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産休・育休手当で生活費足りる?知っておきたい収入減対策

そなえる 白浜 仁子

産休・育休手当で生活費足りる?知っておきたい収入減対策

【画像出典元】「Maridav/Shutterstock.com」

赤ちゃんが生まれる時に取得する産休や育休。育児が楽しみな反面、収入が減って生活費や貯金が足りなくなるのではという心配も。産休育休時に受け取れる手当や金額はいくらなのでしょうか。また、出産後に増える家計の費目や、仕事と家庭を両立するためにやっておきたい家計管理など、産休育休中のお金について見ていきましょう。

産休・育休中の生活費「足りない」家庭が6割

株式会社ビズヒッツによる育休経験のある女性へのアンケートでは、「育休中に旦那様の給料だけで足りたか」という質問に対して、「全く足りない」21.9%、「やや足りない」40.6%の合計62.5%が「家計への影響がある」と回答しています。

また、それによって、「貯金ができない」「生活がカツカツになる」「貯金が減った」「旅行・レジャーに行けない」などの影響を受けたようです。筆者が担うFP相談と照らし合わせても納得します。共働き家庭の中には、夫の給与だけでやりくりして、妻の給与は全て貯めているという世帯もありますが、多くは、家賃や光熱費、通信費などの固定費は夫、食費や日用品などスーパーでの買い物は妻などと、家計を分担しているようです。

そのため、出産によって妻の給与がなくなるとお金が足りなくなるのでしょう。もちろん、育休中には健康保険や雇用保険から諸手当が受けられます。しかし、給与と同じタイミングで受け取れるわけではないため、やはり、やりくりが必要になります。それでは、産休、育休時に受け取れる給付金は、いつ、どのくらいもらえるのでしょうか。

出産手当金・育児休業給付金、いつどのくらいもらえる?

産休、育児休業中の給付金
【画像出典元】「Velishchuk Yevhen/Shutterstock.com」

会社勤めをする人が受け取れる給付金は、健康保険から「出産手当金」、雇用保険から「育児休業給付金」です。その他に、出産時に受け取れる「出産育児一時金」が一児につき50万円ありますが、これは、出産費用を賄うのが目的のためここでは割愛します。

【出産手当金の支給額】

出産手当金の金額は、次のように計算します。
(直近12カ月の標準報酬月額の平均)÷30日×2/3

標準報酬月額は、直近12カ月の平均です。
仮に、1年間の標準報酬月額が20万円なら、
20万円÷30日×2/3=約4450円
となり、1日あたり4450円支給されるというわけです。

出産手当金が支給される対象期間は、出産日(出産日が予定より後になった場合は出産予定日)以前42日(6週)と、出産日の翌日から56日(8週)です。もし出産予定日より遅れて生まれたという場合は、その間も出産手当金の対象となります。なお、給与の支払いがあった時は、出産手当金より給与が少ない場合のみ差額が支払われます。

その後は、育児休業給付金の対象期間になり、原則1歳まで(保育所に入れない場合は1歳6カ月または2歳まで)支払われることになります。

【育児休業給付金の支給額】

育児休業給付金は、次のように計算します。
賃金日額×支給日数×67%(181日目からは50%となる)

賃金日額とは、直前6カ月の1日あたりの平均賃金で、「育休開始前の6カ月の賃金総額÷180日」で求めます。なお、ボーナスを含めることはできません。

仮に、育休開始前の額面給与が20万円(賃金日額6667円)なら、最初の180日(半年分)は
6667円×180日×67%=約80万4040円
となるため、半年で受け取れるのは約80万円ということになります。181日目以降の乗率は50%です。

なお、給付額には上限があります。上限は毎年8月1日に改訂され、2024年7月末までの上限額は、67%での支給期間が月額31万143円、50%での支給期間が月額23万1450円です。収入が多い人は、当てにしていたのに想定より少なかった、と慌てないように確認しておきましょう。また、給与が支給される日がある場合は、手当が減額または、支給されないことがあるため確認しておきましょう。

少し先のことになりますが、政府は、2025年に向けて、夫婦それぞれが育休を取ることを促すための施策を検討しています。ママが産後育休の56日(8週)を取得している間に、パパが育休を取った場合(産後パパ育休という)は、パパの育児休業給付金の給付率を、28日間を限度に67%から80%程度に引き上げ、パパの手取りが今まででと変わらない10割相当にすることが検討されています。

また、産後パパ育休を取得した場合は、ママにも同様の対応がされる予定です。ママが育児休業給付金を受け取るようになった時に28日間を限度として、給付率を引き上げ、手取りが10割相当となることを目指します。今後の動向に注目したいところです。

産休育休中の給付金の受取額をシミュレーション

それでは、より具体的に、子どもが1歳になるまで産休、育休を取った場合の受取額を見ていきましょう。

【額面給与15万円の場合】

(出産手当金)
15万円÷30日×2/3=3333円・・1日あたり
3333円×(産前42日+産後56日)=32万6634円・・➀出産手当金

(育児休業給付金)
・当初180日(出産後2~8カ月まで)
(賃金日額:月15万円÷30日)×180日×67%=60万3000円
・181日目以降(出産後9カ月~12カ月までの120日分)
(賃金日額:月15万円÷30日)×120日×50%=30万円
合計:90万3000円・・②育児休業給付金

よって、産休から子どもが1歳になるまでに受け取れる金額は、
➀と②の合計で、122万9634円となります。

【額面給与20万円の場合】

(出産手当金)
20万円÷30日×2/3=4444円・・1日あたり
4444円×(産前42日+産後56日)=43万5512円・・➀出産手当金

(育児休業給付金)
・当初180日(出産後2~8カ月まで)
(賃金日額:月20万円÷30日)×180日×67%=80万4000円
・181日目以降(出産後9カ月12カ月までの120日分)
(賃金日額:月20万円÷30日)×120日×50%=40万円
合計:120万4000円・・②育児休業給付金

よって、産休から子どもが1歳になるまでに受け取れる金額は、
➀と②の合計で、163万9512円となります。

【額面給与30万円の場合】

(出産手当金)
30万円÷30日×2/3=6667円・・1日あたり
6667円×(産前42日+産後56日)=65万3366円・・➀出産手当金

(育児休業給付金)
・当初180日(出産後2カ月~8カ月まで)
(賃金日額:月30万円÷30日)×180日×67%=120万6000円
・181日目以降(出産後9カ月12カ月までの120日分)
(賃金日額:月30万円÷30日)×120日×50%=60万円
合計:180万6000円・・②育児休業給付金

よって、産休から子どもが1歳になるまでに受け取れる金額は、
➀と②の合計で、245万9366円となります。

出産手当金・育児休業給付金が振り込まれるタイミング

出産手当金は、産後56日経過後に健康保険が審査して振り込まれるため、出産から3~4カ月かかります。希望するなら、産前と産後と回数を分けて受け取ることも可能ですが、それぞれ手続きが必要です。

育児休業給付金は、原則として2カ月分がまとめて振り込まれます。こちらも後払いのため、最初の振り込みは育休がはじまってから2~3カ月後です。その後は、2カ月ごとに受け取ることになります。

そのため、振り込まれるまでに夫の給与で不足する場合は、貯蓄を取り崩す必要があるため事前に計画を立てておく必要があります。なお、出産手当金や育児休業給付金は、給与と異なり非課税扱いです。更に、産休・育休中は、社会保険料も免除されます。出産手当金や育児休業給付金は、何も引かれずに全て生活費に回すことができるのですから、給与が支給されず物入りの時期に助かります。

出産後の家計、どんな費目が増える?

赤ちゃんが生まれると、これまでと生活スタイルや支出の内容は大きく変わります。子どもに関する支出として、おむつやミルク代、子ども服や玩具などの新たな支出が発生するようにもなります。特に新生児は、おむつ交換が頻繁ですので月5000円くらいは見ておく必要がありそうです。ミルク代が必要な場合は合わせて月1万円くらいみておくと良いでしょう。

また、育休に入ると自宅で過ごす時間が増え、赤ちゃんが快適に過ごせるように部屋の温度に気を使うようになります。そのため、夏や冬は電気代が普段の2倍かかる場合も。日常生活に加え、お宮参りや初節句などの楽しいイベントや、祝っていただいた方へのお祝い返しの予算も必要です。

なお、2023年1月から、「出産・子育て応援交付金」という制度がスタートしています。これは、出産や子育ての相談支援と同時に、妊娠届出時の面談後に受け取れる、出産応援ギフト(5万円相当)と出生届から乳児家庭訪問までの間の面談実施後に受け取れる子育て応援ギフト(5万円相当)があります。自治体によって現金給付や出産・育児用品の商品券など対応が異なりますが、出産前後の物入りの時期に助かります。

子育て世帯の中には、子ども中心の生活となって子育て関連の支出は増える一方で、外食や飲み会を控えるようになり、交際費などあまり使わなくなったという声も。メリハリをつけて賢くやりくりをしたいものです。育休中は、仕事から離れて家庭に集中できる時期。この機会にお金の使い方や管理方法を整理しておきましょう。

育児休業中の家計管理のポイント

それでは、育休中にしておきたい家計管理とは、どういったことがあるでしょうか。

まずは、収支の確認です。何にお金を使っているか把握できてないという人は、現状を知るために2~3カ月だけでも家計簿をつけてみましょう。家計簿に書き留める従来の方法や、エクセルで自分仕様の表を作成するのも良いでしょう。

手間をかけたくないなら家計簿アプリが便利です。家計の現状を知ることで、経常的にかかる支出や、たまたま発生した特別費といった支出の内容が把握できるようになるため、想定以上に使っていた無駄遣いにも気付くことができます。

支出を減らしたい時は、まずは固定費の削減から取り組むと、あまり負担を感じずに続けられるため効果的です。代表的なものとして、通信費や保険の見直しがあげられます。スマホの料金プランの変更や、インターネット回線や家族とのセット割、格安スマホへの変更など検討してみましょう。

また、子どもが生まれたら生命保険の見直しは必須です。パパまたはママに万一があった場合でも、遺された家族が生活できるように死亡保障の過不足を確認します。職場に団体保険があることを見落としているケースもあるようです。団体保険は割安で加入できるものが多いため、勤め先に団体保険はあるか確認してみましょう。

また、銀行口座を整理し、必要なら子どもの口座も作ります。合わせて、先取貯蓄も検討しましょう。職場復帰すると、仕事と子育てで忙しくなります。あまりお金のことを考える時間が取れないことも多いため、今のうちに先取貯蓄で確実に貯まる仕組み作りをしておきます。財形貯蓄や積立定期預金だけでなく、NISAやiDeCoの制度を活用した資産運用も取り入れ、将来資金に備えましょう。

まとめ

ここまで、産休・育休中に受けられる給付金や、家計についてみてきました。簡単にまとめます。

出産という幾度とない貴重な時間を楽しみながら、未来がもっと楽しみになるように、お金とも賢く付き合っていきましょう。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。

出産手当金・育児休業給付金に関するQ&A

Q:出産手当金と育児休業給付金は、会社で手続きできますか?

A:会社の総務など担当部署が事務手続きをしてくれることが多いです。

Q:出産手当金の申請期限はありますか?

A:休業していた日ごとに、その翌日から2年で時効になります。