親との同居、アメリカの最新実情は?Z世代以降では新たな変化も!
近年さまざまなスタイルが提唱され、人々のライフスタイルも驚くスピードで様変わりしています。日本では成人した独身の大人が実家暮らしを続けるのはよくあることです。一方、住居スペースが日本と比べると一般的に驚くほど広いアメリカで核家族の事情はどうなっているのでしょうか。「親との同居」事情についてアメリカ現地からお届けします。
親との同居、メリットもデメリットも
人生100年時代となり、人々の暮らし方のスタイルがますます変化し、多様化やグローバル化が進んでいます。
成人した大人が親と同居するケースは、一般的に二通りに分かれます。一つは育ってきた環境下で成人後も生活を続けるケース。もう一つは高齢の親の面倒を見るために親と一緒に生活をするケース。
親と同居するメリットは、(同居が居心地が良い場合)その心地良さが持続するばかりでなく、家賃や生活費を大きく節約でき、家事も分担でき、親(もしくは子)の健康状態を身近で把握できるなどです。また税金の扶養控除もあるでしょう。
デメリットは同居によってストレスを抱えたり、介護が必要になった際に世話をする側に負担がかかる可能性がある点です。
広大な土地を持つアメリカでの同居事情は?
これを日本で読んでいる方は、広大な土地を持つアメリカではその土地柄、そして親子仲が良いイメージがあってか、成人した大人が親と同居するケースが多いイメージを持っているかもしれません。
(参考までにアメリカの住居事情を説明すると、特に郊外や田舎に行くと豪邸でなくてもベッドルームやバスルームが5つ以上あるような大きな住宅が普通です。日本の公園程の広さの敷地内に屋外プールやバスケットボールコートがある家もあります)
これだけ家が広いと親と成人した子が同居してもストレスが少ないだろうから、同居し続けるケースは多いんじゃないかと思うかもしれません。しかし実際この国では、昔から「成人すると家を出て自活する」というのが人々の考えにあるのが一般的です。成人した者は生家を旅立ち自活することこそ「大人になった証」という考えが、他の国と比べてアメリカ文化ではより強く支持されているのです。成人後も実家暮らしを続けることへの社会的偏見が伝統的に残っていることが、この現象の文化的な背景としてあります。
実際、筆者の友人家族(ニューヨーク州郊外に住む、成人した4人の子を持つ親)も、子はそれぞれ別の家に住み、友人は離婚後、5ベッドルームの大きな家で未だ一人暮らしをし続けています。家賃の高騰ぶりが激しいニューヨーク市内になると、40代で親と同居している独身の友人も何人かいますが、多くは独立して生活しています。ある知り合い家族は、親と子で同じアパートメントの建物に暮らしながら別々のユニット(アパートの部屋)を契約して暮らし、夕食時に子が両親の家を訪れる生活をする人もいます。
Z世代やミレニアル世代に変化が
そんな中、最近では少し変化が見られるようです。アメリカのZ世代やミレニアル世代の人々が18歳以降も親との同居を選ぶ傾向があることがわかり、このような変化に多くの人々が驚いているとアメリカの各メディアは報じました。
メディアソースによって数値に差異がありますが、まず調査機関として権威あるピュー研究所の発表によると、アメリカに住む18~34歳の成人の3人に1人が実家で暮らしているということです。(数値は2021年時点)
またブルームバーグやアキシオス、デゼレットなどのメディアソースでも、18~29歳の成人の半数近くが親と同居し、この割合の多さは1940年代以来初めてだといいます。ほかにも両親と同居している25~34歳までの成人の数が20年前と比べて87%増加しているという数字もあります。親との同居について(経済的に独立できない場合に社会的偏見に対して)恥ずかしいと思う気持ちはその年代の人々の間で薄れているということです。
そのような傾向に変わってきているのは1.節約のため、2.高齢の親の世話のため、3.子に自活する経済的余裕がない、というのが主要な理由のようです。
不動産情報サイトのzillowによると、アメリカでもっとも家賃が高い都市の1つであるニューヨーク市のアパートの平均家賃は月額3812ドル(57万4000円)にもなります(数値は2024年7月現在)。つまり親と子が別居すれば毎月100万円、年間1200万円を超える支出があり、同居すれば毎月50万円、年間600万円以上も節約できるということなのです。なるほど、前述の理由にも納得できます。
一方、前述のピュー研究所は、ヨーロッパ諸国のその世代の若者は実家暮らしをする傾向がアメリカより高いといいます。実家暮らしの傾向が中でも高いのはクロアチア、ギリシャ、ポルトガル、セルビア、イタリアなどで、逆にその傾向が低いのはフィンランド、スウェーデン、デンマークと北欧諸国でした。またアメリカとヨーロッパの両方で、若い男性は若い女性よりも実家暮らしの傾向が高いということです。
これらの情報はどの国もあくまでも「傾向」であり、ライフスタイルは人や家族それぞれで異なります。実家暮らしの理由がポジティブなものであれば歓迎されることだと思います。一方、成人した大人が経済的に自立困難で実家暮らしを強いられているとしたら、それは健康的な理由とは言えないでしょう。