エコカー減税は3年間延長、基準厳格化で対象から外れる車種も
監修・ライター
2022年12月16日、自民党・公明党の両党により「令和5年度税制改正大綱」が発表されました。今回の改正には、NISAの恒久化や超富裕層への課税強化などと共に、2023年4月に期限を迎えるエコカー減税の改正などが盛り込まれています。
そこで、今回はエコカー減税に的を絞り、期限や対象車種、軽減の割合がどのように変わるのか、そして私たちにどのような影響があるのかを解説していきます。
エコカー減税って何?
自動車の買い替え等を検討している方以外はあまりご存じないかもしれませんが、自動車の購入時等に支払う自動車重量税は、2022年12月現在、自動車の環境性能に応じて一定の金額が減免されるように定められています。このような、環境性能に優れた自動車の重量税が優遇措置を受けられる制度のことを、エコカー減税といいます。
対象となる車種は国土交通省が定める環境基準を満たしたもので、対象となる車種を購入すれば、環境性能の高さに応じて重量税が25~100%減税してもらえるように定められています。
エコカー減税の導入から現在までの流れ
エコカー減税導入の歴史は、平成21年度(2009年度)の税制改正に遡ります。環境性能に優れた自動車の取得推進を目的とする自動車重量税と自動車取得税の減免が3年間限定で導入されました 。これが今日に続くエコカー減税の出発点となります。
その後、自動車取得税の減免は消費税率の引き上げにともない2019年9月末をもって廃止(「自動車環境性能割」へ移行)され 、もう一方の自動車重量税は減免措置が引き続き延長され続けることになります。
この自動車重量税の減免措置が、令和5年度の税制改正大綱によって大きく見直されることになりました。
令和5年度税制改正でエコカー減税はどうなる?
ではここで、令和5年度の税制改正によりエコカー減税がどのように変わるのかを解説します。今回のエコカー減税の改正は、以下の2段階で行われることとなりました。
① 2023年12月31日まで
② 2024年1月1日から2026年4月30日まで
①2023年12月31まで
これまでは2023年4月30日までに新規登録された自動車がエコカー減税の対象となっていましたが、この期間が延長され、2023年12月31日までは引き続き従来通りとなりました。
半導体不足などの影響でどのメーカーも新車の納期が長くなり、オーダーしてもエコカー減税の対象期間から外れてしまう方も多かっただけに、今回の改正で8カ月間延長されたことにより多くのユーザーが従来のエコカー減税の恩恵を受けられるようになりました。
②2024年1月1日から2026年4月30日まで
この期間に関しては、HV車やガソリン車などの基準が従来と比べて全体的に厳しくなり、エコカー減税の適用を受けるのがかなり難しくなりました。
下図をご覧ください。赤字部分が今回改正される内容です。
EV、PHV、FCV、天然ガス車などの次世代車については、引き続き現状通りの減税が受けられます。反対にクリーンディーゼル車に対するエコカー減税は廃止され、2024年1月1日以降は受けられなくなりました。
また、大きく変わったのが、ボリュームゾーンであるHV車やガソリン車です。自動車重量税の軽減を受けるための適用要件が、上図のようにそれぞれ厳しくなりました。
エコカー減税の改正によって今後はどうなる?
今回のエコカー減税の改正によって、環境に負荷を掛けないEVなどへの優遇措置は継続される一方、従来のガソリン車等に対する風当たりはより厳しいものになりました。これからは、一部のユーザー以外は、マイカーとしてガソリン車を積極的に選択する人の数が大幅に減っていくものと思われます。
このような「EVシフト」による脱炭素社会に向けた流れは、日本はもちろんのこと、世界中で行われています。たとえばEUでは、2035年にガソリン車などの内燃機関で動く自動車の販売を事実上禁止することに合意しており、HV車やPHVでさえ販売できなくなることが既に決定されています 。
この流れを受けて、欧州の各自動車メーカーでも既にEVシフトが進められており、たとえばメルセデス・ベンツを製造するドイツのダイムラー社は2030年までに新車販売をEVのみにすることを発表しています 。
こうした2035年に向けたEVシフトへの流れは不可逆なように思われていましたが、その状況が今少しずつ変わりつつあります。
ウクライナ侵攻でEVシフトに変化が訪れるかも
そもそもEVシフトへの流れは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させて地球温暖化を防ぐカーボンニュートラルから来ています。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で欧州全体の資源価格が高騰し、まったく予測していなかった方向へ状況が大きく変わってしまいました。
EV自動車の要であるバッテリーの製造に欠かせないニッケルとアルミニウムの価格は過去最高を更新し、半導体不足とサプライチェーンの分断によってEV車の価格が大幅に高騰した結果、EVの普及が大幅に遅れ始めているのです。
また、ロシアからの天然ガスに頼っていたEU各国では、エネルギー不足を補うために、脱炭素社会に逆行して石炭火力発電の稼働を再開し始めました 。こうした流れを踏まえ、EU各国では、カーボンニュートラルへの流れをいったん棚上げすることも検討され始めています。
こうした状況が今後も続くとは思えませんが、ウクライナ侵攻がかつてのアフガニスタン侵攻のように長引けば、エコカー減税の今後にも大きな影響を及ぼすことは間違いないでしょう。
2023年中に新規登録の準備を
令和5年度の税制改正で、エコカー減税の内容が大きく変わることになりました。これまでは延長を繰り返してきましたが、今回の改正によって一部車種は廃止となり、また多くの車種では適用基準が厳しくなります。
したがって、自動車の購入や乗り換えを検討されている方は、2023年中に新規登録が出来るよう、早目の準備をしておいた方が良いでしょう。