「昇給」とは?ベースアップとどう違う?産業別の平均額を紹介
多くの企業では、年1回、4月頃に昇給があります。昇給は給料に直結するため、従業員にとって重要なシステムではありますが、昇給の仕組みを上手く理解できていない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、昇給の仕組みや平均額について、わかりやすくまとめました。将来のためにも昇給がどのようなものであるかを理解しておきましょう。
昇給とは?
昇給とは、勤続年数や年齢によって、給料が増えることを意味します。通常は「基本給」が上昇される形で行われます。多くの会社では、昇給は年1回(毎年4月)としているものの、中には年2回(毎年4月と10月)実施する会社もあります。昇給の対象は主に正社員ですが、中には非正規雇用の社員の給料も昇給する会社もあります。
なお、昇給制度自体がない会社も存在し、また昇給制度があったとしても、業績などの事情により、行わなかったり、延期されることもあります。
昇給のタイプは6種類
会社の給与規定によって様々ですが、昇給の方法は主に以下の6タイプがあります。
定期昇給:時期を決めて(通常は4月頃)、定期的に行われる昇給。
自動昇給:勤続年数や年齢に応じて自動的に昇給。
臨時昇給:会社の業績が良かった時などに行われる臨時の昇給。
考課昇給:人事考課(評価)に基づく昇給。勤務態度などにより評価される。
普通昇給:業務成績や職務遂行能力が高まり、会社の定める水準を満たした際に行われる昇給。
特別昇給:特別な功労、実績を残し、会社に大きく貢献した場合に行われる昇給。
一般的に昇給といえば、「定期昇給」や「自動昇給」を指すことが多いです。この2つは普通に働いていれば行われる昇給です。それ以外の昇給は、会社の業績が良かったり、個人として成果を残したりした際など、何かアクションが起きた際に行われるものです。
昇給率とは?どうやって計算する?
「昇給率」というのは、昇給した後の給料が、昇給する前と比べて何パーセント増えたかを示す割合です。どの程度給料が増えたかを測る際に活用されます。
昇給率は、以下の計算式で算出できます。
昇給率(%)=昇給した後の給与額÷昇給する前の給与額
たとえば昇給する前の給料が23万円、昇給した後の給料が23万5000円の場合、昇給率は1.021(2.1%)となります。
厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査(令和4年)」によれば、1人あたりの賃金の平均改定率(昇給率)は「1.9%」という結果となっています。
ベースアップとの違い
昇給と似たものに「ベースアップ」があります。
ベースアップとは、従業員全体の給料水準を底上げすることを意味します。昇給は従業員個人に対してそれぞれ行いますが、ベースアップは全従業員一律で引き上げることになるため、その判断は慎重に進める会社が多いです。
ベースアップは、社内の労働組合が経営陣に対する要求を機に交渉されることが多く、この運動は「春闘」と呼ばれ、毎年2~3月頃にかけて行われます。
今年の春闘の動向
2024年度の春闘では、日本労働組合総連合会から以下の要求案が出されています。
・ベースアップ相当分として「3%以上」の賃上げ
・定期昇給分を含めて「5%以上」の賃上げ
賃上げ要求の背景には、度重なる物価上昇が関係しており、連合側は昨年に引き続き持続的な賃上げを目標としています。
企業規模別の平均昇給額は?
従業員数が1000人以上の大企業と1000人未満の中小企業では、昇給額の水準が異なります。以下の表は、企業規模別の平均昇給額をまとめたものです。
ご覧のように、従業員数が5000人以上の大企業の場合、昇給額は6478円、昇給率2.0%と高い水準です。企業規模が小さくなると昇給額や昇給率は減る傾向があるものの、300~999人の中小企業の昇給率は大企業に迫る水準となっています。
産業別の平均昇給額は?
産業や業種によっても、昇給額の水準が変わってきます。以下の表は、産業別の平均昇給額をまとめたものです。
ご覧のように、昇給額が最も高いのは「建設業」の8101円で、昇給率は2.3%です。反対に昇給額が最も低いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」であり、昇給額は3670円、昇給率は1.1%にとどまります。
給与を増やすには?
給料を今以上に増やすにはどういった手段があるのでしょう。ここでは給料を増やす方法やテクニックを紹介します。
年功序列型の給与体系の会社であれば長く勤める
年功序列型の会社に勤めている方であれば、今回解説した「定期昇給」や「自動昇給」により、1年毎に給料が着実に増えいく場合が多いです。反対に成果主義型の会社では、結果を出さないと給料がいつになっても増えないことがあります。
部署の移動や転職をする
同じ会社でも、働く部署や職種によって、給料水準が変わることがありますので、給料が高い部署への社内異動を目指すというのも一つの方法です。また、会社毎に給料の上限というのはある程度決まっていることがあるため、頭打ちが見え、どうしても今の会社ではそれ以上の給料が望めない場合には、別の会社や業界に転職するのも一つの解決策です。
副業やダブルワークをする
働き方改革などの影響により、副業の文化が浸透しつつあります。帰宅後や休日などに副業を行うことで、プラスαの収入が得られるようになります。ただし、副業を禁止している会社もまだまだありますので、副業を行う場合には社内の規約をよく確認することが大切です。
以上、昇給の仕組みについて解説しました。
多くの会社では昇給があり、特に日系企業の場合若手社員のうちは、能力の差があまり影響せず、働いていれば毎年昇給が行われるケースが多いです。ただし、中には昇給を行わない会社もあり、またある程度の年数に達すると成果を出さないと昇給が止まってしまうケースもあります。会社によってもルールはさまざまですので、自分の勤める会社の昇給ルールをよく確認し、将来の収入をシミュレーションしておきましょう。