お金

2024年、住宅ローン減税はどうなる!?これから建てる場合の注意点も

経済とお金のはなし 箕輪 健伸

2024年、住宅ローン減税はどうなる!?これから建てる場合の注意点も

【画像出典元】「Lerbank-bbk22/Shutterstock.com」

2024年から大きく変わる制度の一つが、住宅ローン減税です。控除の対象となるローン残高の上限額は住宅の種類ごとに決められていますが、2024年を機に全種類が引き下げられる予定でした。しかし、所管する国土交通省が突如、現行の仕組みを維持する要望を出す方針を打ち出しています。その背景には何があるのでしょうか。そして、住宅ローン減税は今後どのように変わるのでしょうか。2024年以降に住宅を建てる際、新たに注意したいポイントとともにお伝えします。

住宅ローン減税とは

省エネハウス
【画像出典元】「stock.adobe.com/mimi@TOKYO」

住宅ローン減税とは、金融機関から住宅ローンを借り入れて住宅を新築したり改築したりした場合に、年末時点のローン残高0.7%を所得税や住民税から13年間差し引く制度です。

控除の対象となるローン残高の上限額は住宅の環境性能などで異なります。2023年までの上限額は、長期優良住宅・低炭素住宅が5000万円、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)水準省エネ住宅が4500万円、省エネ基準適合住宅が4000万円、省エネ基準を満たさない住宅が3000万円です。

この上限額は、2024年から引き下げられることが決められていました。当初決まっていた2024年以降の上限額は長期優良住宅・低炭素住宅が4500万円、ZEH水準省エネ住宅が3500万円、省エネ基準適合住宅は3000万円で、省エネ基準を満たさない住宅は住宅ローン減税の対象外となる予定でした。省エネ性能や耐震性能などに優れる長期優良住宅の場合、2023年までの入居だと5000万円が残高上限ですが、2024年に入居すると4500万円に縮小されるはずだったのです(すでに減税対象となっている住宅ローンには影響しない)。

しかし、国土交通省は11月16日、一定の省エネ性能を持つ、いわゆる「省エネ住宅」の住宅ローン減税を2024年に引き下げず、現行のまま維持するよう求める方針を決めました。

2024年から減税額は縮小か?

控除額を算出する際の基準となるローン残高の上限が下がると、必然的に減税額は小さくなります。年収600万円、借入額5000万円でシミュレーションしてみると、2023年入居の新築長期優良住宅だと控除額は13年間で333万2300円。これが、2024年の入居だと控除額は321万1000円となります。

この方針を撤回し、2024年も2023年までと同様の上限額の維持を与党の税制調査会に要望することを今回、国土交通省は決めたのです。昨今の住宅価格の高騰や、住宅ローン金利の上昇が主な理由です。ただし、国土交通省が要望したとしても、現行の制度が維持されるとは限らず、結論は年末に行われる税制調査会で出される予定です。来年以降に住宅の新築を考えている方は、年末の税制調査会の議論に注目しましょう。

省エネ基準を満たさない住宅は要注意

注意
【画像出典元】「stock.adobe.com/Mucahiddin」

また、筆者が個人的により注意しなければならないと感じているのは、省エネ住宅に関しては現行制度が維持されるものの、省エネ基準を満たさない住宅に関しては、当初の予定通り、対象外となる可能性がある点です。2023年までは省エネ基準を満たさない住宅でも住宅ローン減税の対象となっていましたが、2024年は対象外となる予定です。現状だと省エネ住宅ではなくても3000万円の控除が受けられますが、2024年以降は控除が受けられなくなります。

日本が2050年までに温室効果ガスをゼロにする「カーボンニュートラル」を目指していることは多くの方がご存じでしょう。この目標を達成するために、政府はさまざまな取り組みを行っています。

住宅に関しては、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律 (建築物省エネ法)」が制定され、2025年4月から原則として新築住宅を含むすべての建物に省エネ基準への適合が義務付けられる予定です。省エネ基準を満たさない住宅にも住宅ローン減税を適用するのは、この流れに逆行するようなものです。そのため、省エネ住宅に関しては現行の住宅ローン減税が維持されたとしても、省エネ基準を満たさない住宅への住宅ローン減税は予定通りなくなる可能性が高いと個人的には考えます。

大手建築メーカーはどこも省エネ住宅に対応しているため心配はありませんが、地方の中小工務店の中には、省エネ住宅に対応していない事業者が少なからずあることは事実です。また、コストアップを嫌って、省エネ基準を満たさない住宅をあえて提案する業者も報告されています。

「住宅ローン減税を受けようと思ったら、基準を満たしていなくて対象外だった」となってしまうと、住宅価格によっては数百万円も損をしてしまうでしょう。そうしたことにならないように、来年以降に住宅の建築を考えている方は、年末の政府の動きに注目するとともに、事業者に省エネ基準に適合した住宅に対応しているかどうかを今から確認しておくことをおすすめします。