【税金・手数料一覧付】3000万の家を売却、手元に残るのはいくら?

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住宅は「一生に一度の大きな買い物」と言われることがありますが、近年は全国的に不動産価格が上昇していることもあり、マイホームを売却して買い替えるケースも増えている印象があります。また、在宅ワークの普及など生活の仕方や働き方の変化も、一度購入した家を売却するきっかけとなっているようです。
今回は、家を売却する際にかかる費用や税金についてまとめました。いざ売却をした後に「意外と手元に残らなかった」「こんなに税金がかかるとは」とならないよう、売却前に一通り全体像を把握しておきましょう。
不動産売却でかかる税金・手数料一覧
マイホームを売却する際、主に意識しておきたいのが「仲介手数料」と「税金」です。また、建物を解体して売却する際の「解体費」や、買い主から境界確認書を求められた際には測量費が必要となることもあり、そうなると50万円前後かかる場合があります。事前に家を売却する際にどんな費用が必要なのか全体像を確認しておきたいところです。
印紙税や抵当権抹消登記、司法書士への報酬などはそれほど高額ではありませんが、それぞれ積み重なるとまとまった金額になるため、やはり事前にある程度把握しておきましょう。
仲介手数料の相場と計算式

不動産を売買する際の仲介手数料は国土交通省が定めた「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」として以下のように上限が定められており、一般的に不動産会社はこの上限で設定しています。
例えば売却代金が3000万円の場合、3000万円×3%+6万円=96万円となり、仲介手数料は消費税込みで105万6000円となります。
仲介手数料を支払うタイミングは不動産会社により異なりますが、契約時に半分、物件の引き渡し時に残り半分をという具合に2回に分けて支払うのが一般的です。
戸建てとマンション、売却時の費用に違いは?
戸建てとマンションでは、売却した際に大きな違いはありませんが、マンションの場合は「修繕積立金」や「管理費」の清算金が生じることが一般的です。これらは通常、次月分を前納していることが多いため、売却した後の分も一部負担していることになります。よって、その分が清算金として戻ってきます。
修繕積立金は「積立金」という表現から所有していた期間分の全てが戻ってくると捉える人がいますがそうではありません。修繕積立金は将来の修繕のためにその都度、マンションの所有者が払うものです。管理費同様、あくまで払い過ぎとなる1カ月分程度が戻ってくるのみです。
なお、固定資産税も同様に1月1日時点の所有者が1年間分払うため、年の途中で売買が行われた場合、残りの期間分が清算されるのが一般的です。これは戸建ても同様です。
売却後の「手取り」はいくら?費用をシミュレーション
家の売却額が3000万円だった場合、手元に残る金額はいくらになるのでしょうか?
仲介手数料は前述のとおり105万6000円です。解体費や測量費がかからないとして、それ以外の印紙税や司法書士報酬等を10万円程度と見積もると、仲介手数料を含めた諸費用は約115万円です。
次に、譲渡所得にかかる所得税、住民税はどのくらいかかるか見ていきましょう。譲渡所得は以下のように計算します。
売却額-(取得額+譲渡費用)=譲渡所得
今回のケースでは売却額が3000万円、譲渡費用は約115万円となりますが、取得額が不明です。ここがやや複雑なので注意してください。
家を購入した際の契約書などがあれば取得額は分かります。しかしそこから建物が毎年経年劣化した分を、所有期間中の減価償却相当額として差し引く必要があるため、具体的な額を計算するのは非常に難しいのが現実です。このような時は、売却を依頼している不動産会社に相談し、取得費を算定してもらうと良いでしょう。
なお、何十年も前に購入し、取得額が全く分からない場合は売却額の5%で計算します。つまり、今回の場合3000万円×5%=150万円となります。仮に取得額を150万円とした場合の税額を計算してみましょう。
一覧にあるように、土地建物の譲渡所得は所有期間によって税率が異なります。通常は5年超の長期譲渡に該当することが多いため、ここでは20.315%で計算します。
売却額3000万円-(取得額150万円+譲渡費用115万円)=譲渡所得2735万円
譲渡所得2735万円×20.315%=約555万円
所得税と住民税合わせて税額は約555万円となりました。今回の場合、各種手数料・税金の中で最も大きな負担となりました。したがって手元に残る金額は下記のようになります。
<手元に残る金額>
3000万円
-115万円
-555万円
---------------
=2330万円
実際にマイホームを売却する場合は、新居への引っ越し費用なども考慮しなければなりません。売却前に新生活まで見込んで慎重にお金の計画は立てておきたいところです。
家を売った時の税金が安くなる特例もある

シミュレーションでは諸費用の中で譲渡所得にかかる税金が一番大きな負担となることが分かりました。ただし、土地建物を譲渡した際の譲渡所得には様々な特例があります。その代表例が「居住用財産の3000万円控除」です。
「3000万円控除」と「買換え特例」の内容と注意点
一定の条件を満たしたマイホームであれば譲渡所得の3000万円まで控除できます。つまり、先の例でも譲渡益3000万円までが非課税で所得税・住民税は0円となり、手元に残る金額はその分多くなります。
その他にも「居住用財産の買換え特例」という制度もあります。売却に合わせて新たな住宅を購入した場合、その分課税が繰り延べられるという制度です。
例えば売却額が6000万円で新たに購入する住宅が同額の6000万円だった場合、売却額-購入額=0円となるため、この場合、課税負担は生じません。
ただし、「居住用財産の3000万円控除」や「買換え特例」を使うと、新たに取得した物件で住宅ローンを組んでも住宅ローン控除が適用できないという注意点があります。
住宅ローン控除は10年または13年と長期に渡り適用される税額控除なので、トータルで数百万円も税負担が軽減される可能性があります。
よって、譲渡所得に対する特例は使わずに税金を払い、住宅ローン控除を使った方が有利という場合も考えられます。その他にもマイホームを売却する際は様々な特例があるため、最も有利なものを利用してください。
詳しくは国税庁のHP「マイホームを売ったときの特例」を参照してください。
FPに多い相談「売却のタイミング」の正解は?
売却について、FPへの相談で最も多いのが「売却のタイミングがいつか」ということです。今が良いのか?今後、まだ価格が上がるのでは?といったケースのご相談が多いです。
しかし不動産価格は株価に近いものがあり、動向を予想するのが難しいものです。もちろん物件エリアの人口動態、不動産の需給面、経済状況などからある程度予想はできますが、その後、もし買い替えをする場合、新たに購入する物件も同様に高くなっている可能性があります。
住宅は生活の拠点となりますので、家族がより快適に生活するには?ということを最優先に考え、その結果が売却することであれば、早めに行動を移すのが良いと思います。