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【6月から】診療報酬改定、医療費の自己負担はいくら増える?

そなえる 内山 貴博

【6月から】診療報酬改定、医療費の自己負担はいくら増える?

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何かと物の値段が上がり家計が苦しいと感じている人も多いと思いますが、2024年は医療費の負担も増えることになりそうです。診療医療・介護・生涯福祉サービスの報酬・基準が同時に改定される「トリプル改定」として注目されています。トリプル改定の中身に加え、そもそもどのように医療費が決まっているのか?領収書などを見る際の注意点は?1つ1つ解説をしていきます。

診療報酬とは、どうやって決まる?

医療機関に支払う費用のことを「診療報酬」といいます。日頃、「病院代」や「治療費」などと言うこともありますが、この診療報酬は厚生労働大臣が医療行為1つ1つに点数を付けており、その点数を基に支払う金額が決まります。

日本は憲法においても、私たちは「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利があるとされています。よって「病気やケガをして、高額な医療費が負担となり治療を受けられない…」ということがないように、医療行為1つ1つに点数を付けることで、医療行為の標準化を実現しています。そして健康保険をはじめとする医療保険制度のおかげで医療費の負担が抑えられているのです。

病院受診した際の「領収書」で見る診療報酬、その見方

領収書
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受診後に領収書をもらうと、以下のように保険診療が点数で記載されています。実際の領収書を抜粋していますが、下記の図表では初診料が292点となっています。原則、初診料は288点と定められていますが、これはマイナンバーカードを保険証として利用した場合です。通常の保険証を利用すると4点加算され292点となります。

その他、病院の病床の数や受診した時間が診療時間外の場合などによって初診料も異なりますが、それぞれ一定の点数が定められています。

実際の領収書から抜粋し筆者作成(※病院によって表記方法等異なります)

上の図表の場合、『(社保・家族・3割)』とありますので、会社員の方の扶養家族の診療であることを意味します。3割が実際に負担する割合となります。

合計が1583点となりますので、診療報酬は1万5830円となります。その3割は4749円となりますが、10円未満は四捨五入するという定めがありますので、実際に支払う額は4750円となります。

保険適用外の点数は、入院した場合の差額ヘッド代や医師の診断書をもらう場合の文書料などがあります。これらは原則、全額自己負担となります。

6年に1度、2024年の診療報酬改定「トリプル改定」とは

医療の進歩や国の財政状況を鑑み、診療報酬は定期的に改定が行われています。医療の診療報酬は2年に1回、介護報酬や障害福祉サービス等報酬は3年に1回行われています。2年と3年毎に改定が繰り返されるため、6年に1回、改定が同時に行われることになります。これが「トリプル改定」と呼ばれ、2024年度がそれに該当しているのです。診療報酬改定の施行は2024年6月1日から、薬価改定の施行は2024年4月1日からです。

医療や介護、障害福祉などは横断的なつながりもあるため単独での改定より今回のようにトリプル改定の方が診療報酬を改訂しやすいとされています。全体的に診療報酬がどのように改定されるのか、例年以上に注目されていました。

改定の背景に「賃上げ」

今回の改訂で病院や歯科を診療する際の診療報酬はプラス0.88%となります。改定の大きな理由は賃上げです。他の産業、業界でも物価上昇に伴う賃上げが大きなテーマとなっており、各企業が取り組んでいます。同様に医療従事者の賃上げも必要となっているため、今回の改訂につながりました。

医療費の負担はどれくらい増える? 

医療費
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初診料は先に紹介しました288点から0.88%アップし291点。よって3点上乗せされるため2880円から2910円となります。それに加えて賃上げ実施状況によって60~700円上乗せされます。上乗せ金額は医療機関の職員数によって異なります。

その結果、初診料の自己負担は3割負担の場合、9~219円増えることになります。再診料も6~36円程度増えます。入院した際の入院基本料も最大1日312円アップ、食事代も原則30円アップし1食490円となります。

それぞれを見ると数十円程度ですが、これらが積み重なるとそれなりの負担になります。その他マイナ保険証導入に伴う医療DX加算など、改定率とは別に加算されるものもあるため、トータル的に私たちの医療費負担は増える見込みです。

ただし、薬代などの薬価等は今回の改訂でマイナス1.00%となるため薬代の負担は軽減することが見込まれます。

介護報酬は+1.59%の改定率

介護報酬も介護職員の賃金上昇など処遇改善を主な理由としてプラス1.59%の改定率となります。ただし、光熱費などが上昇していることも鑑み外枠でそれらが上乗せされ、実際は2.04%相当になります。「訪問看護」、「訪問リハビリテーション」、「通所リハビリテーション」、「居宅療養管理指導」の4つのサービスは2024年6月1日に施行、それ以外は2024年4月1日に施行されました。

医療業界も「働き方改革」

2024年4月から「医師の働き方改革」もスタートしました。緊急対応など24時間で対応してくれる医療体制の中で長時間労働を強いられている医療従事者も少なくありません。医療従事者の勤務状況も含め、医療サービスを充実させるために必要な改定です。ただ「医療費が高くなった」というだけではなく、その背景も踏まえておいてください。

お酒やたばこが好きな方も多いと思います。筆者もお酒を飲みますが、例えば晩酌の量を減らすことで節約をし、そのおかげで飲みすぎることなく、それが健康につながり病院に行く機会が減る。診療報酬改定をきっかけにちょっと発想を変えて、より健康に意識を高めることができるといいですね。