果があると言えます。自分が縛られない時間を増やすことは、自分の心や体のゆとりを増やしたり、自分への投資になったりしますから。

効率重視の裏側に問題あり?タイパの弊害とは

冒頭にも述べた通り、タイパは行き過ぎた“完璧主義”と言える価値観でもあります。

それが自分のため、あるいは誰かのためであったとしても、その裏には何らかの無理や損失が生じているものです。特に危惧されているのはコンテンツ消費の加速。代表的なもので言うと、サブスクリプションサービスを活用しての映画やアニメなどの倍速再生・流し見です。

これは「映画は倍速再生や流し見をして、浮いた時間でもっと別の作品を観たり、遊びに出かけたりしたい」といった考えから起こるものですが、映画の制作者からすれば自分の生み出した作品がぞんざいに扱われていると思ってしまうのではないでしょうか。

また、この記事を書くにあたり私自身も倍速再生・流し見を試してみたのですが、見終わった後の率直な感想は「結局この映画は何を伝えたかったのだろう」と空っぽなものでした。さらに映画を観た後の独特の心地よい余韻も感じられませんでしたし、誰かにこの映画を薦めるにしても、そのための良い宣伝文句が思い当たらないのです。

情報をたくさん取り入れたり、より多くの経験をしたりするためのこのタイパ的行動は、終わってみれば自分のためにも誰かのためにもならず、むしろそれを生み出した人へのディスリスペクトのようにも感じました。もっとも、「職場や学校で流行りの話題についていけるよう、作品のあらすじだけを知っておく」という点においては役に立つかもしれませんが。

タイパを重視したいあなたへおすすめのサービス

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タイパを重視するのであれば、「システム面だけを効率化する」「シンプルな行動だけにする」ことが大事だと私は考えます。

その点でまずおすすめしたいのが、まずAmazonの「Audible(オーディブル)」です。これはプロが本の朗読をしてくれるサービスで、自分で目を通したりページをめくったりする必要がなくなるものです。月会費1500円で12万以上の作品が聴き放題。特に通勤・家事中のユーザーからの人気が高く、ビジネス・自己啓発関連の本が特に聴かれている傾向にあります。

本の朗読は映画などとは違い、視覚的な情報をほとんど必要とせず、耳だけでもできるシンプルな行動であるため、「○○しながら」のタイパとは非常に相性が良いのです。

他にはリクルートが提供する「スタディサプリ」や、日本ではベネッセが事業パートナーとなっている「Udemy」などのオンライン学習プラットフォームも、タイパを重視する方におすすめしたいサービスです。サブスクリプションあるいは決まった金額による買い切りで、いつでもどこでも学習の機会を得ることができます。塾などに通う必要がなくなり、ちょっとしたすきま時間も活用できます。

変わり種で言うと、ポーラ・オルビスが提供するパーソナライズサプリメントの「FUJIMI」も気になるところです。これは約20の生活習慣や美容に関する質問に答えるだけで、その人にあったサプリメント5粒(種類)を1包にまとめて選抜し、定期的に配送してくれるというもの。「いちいちサプリを買い集めたりするのは面倒」「自分に本当に必要なものだけを厳選して買いたい」という人にはピッタリです。

ほどほどにしたいタイパ

忙しい現代人にとって、時間の有効活用を考えることは必要不可欠かもしれません。時間が浮いた分、あるいは時間の使い方にこれまで以上に価値を感じられれば、なんだか得した気分にもなります。しかし、タイパはほどほどにしたい価値観であると言えます。もちろん時間は誰にとっても大切なものです。しかし、効率を重視するあまり、実は自分に無理が生じていたり、誰かを傷つけていたり、本質的な価値を享受できていなかったりといった懸念点があるのは事実です。

それでもタイパを重視するのであれば、「システム面だけを効率化する」、「シンプルな行動だけにする」ということをおすすめします。そうしないと自分が時間を上手く使っているつもりが、実は時間にいいように使われていたなんてことになるかもしれません。

誰にとっても平等にある時間だからこそ、皆様には時間と上手なお付き合いをしていただければと思います。