株の配当金、いつどのくらい貰える?配当金生活に必要な投資額は?
目次
2024年1月から新NISAがスタートします。非課税で投資できる金額が大幅に拡大されることから、個別株への投資に関心を持つ人が増えているようです。株式投資は、買った時より高く売って売却益を得るだけでなく、配当金や株主優待をもらえるのも魅力です。
ここでは、株式投資の魅力の一つである配当金に関する基本的な知識や受け取り方を確認しながら、さらに一歩踏み込んで配当金生活を送るための必要額についても見ていきます。初心者の方もこの記事を参考に配当金マスターになりましょう。
配当金とは
配当金とは、企業に出資する株主に、利益の一部を還元するお金のことです。支払われる配当金は「1株あたり〇〇円」というように決められ、投資家は自分の出資比率(持ち株数)に応じた金額を受け取れます。
株式に投資をすると、株式の売買で得られる売却益(キャピタルゲイン)だけではなく、株式を保有し続けることによって、継続的に受け取れる配当金(インカムゲイン)も魅力の一つ。投資家の中には、安定的に配当を出している企業や配当利回りが高い企業の株式をいくつか保有して、定期的な配当収入を楽しむ人もいます。
「配当利回り」とは1年間で得られる配当の割合
では「配当利回り」とはどういうものでしょうか。これは、株価に対して1年間でどれだけ配当金が得られるかを示した割合をいい、次のように計算します。
<配当利回りの計算式>
1株あたりの配当金÷株価×100(%)
例えば株価が500円で「1株あたり20円の配当」が見込める企業があったとします。
その場合の配当利回りは、
20円÷500円×100=4%
となります。
同じ企業の株でも株価が800円に値上がりしている時に投資をすると、
20円÷800円×100=2.5%
と、配当利回りは下がってしまいます。
つまり、同じ企業に投資するにしても、株価が低い時に購入した株主ほど、配当利回りは高くなりお得というわけです。
株式投資はリスクを伴いますので、預貯金と比較するべきではありませんが、そうはいっても預貯金の利回りより高く、非常に魅力的といえます。2023年11月現在で配当利回りが高い企業例は、「LIXIL」や「JT(日本たばこ産業)」が5%超、「日本製鉄」や「バイク王&カンパニー」が4%超などです。Yahoo!ファイナンスやみんかぶなど株式情報が提供されるサイトで簡単に確認できるため、気になる企業をチェックしてみましょう。
配当金は必ずもらえるとは限らない
ただ、配当金は預金利息と違って、定期的に必ずもらえるものではありません。企業が得た利益の分け前が配当金ですから、仮に、企業が利益を出せなかった場合、配当金は期待できません。ただし、赤字でも、これまでに蓄積した利益がある企業は、配当が支払われることもあります。反対に、利益が出ていても支払われないこともあるわけです。
例えば、ベンチャー企業では、一般にあまり高い配当は期待できません。理由は、今後ますます会社を成長させなければならないからです。利益を株主に還元するよりも、企業の研究費や設備投資に注力して事業の拡大を目指す傾向にあります。それによって、会社が大きく成長できれば、株価の大幅上昇に繋がることも期待できるでしょう。
なお、企業が配当金を前年より減らすことを「減配」といい、配当金を出さないことを「無配」といいます。逆に、企業の利益が増えれば「増配」も期待できます。配当金は常に決まった一定の金額ではないことは押さえておきましょう。
配当金の権利確定日はいつ?
それでは、配当金はどのタイミングで受け取るのでしょうか。配当の有無や金額は、通常決算期を迎えた時に決定します。株主総会で配当金額が確定してから通知が届くため、通常決算期から2~3カ月後です。中には、年に1回配当する企業だけでなく、中間決算時にも配当を出す企業もあります。
配当金を受け取るのは株主ですが、では、いつの時点で株主である人が対象なのでしょうか。株式市場では、日々売買され株主は変わっていきます。ですので、どこかで区切って、その時に株主である人(株主名簿に記載されている人)を確定させなければなりません。その区切りとなる日を「権利確定日」といいます。
年1回配当をする企業の多くは、決算日が権利確定日です。つまり、「決算日までに株主である人」が配当を受け取る権利があるということになります。株式の購入の流れは、注文を出して約定(売買が成立)した後、株式(の権利)が受け渡され株主名簿に記載されることでようやく株主になれます。つまり、権利確定日に株を購入しても配当金は受け取れません。権利確定日までに株主になるには、2営業日前までに株を購入する必要があり、この日を「権利付最終売買日」といいます。
決算期が3月31日の企業を例に見ていきましょう。
<3月31日(木)が権利確定日の企業の場合>
3月29日(火):権利付最終売買日←この日までに株を購入する
3月30日(水):権利落ち日←権利確定日に株主になれない
3月31日(木):権利確定日←株主である必要のある日
もし、3月30日の権利落ち日に約定をした場合は、次の配当を待つことになります。また、株式市場は土日祝や年末年始が休場ですので、2営業日を数える際、休場日は外して考えなければなりません。うっかり機会を逃さないようにしましょう。
では、配当金はいくら受け取れるのでしょうか。配当金は、1株あたりの配当金と自身が保有する株数で決まります。仮に、A社の株を100株保有していて、1株あたり50円の配当が出る場合は、5000円(50円×100株)が受け取れるのです。しかし、実際は税金が約20%差し引かれるため、手取りは約4000円ということになります。
なお、NISA口座で購入した株式の配当金は、非課税で受け取ることができます。ただし、非課税で受け取るためには気を付けなければならない点があります。次で見て行きましょう。
配当金の受け取り方
配当金の主な受け取り方は3つあります。
・配当金領収証方式
・登録配当金受領口座方式
・株式数比例配分方式
まず「配当金領収証方式」は、配当金領収証という配当金額が記載された書類を郵送で受け取る方法です。この書類をゆうちょ銀行など金融機関窓口に持っていくと、配当金を現金で受け取れます。
次に「登録配当金受領口座方式」です。これは、配当金を指定した口座に振り込んでもらうという受け取り方です。
最後に、「株式数比例配分方式」です。これは、株式を保有している証券口座で配当金を受け取る方法です。
配当金の受け取り方の選択は、証券口座を開設する時に指定するのが通常です。NISA口座で株式を購入すると配当金を非課税で受け取れると前項で記しましたが、実は、非課税で受け取るためには、受け取り方を「株式数比例配分方式」にしなければなりません。もし、他の方法を指定している場合は、課税されてしまいますので、変更手続きをしましょう。
これらの受け取り方は、証券会社ごと、株式の銘柄ごとに指定できません。つまり、配当の受け取りは、保有する株式全てに同じ方法で処理されます。
配当金生活を送るには投資資金はいくら必要?
配当金を目的として株式投資をする投資家の中には、配当金で生計を立てる人もいます。ただ、配当金生活を送るには、ある程度の株式を保有しなければなりません。いくら投資資金が必要になるでしょうか。
例えば、生活費が月20万円必要なら、年間240万円の配当金を受け取らなければなりません。しかし、配当には約20%の税金がかかります。手取りが240万円となるために必要な年間の配当金は、およそ300万円(240万円÷80/100)です。さらに、300万円を受け取るための必要な投資資金は、配当利回りによって異なります。以下で、配当利回り3%と5%を例にみていきましょう。
計算式は、「配当金300万円÷配当利回り=投資資金」です。
<配当利回り3%の場合>
(配当金)300万円÷(配当利回り)0.03=(投資資金)1億円
<配当利回り5%の場合>
(配当金)300万円÷(配当利回り)0.05=(投資資金)6000万円
このように、配当生活といっても、それなりの潤沢な資金がなければ難しそうです。そこで一案として、このような方法はいかがでしょうか。月の生活費をある程度確保しながら、配当金生活をするという方法です。仮に、生活費のうち15万円は自分で稼いで、残り5万円を配当金で賄うとします。つまり、年に60万円の配当金を目指すわけです。手取りが60万円となるために必要な年間の配当金受取額は、およそ75万円(60万円÷80/100)です。同様に配当利回り3%と5%でみてみましょう。
<配当利回り3%の場合>
(配当金)75万円÷(配当利回り)0.03=(投資資金)2500万円
<配当利回り5%の場合>
(配当金)75万円÷(配当利回り)0.05=(投資資金)1500万円
先ほどよりは随分と現実的な金額になりました。なお、新NISAでは、1200万円まで株式投資ができます。上記のような投資資金であれば、新NISAの非課税の枠が大きく貢献してくれます。
まとめ
今回は、配当金についてみてきました。簡単にまとめます。
・配当金は企業の利益を基に株主に支払われる
・利益が出ても支払われない、利益が出ていなくても支払われる場合がある
・配当金を得るためには、権利確定日に株主でなければならない
・株式数比例配分方式で受け取らなければ、NISAで非課税扱いにならない
・配当金生活にはそれなりの資金が必要だが工夫もできそう
株式投資をするということは、企業の経営を応援するということです。それによって、企業の成長はもとより経済の活性化にも繋がり、ひいては私たちの生活も豊かになっていきます。低金利で少子高齢化の今、資産運用が必要な時代ですが、そういったことも考えながら投資を行うとより有意義な投資ライフになるでしょう。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。
配当金に関するQ&A
Q:生命保険で受け取れる配当金も株式の配当金と同じですか?
A:違います。生命保険から支払われる配当金は、保険契約において支払われた保険料から余剰が生じた場合に契約者に還元されるものです。受け取らずに積立配当金として積み立てることもできます。
Q:配当金狙いで株式投資をしたいのですが、NISA以外で税金を抑えられる方法はありますか?
A:配当金は企業の利益から税金が差し引かれた後に支払われ、さらに配当金にも課税されます。2重課税になることから、確定申告で配当控除を受けられるようになっています。