一極集中する日米株式市場、資金はどこに集まっている?
監修・ライター
現在、日米の株式市場では、一部の大型株が株式市場をけん引する傾向が強まっています。これらの銘柄は、その大きな影響力から、各国の株式市場における重要な指標です。しかし、これらの銘柄の動きに左右される市場は、一部の銘柄の価格変動により大きな影響を受ける可能性があります。
この記事では、一部の大型株に資金が集中している理由と、注意点について解説します。
米国では「マグニフィセント・セブン」の存在感が高まる
米国株式市場で存在感を増している「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる銘柄群は、GAFAM(グーグル=現アルファベット、アップル、フェイスブック=現メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドットコム、マイクロソフト)という主要5社に、エヌビディア(米国カリフォルニア州に本拠地を置く半導体メーカーで、特にGPUの設計に特化。GPUはパソコンで処理した画像などを描写するために使われるパーツで、世界中で広く利用されています。)と電気自動車で有名なテスラを加えた7銘柄を指します。
この名前は、「壮大な」、「素晴らしい」などの意味を持つ「マグニフィセント」と、1954年公開の日本映画「荒野の七人」をリメークした1960年公開の西部劇映画「マグニフィセント・セブン」から取られています。
2024年2月時点のマグニフィセント・セブンの時価総額は合計で約12兆ドル(約1800兆円)と、東証上場企業全体の2倍です。これらの銘柄は、その大きな影響力から、米国株式市場における重要な指標となっています。
日本でもトヨタや半導体関連株など一部の銘柄に資金が集まる
日本の株式市場でも、時価総額上位銘柄による一極集中の傾向が強まっています。トヨタ自動車やソフトバンクグループ、半導体関連株、商社株などが相場を引っ張り、日経平均は高値を更新しています。
2月22日に米エヌビディアが市場予想を大幅に上回る決算を発表したことで、すでに上昇していた半導体関連株がさらに高値を更新しました。これは、米国株式市場をけん引する超大型7銘柄「マグニフィセント・セブン」の動きと同様で、日経平均は米国のような株価指数に近づいていると言えます。
米ゴールドマン・サックス証券は、バブル経済期の最高値を超えた日本の株式市場をけん引する7つの有力銘柄を「セブン・サムライ」と名付けて公表しました。これは、米国の「マグニフィセント・セブン」の日本版です。この名前は、1954年に公開された黒沢明監督の名作「七人の侍」にちなんでいます。米ゴールドマン・サックス証券が公表した7銘柄は、半導体製造装置メーカーのSCREENホールディングス、アドバンテスト、ディスコ、東京エレクトロンの4社と、トヨタ自動車、SUBARU、三菱商事の大手3社です。
米国を中心とした先進国が世界の株価をけん引
世界主要国の上場株を対象とした株価指数である「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」は、最高値圏で推移しています。米国の景気の軟着陸や人工知能(AI)の普及への期待などを背景に、世界の株式市場全体で上昇の波が広がっている状況です。
ACWIは、国・地域別に47の指数で構成されており、先進国や新興国の上場株を幅広くカバーしています。これは世界全体の株価動向を示す指標であり、投資家からも注目されています。特に米国株は全体の約6割を占め、年初から上昇ペースを加速させています。
そして、2月22日のエヌビディアの好決算が、さらなる株高のきっかけとなりました。発表後の株価急騰でエヌビディアの株式時価総額は2兆ドル(約300兆円)を超えました。これは、米国株の時価総額でマイクロソフト、アップルに次ぐ第3位です。
米国の「マグニフィセント・セブン」が世界の株式相場をけん引しており、日本でも「セブン・サムライ」の7銘柄のうち、トヨタ自動車、三菱商事や半導体関連株が主要なポジションを占めています。今後の人工知能(AI)の普及を見据え、半導体関連株が世界の株高をけん引している状況と言えるでしょう 。
マグニフィセント・セブンは、AI(人工知能)、クラウドコンピューティング、自動運転、仮想現実など、革新的な技術分野でリーダーシップを発揮していて、投資家はこれらの企業が今後も成長し、市場を牽引すると期待しています。さらに、マグニフィセント・セブンはS&P500など主要な指数の構成銘柄となっており、ETF(上場投資信託)やインデックスファンドなどからの資金が流入し、一部の大型株をさらに上昇させているのです。
また、日本の株式市場では、海外投資家が主な買い主体となっています。彼らは動かす資金が大きいため、TOPIXコア30(東証プライム市場全銘柄の中で、時価総額と流動性が特に高い30銘柄で構成された株価指数)などの大型株を購入する傾向があります。このため、日本でも一部の大型株に資金が集中しているのです。
2024年は「大統領選イヤー」であり、バイデン氏とトランプ氏が有権者を意識し、景気刺激策を前面に出してくることが予想されています。選挙がある年は株式投資で勝ちやすいとされています。さらに、ダウ平均が初めて3万ドル台に乗せたのは前回選挙のあった2020年11月であり、2万ドルからはわずか3年10カ月で達成されました。現在の上昇ペースを考慮すると、4万ドルの大台超えも遠い未来ではないかもしれません。
一足先に日経平均株価は4万円の大台を超えましたが、日経平均株価は米国半導体関連株であるエヌビディアの株価との連動性が高まっています。エヌビディアは、以下のように株価のボラティリティ(変動率)が非常に高い銘柄です。
エヌビディアの騰落率
2022年 -50.3%
2023年 238.9%
2024年 78.47%(3月5日時点)
今後、エヌビディアの株価が下落した時、日米の株価ともに調整局面に入る可能性もあるので、注意が必要です。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。