お金

解雇とは違う「雇止め」、どんな違いが?有期雇用の注意や対処法

そなえる 内山 貴博

解雇とは違う「雇止め」、どんな違いが?有期雇用の注意や対処法

【画像出典元】「Twinsterphoto/Shutterstock.com」

物価が上昇し、それに伴い賃金を上昇させるべく給与体系を見直す企業も増えています。そんな中、人件費が重くのしかかり、人員を整理したいと考える企業も増えてくるかもしれません。「急に働けなくなったら」といった心配を抱えながら仕事をしている人も少なくないでしょう。今回はそういった雇用に関する「雇止め」について取り上げます。

「雇止め」とは?解雇との違い

雇止めとは「契約期間1年」といった有期労働契約の期間満了に伴い、契約を更新せず終了することを言います。つまり、その労働者は契約期間が終了することでその会社で働くことができなくなります。雇用期間の定めのない場合や雇用期間中に雇用を終了すると「解雇」となり、この場合は厳しい規制があります。一方で雇止めはある意味「契約通り」ということになり、適法とされています。

雇止めがあり得るケース

雇止め
【画像出典元】「stock.adobe.com/Inna Dodor」

まずは製造業です。企業が季節商品の製造のため人員を増やしたくて有期労働契約社員を雇用した場合、その期間満了時に季節商品の必要性が低くなっていれば雇止めになることが想定されます。

また非正規の教員なども考えられます。学校のカリキュラムや授業内容は定期的に見直されるため、担当できる科目や他の講師との兼ね合いで雇止めとなることも十分想定できます。

契約期間の更新は「雇用する側と雇用される側の同意」によって行われます。そのため、雇用する側に更新の意思がなければ、少なくとも契約期間が満了となる30日前までに契約を更新しない旨を面談等で伝えます。そして「〇月〇日で契約が終了し、更新しません」といった通知書が送付されるという流れとなります。

雇止めは自己都合?会社都合?失業保険の給付日数

雇用保険の失業保険は「自己都合」と「会社都合」の大きく2つのケースに分けられます。自ら辞表を書いて退職する場合などは自己都合に該当し、失業保険の給付開始まで原則2カ月間の制限があり、最大給付日数は150日となります。

一方、倒産や解雇などの会社都合に該当すれば2カ月間の受給制限はなく、一定の条件を満たせば最大給付日数は330日となります。一般的に自己都合より会社都合の方が有利とされています。

では雇止めの場合はどちらに該当するのでしょうか?「会社都合」で退職する人は「特定受給資格者」といい、倒産や解雇などの条件が詳しく定められています。雇止めは解雇とは異なりますが、契約が何度か更新されて3年以上雇用されていた場合や、労働契約が更新されることが明示されていたにも関わらず更新されなかった場合は特定受給資格者に該当するとされています。それ以外はいわゆる「自己都合」扱いとなります。

なお、自己都合の場合は「過去2年間のうちに12カ月以上、雇用保険に加入していたこと」が失業保険受給の要件になるため、有期雇用の労働者でも失業保険を受給できる可能性は十分あります。

雇止めが違法のケースも?「無期転換ルール」と「雇止めの法理」 

契約内容の確認
【画像出典元】「stock.adobe.com/mojo_cp」

有期雇用であっても、期間の定めのない従業員、いわゆる正社員と同じように働く人も多くいます。そういう人が「期間満了だからこれ以上働くことができないのはしょうがない」とあっさり受け入れることができるでしょうか?もちろん雇用する側の「そういう契約になっているから」という言い分も理解できます。

過去、こういった状況で多くの訴訟などが行われたこともあり、現在は労働契約法で大きく2つ「無期転換ルール(18条)」と「雇止めの法理(19条)」の定めがあります。これらに該当すると雇用主は雇止めができないことになります。以下なるべく平易な表現を用いますので、詳細は法律の条文をご確認ください。

無期転換ルール(18条)

有期労働契約が5年を超えている場合や契約更新が1回以上行われている場合で、労働者が「期間の定めのない労働契約にしてほしい」と申し出を行っている場合

雇止めの法理(19条)

・過去に何度も更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められる場合
・有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合

何度も契約を更新していたり、次も更新されるのが当然だろうという流れにあったり、単に一定期間だけの業務で1回限りの契約ではないといった働き方をしている場合は雇止めを無効と主張することができるかもしれません。

実際に私立学校で働いていた非常勤講師が1年ごとに契約を更新し、5年目の契約を更新拒絶されたと裁判を起こしたケースがあります。雇用する側、つまり学校側は5年を超えると18条にある無期雇用に転換しなければならないということを想定し契約を満了した可能性があります。ただし、有期契約が既に何度も更新されていることを考慮すると「雇止めは無効、違法」であるという主張も納得できます。

有期契約を交わす場合、雇う側も雇われる側もこういったケースをあらかじめ想定しておきたいところです。

「雇止め」が不服だと思われる場合の対処法

雇止めが無効や違法になる可能性を紹介しました。もし、こういった状況に該当した場合はまず会社側と交渉することが大切です。話し合いをすることで雇止めとならず、契約を更新してもらえればそれが一番です。

場合によっては「退職金を上乗せするから」と退職してもらうために何らかの好条件を提示してくる可能性があります。これらを受け入れてしまうと、実質的には契約満了に合意したとみなされてしまう恐れがあるため、どうしても継続して働きたい場合はこういった条件を受け入れないようにしましょう。

ただ、会社との話し合いでは解決しないという場合は早めに弁護士に相談しましょう。