トランプ大統領再選でどうなる?日本の為替や株価にどう影響する?
監修・ライター
2024年11月5日に実施された米大統領選挙で、共和党のドナルド・トランプ前大統領が民主党のカマラ・ハリス副大統領を破り、再選を果たしました。この再選により、米国のみならず日本の為替や株価にも大きな影響が予想されています。そこで本記事では、トランプ氏の政策が今後の日本経済に及ぼす影響を過去の実績や現在の市場状況をもとに詳しく見ていきます。
トランプ大統領再選による市場の期待
トランプ大統領は、選挙期間中から、3つの重要な経済政策を掲げていました。はじめに、その政策内容について押さえておきましょう。
1つ目が、企業への減税を恒久化することです。これが実現すれば、米国企業が利益を上げやすい環境を整えることができます。従って、この「トランプ減税」が実現すれば、米国企業の競争力がさらに高まることが見込まれます。
2つ目が、輸入品への関税を引き上げる「保護貿易」です。輸入関税を引き上げれば、米国内での自国製品の競争力が上がるため、米国企業にとって有利になります。加えてこの政策は、特にアメリカ国内の製造業を支援することを目指しており、国内の雇用増加にも繋がると期待されています。
3つ目が、エネルギー業界への規制緩和です。規制緩和によって石油やガス業界の成長がさらに活性化すれば、米国経済の強化にも寄与すると考えられています。
こうした3つの政策が実現すれば、ドル高・円安が進むことになるため、日本の輸出企業にもプラスの影響が及ぶ可能性が高くなります。
トランプ大統領の政策が為替に及ぼす影響
トランプ大統領の経済政策は、為替市場にもさまざまな影響を与えると予想されています。中でも注目されるのが、高関税をかけることによる保護貿易化です。これは米国内において、米国製の製品が輸入製品よりも有利になることを目的に行われるものですが、為替にはどう影響するのでしょうか?
保護貿易を進めると、まずドル高が進む可能性があります。高関税によって輸入が減ると、アメリカの貿易赤字は小さくなり、ドルの価値が上がることが考えられます。ドルの価値が上がると相対的に日本円は安くなるため、日本の輸出企業にとっては有利な状況となります。
ですが、ドル高が続くと海外での米国製品の価格が高くなるため、例えばiPhoneなどの売れ行きが海外では悪くなり、結果的にアメリカの輸出業界にはマイナスになることも考えられます。
次に、リスク回避によるドル買いが起こる可能性です。トランプ大統領の強硬な貿易政策や米中関係の緊張が続けば、投資家たちは「金利も高く安全な通貨」としてドルを買い始めます。このためドルの価値がさらに上がり、相対的に日本円はさらに安くなる可能性があります。
また、トランプ大統領が進めようとしているエネルギー産業の規制緩和も、ドル高の要因になる可能性があります。石油やガスの産業が活性化すれば、アメリカ経済全体がさらに成長するため、ドルの価値が上がることが期待されます。
日本市場への影響
こうした政策の影響でドル高・円安が進むと、日本の自動車メーカーや電機メーカーといった輸出企業には良い影響が出やすくなります。円安で日本製品の価格が安くなるため、海外で売れやすくなるからです。
ただし、円安になると、輸入品や原材料の価格が上がるため、企業のコストが増えてしまう点には注意が必要です。もちろん、海外旅行はさらに遠のくことになります。
日本企業の株価への影響
トランプ大統領が掲げた政策は、日本企業の株価に良い影響と悪い影響の両方を与えると考えられます。そこで、それぞれの視点から、具体的に何が起こりそうかを見ていきましょう。
良い影響:円安による輸出企業の業績向上
上述のように、トランプ大統領の政策によりドル高・円安が進行すれば、輸出を主力とする日本企業にとっては大きな追い風となります。
例えば、自動車メーカーや電子機器メーカーなど、海外での売上が多い企業にとって、円安は製品を割安に提供できるチャンスです。円安が進行すれば輸出価格が下がるため、世界市場での競争力が高まり、売上や利益が増加することが期待されます。
こうした業績向上の期待から、輸出関連企業の株価は上昇しやすくなると考えられます。特にアメリカ市場で強いシェアを持つ企業は、ドル高による恩恵を大きく受けるため、株価の上昇が期待されます。
悪い影響:コスト増や高関税のリスク
一方で、円安には悪い影響も伴います。特に原材料やエネルギー資源を多く輸入している企業にとっては、コストが増加するリスクが高まります。
輸入コストが増えることで利益が圧迫されるため、業績が伸び悩む可能性があります。こうした影響は、製造業や食品業界など、原材料の多くを海外に依存している企業に特に大きく出るでしょう。
また、トランプ大統領の保護貿易政策によって、日本からの輸出品に高関税がかけられるリスクもあります。特にアメリカ市場への依存度が高い企業にとっては、この関税が株価の下落要因となる恐れがあります。アメリカ市場での売上が多い企業にとって、貿易障壁が株価を押し下げるリスクとなり得ることは十分に考えられます。
このように、トランプ大統領の掲げる政策は輸出企業にとってのメリットと、輸入コスト増や高関税によるデメリットが混在しており、日本企業の株価に複雑な影響を与える可能性があります。企業ごとの状況に応じて株価への影響が変わるため、業種やアメリカ市場の依存度に注目していく必要があります。
今後の投資判断のポイント
最後に、これまで述べた内容を踏まえた上でこれから投資する際にどのような点に注目すべきかをまとめてみます。
米国の金融政策の影響
トランプ政権下でのアメリカの金融政策は、上述のように日本株に直接影響を与える可能性があります。特に、米連邦準備制度(FRB)の金利政策は為替や株式市場に大きな影響を及ぼします。
そのため、FRBが利上げを継続すれば円安が進みやすくなり、輸出企業にプラスの影響が出る一方、円高が起これば輸出企業の利益が減少するため、日本株全体に悪影響が出る可能性があります。
従って、米国の金利動向やFRBの発表を注視した上で、為替の動きに影響を受けにくい内需型企業の投資も検討すると良いでしょう。
米中貿易摩擦への懸念
トランプ政権は保護主義的な通商政策を進めていくため、中国に対する関税引き上げや貿易制限措置を講じる可能性が非常に高いと言えます。このような米中関係の緊張は、日本企業にも間接的な影響を及ぼすと考えられます。
そのため、米中間の貿易摩擦が激化すれば、中国のサプライチェーンに依存する日本企業が大きな影響を受ける可能性があります。また、貿易摩擦による世界経済の停滞が日本市場にも波及するリスクがあります。
こうしたことから、貿易摩擦の影響を受けにくい業界(内需型、小規模市場依存型企業など)や、安定成長を続けるセクターに注目すると良いでしょう。
米国のインフラ投資政策の動向
トランプ政権は大規模なインフラ投資を計画しており、その需要増加は日本企業にも恩恵をもたらす可能性があります。中でも、建設機械メーカーや素材関連企業は、大きな利益を得る可能性があります。
ただし、インフラ計画が予定通り進まない場合や政策の具体化が遅れる場合は、日本企業が想定していた通りの利益を得られない可能性があります。
従って、トランプ政権のインフラ政策の進展状況を確認しながらタイミングを見極めた投資を行うと良いでしょう。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。