【保存版】初めての確定申告、知っておきたい基礎知識を解説!
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円安が進み、そして物価が上昇しています。欧米を中心に金利が高止まりし、国内においても長期金利がじりじりと上昇しています。また、税金や社会保険料といった国民の負担率が今後も増すというニュースに触れる機会も増加。「何か対策をしなければ」と、ふるさと納税を始める人や副業に興味を持ち始める人が増えています。
そんな時に大切なのが確定申告の知識です。長年会社員という方は会社で年末調整を行い、一度も確定申告をしたことがないという人も多いと思います。今回は「確定申告が初めて」という人にも分かりやすいように確定申告の基礎から解説していきます。
確定申告とは
まず確定申告とはどういう手続きなのか確認しましょう。国税庁のHPには以下のように記載されています。
所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税等の額を計算して確定させる手続きです。
源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合には、この確定申告によってその過不足を精算します。
引用:国税庁HPより抜粋
所得税は私たち個人の「儲け」にかかる税金です。会社で働いて得たお金は「給与所得」、個人事業主やフリーランスとして働いた場合は「事業所得」、アパート経営をして地代家賃を得ている場合は「不動産所得」というように「所得」というのは「儲け」を意味します。その所得が1月1日から12月31日の1年間でどれくらいあるのか?ということを計算し、儲けの額に応じて税金を納めることになります。
会社員の場合、毎月の給与支給時に税金が徴収されます。これを「源泉徴収」といいます。ただしこれは概算で、一定の決まった額が差し引かれているため、年末調整が文字通り調整をしてくれます。過不足があれば、還付または追徴となります。通常は還付されるケースが多いです。これで1年間の正しい税額を納めたことになりますので、確定申告は必要ありません。
ただし、会社の年末調整では対応できない「医療費控除」がある場合や、年末に結婚したため会社の年末調整で「配偶者控除」が反映されていない場合、会社からもらう給料以外にも所得がある場合などは確定申告が必要となります。
個人事業主の場合も「予定納税」という制度があります。前年の所得に応じて、7月と11月に1年間の見込み所得税額の3分の1ずつを納税します。これは1年に1度、一括で納税するのは大変なので、前もって計画的に納めておくという意味合いもあります。ただし、前年と全く同じ利益状況にはならないでしょう。予定納税2回で納めるべき税金の3分の2以上になる場合や、逆に当年の利益が大幅に増加し足りないという状況になることもあります。よって確定申告で正しい税額に「確定」させます。まさに自分の税金額を「確定」させるために「申告」するので、「確定申告」といわれます。
確定申告が必要な人とは
では、どのような人が確定申告をしなければならないのでしょうか?
会社員
前述したように、会社員は年末調整をするため原則確定申告不要ですが、以下の条件のいずれかに当てはまる人は確定申告の対象となります。
①年収が2000万円超の場合
②会社以外からの所得が20万円を超える場合
③2カ所以上から給与をもらっている場合 など
①会社員で年収が2000万円を超える場合、年末調整の対象となりません。よって、自身で確定申告を行う必要があります。
②給与や退職金など会社から支給されるもの以外、たとえば副業をしているケースや保険の解約金がある場合など、その所得が20万円を超える場合は確定申告をする必要があります。言い換えれば、仮に副業をしていても20万円以下であれば確定申告は不要です。
③2カ所以上で給与をもらっている場合、原則、一方は「主たる」もう一方は「従たる」という位置づけでそれぞれから源泉徴収されるため、正しい税額にするためにも確定申告が必要となります。
個人事業主・フリーランス
基本的に自身で収入を得ているため、収入と必要経費の状況を帳簿等にまとめ確定申告を行う必要があります。なお、取引先から源泉徴収されるケースがありますので、その際はその税額を踏まえて確定申告を行いましょう。
確定申告(還付申告)をした方が得をするケースとは?
確定申告が不要な人の中にも、あえて確定申告を「した方が良い」というケースもあります。一つひとつ紹介します。
年の途中で退職し、再就職していない
年の途中で退職し、年内に再就職すると、再就職先で前職分と合わせて年末調整を行ってくれますが、再就職しなければ年末調整をしてもらう機会がありません。それまで勤務していた会社での給与次第ですが、ある程度源泉徴収されている場合、「納め過ぎ」という状況になっている場合があります。この場合、確定申告を行うことで還付を受けることができます。
なお、これから紹介するケースも同様ですが、確定申告の際に納税ではなく還付される場合は確定申告時期である2月16日~3月15日の間に行う必要はありません。年明け以降すぐに行うことができます。早く手続きを行うことで還付も早く行われます。
※還付の場合、確定申告ではなく還付申告ということもありますが、以下「確定申告」で統一しています。
住宅ローンを組んだ最初の年
その年に住宅を購入し、一定の住宅ローンを組んだ場合、「住宅ローン控除」という税額控除を受けることができます。2年目以降は勤め先の会社で年末調整が可能ですが、1年目は確定申告を行わなければ税額控除を受けることができません。
医療費控除や寄附金控除を受ける
医療費控除やふるさと納税などの寄附金控除も年末調整の対象外となっていますので、確定申告が必要となります。医療費控除は病院等で発行される領収書、寄附金控除は寄附金控除の対象となる証明書が発行されますので、それらを大切に保管しておいてください。なお、ふるさと納税の場合、納税先が5自治体以内であればワンストップ特例の対象となり、確定申告は不要となります。「確定申告をせずにふるさと納税をしたい」という場合はふるさと納税を行う際にワンストップ特例を選択し、行いましょう。
地震や豪雨など災害に遭った
近年、豪雨災害など異常気象により毎年のように各地で大きな被害が出ています。自然災害による被害や火事、盗難、横領などの被害に遭った場合は被害額に応じて「雑損控除」または「災害減免法による所得税の軽減免除」を受けることができます。この場合も年末調整の対象外となっていますので、確定申告を行ってください。
この場合も領収書が必要となります。たとえば、自宅が被害に遭い改修を行った際などの費用が該当しますので、しっかり領収書を保管しておいてください。ただし保険でカバーできた分は被害額とはみなされません。
株式等の配当所得がある
NISAで投資を行う場合は非課税ですが、NISA以外の課税口座で株式や投資信託を保有していて、配当や分配金を受け取っている場合も確定申告を行うと還付される場合があります。
特定口座で「源泉徴収あり」を選択した場合、配当金や分配金(投資信託の元本払戻金は除く)は一律所得税と住民税を合わせて20.315%源泉徴収されています。所得税の税率は5~45%の超過累進税率となっており、所得の大きさによって税率が異なります。会社員など多くの人は5~10%で収まると言われています。
一方、配当所得で源泉徴収される20.315%のうち、所得税は15%です。つまり「所得に限らず15%所得税が差し引かれている」状態です。この場合、確定申告を行うことで各人の所得額、税率によって計算をすることができるため、還付される場合があります。
なお確定申告すると「配当控除」という税額控除を受けることもできます。ただ、配当所得の場合は少し複雑で、「20.315%源泉徴収されているので申告不要」という位置づけにしておけば良かったという状況も考えられます。配当所得が多い方は事前に税務署や税理士等に確認し、どのような対応をすべきか検討してください。
※特定口座でも「源泉徴収なし」を選択した場合や、一般口座の場合はそもそも源泉徴収されていないため確定申告が必要となります。
確定申告に必要なものは
まずは「確定申告書」が必要となります。以前は確定申告書Aと確定申告書Bがあり、それぞれ使い分けていましたが、「確定申告書」に一本化されました。
併せて、個人事業主の場合は、収支内容が分かる「青色申告決算書」または「収支内訳書(白色申告)」が必要となります。また本人確認書類としてマイナンバーカードが必要です。マイナンバーカードがない場合は、通知カードや住民票などの写しと、運転免許証などの身元確認書類(顔写真付きでない場合は2種類)を、それぞれ1枚ずつ添付して提出します。
現在はスマホをはじめ電子申告が推奨されていますので、これら書類を提出するのではなく、入力すればOKです。ただし、入力をする上で、自身の収入等の状況を把握しておく必要がありますので、会社からもらう源泉徴収票や各種領収書も用意した上で確定申告を行ってください。
また、還付に該当する場合は還付金を振り込んでもらいたい銀行口座の情報が必要となります。
確定申告の期間・申請方法
確定申告の申請期間は原則2月16日~3月15日です。税務署に申告書を提出する方法のほか、現在はスマホでも簡単に手続きができます。
まとめ~確定申告は1年間の所得を確定し、振り返る機会に~
・会社員でも確定申告が必要なケース、した方が良いケースがある
・還付申告は期間に関係なく、年明け以降すぐに行うことができる
・個人事業主は原則、確定申告が必要
「税金や社会保険は会社がやってくれるから」などと、長年会社員として勤務している人は税金の知識をあまり有していない印象があります。当然、自分で関わる機会がなければ、学ぶ機会も少ないですよね。ただ、リモートワークが普及し、副業が認められる会社が増えていっているように、これからも働き方は大きく変わりそうです。働き方やライフスタイル自体が変われば、確定申告が必要になることも考えられます。確定申告が必要かどうかに関わらず、どのような仕組みなのか基本的な知識は身につけておきたいですね。
また、確定申告を行うことは「1年間を振り返る」きっかけにもなります。どれだけ所得があったのか?どれだけ医療費がかかったのか?それから、領収書を整理していると、「7月に〇さんとあのお店で会食したな」といった感じで、色んな人の顔を浮かべたり、年間の出来事を思い出したりする機会にもなります。さらには、もう一歩踏み込めば、家計の改善策を探る機会にもなります。ぜひ初めて確定申告を行う人は「面倒くさそう」と言わず、「色んな気づきがありそう」と前向きに行ってください。
国税庁のホームページに確定申告書等作成コーナーがありますので、一度アクセスしてみてください。
確定申告に関するQ&A
Q:フリーランスとして居住地とは違う市町村にオフィスを借りています。管轄の税務署はどちらになりますか?
A:法人ではなく、フリーランスや個人事業主として他の市町村にオフィスを借りている場合、居住地を管轄する税務署に確定申告書を提出する必要があります。
Q:シングルマザーでひとり親控除に該当します。確定申告で控除を受けることができますか?
A:確定申告でひとり親控除を受けることはできますが、会社にお勤めであれば年末調整でも控除可能です。年末調整の提出用紙(電子的な年末調整も同様)にひとり親控除に関する欄がありますので、確認してみてください。