中古マンション、購入時に見るべきポイントは?/30歳女性相談
目次
FPオフィス「フォルテシモ」へ依頼されたお客さまの家計簿を、mymoで診断する【うちの家計簿】。今回は30歳会社員Iさん。共働きご夫婦の家計簿です。
30歳女性Iさんの相談内容
結婚して2年経ち、マイホームの購入を検討しています。独身のときはあまり貯金できていませんでしたが、結婚後は毎月10万円程度貯金を続けています。家賃を払い続けるのももったいない気がして、現在中古マンションの購入を検討しています。いろいろ物件を見にいっているのですが、ローンを組む時や購入時に気を付けることはありますか。住宅ローンの金利も上昇しているようなので気になっています。
住宅購入を検討するIさんの家計簿は・・・?
夫婦の手取り合計は40万8000円、今月貯金できた金額は11万円です。収入の約27%を貯金にあてられています。現在の貯金額は250万円です。
長期金利と住宅ローン金利
金融機関が1年以上のお金を貸し出す際に適用する金利が「長期金利」です。新聞やテレビで取り上げられている長期金利は10年物国債の利回りを指します。長期金利の動きは、住宅ローンの固定金利に影響を与えます。特に住宅ローンの金利は返済期間が長期に及ぶので、金利の変化によってローンの総返済額が大きく変わってきます。これからローンを組む場合は、基本的な金利の仕組みを理解しておきましょう。
金利が1%上がると返済額はどう変わる?
たとえば、3500万円を35年で返済する住宅ローンの場合、35年間の金利がずっと1.5%であれば月額返済額は10万7164円、総支払返済額は4500万8901円となり、返済利息の総額は約1000万円です。同条件で金利が1%上がって2.5%になると、月額返済額は12万5123円、総支払返済額は5255万1535円となります。返済利息総額は約1755万円です。
借りた元金は同じ3500万円なのに金利が1%違うだけで750万円以上返済額が増えることになります。現在のIさんご夫婦の年収が650万円ですので、年収以上の金額が返済額として増加するということです。
ちなみに今から35年前の1988年(昭和63年1月)の旧住宅金融公庫の基準金利は4.5%でした。2023年(令和5年12月)のフラット35の借入期間35年以下の金利で、フラット35を取り扱う金融機関で最も多い金利は年2.050%でした。35年のローンを組む場合、過去の金利が今まで変動してきているように、返済中の金利は変化すると考えておく必要があります。
固定金利と変動金利
住宅ローンを組む際、固定金利と変動金利について一度は検討されることかと思いますが、それぞれの金利の仕組みなど基本的な説明がないままローンを選択してしまう方もいるかもしれません。
住宅ローンを選択する際にまず知っておいてほしいことは、金利には固定金利と変動金利があり、選択ができるということ。
固定金利:変動金利よりも金利は高めだが、ずっと変わらず同じ
変動金利:固定金利よりも金利は低めだが、日銀やさまざまな経済状況によって変わっていく
この特徴はしっかり把握しておき、返済期間の間に金利が変われば、どのように総返済額に影響がでるか、しっかり確認をしてローンを選択するようにしましょう。
また返済期間も35年と決まっているわけではありません。自分たちのライフプランにあった返済期間を選択し、納得してローンを組むようにしましょう。
みなさん、どうされていますか
住宅ローンを組む時などのご相談として多いのが「みなさん、どうされていますか?」というご質問です。私たち日本人はみんなと同じ選択をしていると安心するようなところがあるのかもしれません。しかし、みなさんと自分は違うということも意識して頂きたいと思います。
Iさんご夫婦は共働きで現在お子さんはいらっしゃいませんが、片働きのご家庭や、お子さんが複数いらっしゃるご家族、シングルでご自宅を購入される方など家族構成だけでもさまざまです。これから得られるご家庭の総収入、総支出額も違いますし、ローン開始年齢もさまざまですので、他人のローン内容を参考にするよりも、ざっくりでいいので金利と返済期間、総返済額の関係などを複数シミュレーションして検討するようにしましょう。
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返済のポイントは、できるだけ働いて収入を得ている間に完済できるように考えること。
収入が年金だけになった場合は、働いていたときより一般的に収入が減る方が多いので、Iさんが65歳まで働くとしたらこれから33~35年以内で返済が終了するように検討されることをおすすめします。
住宅ローンの借り換えという選択肢も
住宅ローンの返済途中で「借り換え」をすることで、固定金利と変動金利を切り替えることができます。借り換えには手数料などがかかりますが、住宅ローンは返済期間が長いので、借り換えの方法についても金融機関に確認をしておきましょう。
借り換えという選択肢があることも意識しておき、将来柔軟に対応できるようにしておくことが大切です。
中古マンション購入時に確認しておくこと
一口に中古マンションといっても築年数もさまざまです。中古のマンションはモデルルームではなく実際に建てられているマンションを確認できます。
マンションは戸建てと違い、個人が管理する「専有部分」とマンションの居住者で組織する「管理組合」が管理する「共用部分」があります。マンションの一室を自分で購入しても、エレベーターやエントランス、外壁などの共用部分が適切に管理されていなければ、快適な生活はできません。
中古のマンション購入時にはぜひ「管理組合」の総会の議事録を確認することをおすすめします。適切にマンションが管理されているか、「管理費」「修繕積立金」の滞納状況などが議事録で確認できます。
購入前に、議事録でマンション全体の収支の状況などを確認することは中古マンション購入時のポイントといえます。不動産購入を仲介している会社へ依頼して議事録を確認し、検討されることをおすすめします。
金利上昇のメリット・デメリット
日銀による「ゼロ金利政策」導入以来、日本は長い間低金利が続いてきました。「ゼロ金利政策」とは「日銀が銀行にお金を貸すときの金利がゼロに近くなる」という意味です。
低金利下では、銀行に預金しても利子がつかないことが当たり前でしたが、最近は定期預金の引き上げを発表する金融機関もでてきました。これらは金利上昇によるメリットです。
対して金利上昇のデメリットは住宅ローンなどお金を借りるときの返済額が増え、家計の支出が増加することなどがあげられます。
ライフプラン作成のすすめ
Iさんは現在マンションを購入のため、具体的に物件を検討中とのこと。購入したいと思える物件に出会った際は、ローン返済も含めライフプランを立てることをおすすめします。
中古物件の場合は、マンションの修繕積立金の値上げの履歴や今後のマンションの修繕計画なども確認しておきましょう。マンションが計画的に定期メンテナンスをしていくように、居住者も5年に一回など定期的にライフプランを作成し、資産形成、負債返済に問題がないか確認しておくと安心でき、対策も立てやすくなります。
住まいを購入しない場合は家賃を一生涯支払うことになるため、その場合は働いている間に将来支払う家賃分を貯めて準備しておく必要があります。購入・賃貸いずれの場合においても住まいにかかる費用は大きな金額になりますので今後のライフプランについて考えるようにしておくことをおすすめします。
家計管理についてのアドバイス
今後のIさんには、住宅ローンの頭金なども含め大きな支出の予定があります。2~3年以内に大きな支出の予定がある場合は、株式、投資信託、外貨など金額が変動するものの新たな購入は控えて現預金で資産を持ち、購入したい物件があったときに現在の貯金から支出できるよう準備をされておくことをおすすめします。
アドバイスを受けたIさん談
購入を検討しているマンションが複数あるのですが、総会議事録の確認をしたことはなかったので今から確認したいと思います。どうしても外観、内装など表面的なところだけしか目がいっていませんでした。管理費や修繕積立金についても意識したことがありませんでした。今まで賃貸暮らしで、管理費や修繕積立金の支払いもしたことがないので、何のためのお金なのか確認しようと思います。住宅ローンも変動と固定でローンを途中で見直せることを具体的にイメージできていませんでした。夫婦で相談して検討していきたいと思います。
家計簿診断を終えて
マンションの専有部分を所有している個人の家計管理は順調でも、マンション全体の管理が順調でなければ、将来マンションの管理組合でお金を借り入れないといけないような事態に陥ってしまうかもしれません。
中古物件購入時には管理組合の「議事録」でマンション全体の家計の状況を確認してから購入することをおすすめします。適切な管理がされているマンションであれば10年後20年後も安心して生活することができます。ご検討ください。