えっ!?おみくじの原価は1円!?神社から学ぶ「信じる者で丸儲けマーケティング術」
監修・ライター
2020年がやってきてしまった。ワタシ(中村修治)は、滋賀県彦根市の氏神様に、齢85歳のおふくろの手を引いて初詣である。「これが最期の初詣になるかもしれんなぁ!?」と冗談にもならないセリフとともにお詣りするのが、新年の恒例となっている。
その度に、カミさんはお札を買うわ、娘たちはおみくじを引くわ、お守りまで買うわ、お年玉までゆすられるわ、飛ぶようにお金が消えていく。うれし困ったお正月なのである。
・・・ちゅうことで、初詣のついでに、神社ビジネスについて書いてみた。
これがまぁ、神社というのは、すごいマーケティング装置なのである。
「ご利益ある?」お賽銭もキャッシュレス!神社でIT化が進む理由とは
おみくじは、お正月三が日で売り上げ31億円超!!!
警察庁が発表した最新の初詣客数は、2008年度の9818万人。日本の人口の約8割。東京ディズニーランドに年間を通じて来場している人数の約4倍もの人達が、正月の期間だけに日本全国の神社には、集まっているのだ。
そこで、どのくらいの人たちがおみくじを引いているのか!?株式会社アイシェアの調査結果(20代から40代を中心とするネットユーザー372人の回答を集計)によると、回答者のうち、正月におみくじを引いたと答えたのは34.7%。正月におみくじを引く人は、初詣に行く人の全体の約35%。
ざっくりと初詣客数を全国で9000万人と仮定すると、3150万人がおみくじを引くことになる。おみくじ単価を100円とすると、総売り上げは、全国で31億5000万円。『おみくじの原価は1円!―――時代を超えて生き残るビジネス』(金子哲雄著・宝島社新書)なんて書籍があるくらいだから、利益は31億1850万円となる。
ちなみに、あの有名な伏見稲荷神社の三が日の参拝者は、約250万人。その内の35%がおみくじを購入すると想定すると、87万5000人。おみくじ1回当たりが100円だったら、8750万円の売り上げ。粗利益は、8662万5000円。1億円近い利益を正月に稼ぎ出すわけである。信じる者で、丸儲けである。
お寺より神社はすごい!!!
マーケティングを「持続的な交換活動を創出するための総合的な活動」とするなら、高齢化社会が本格化する日本の中で、神社は、おもしろいマーケティングの場となるはずだ。神社は、地域の経済復興の基礎となる「やる気や想い」を呼び起こし、持続させる重要な拠点になりうるかもしれない。
お寺も神社も国から保護政策を受けた宗教法人であるが・・・現在、お寺の経済はかなり厳しいらしい。それもそのはず、江戸幕府がキリスト教弾圧のためにこしらえたお寺固有の檀家制度は、布教もちゃんとせずに、寝てても布施が入ってくる仕組みを作り出した。
しかし、戦後ならまだしも、現在では、こんなお寺から信者の心が離れていくのは当然。親の世代から継いだ若い世帯主には、あまり信仰心はない。現実的にお寺に行く機会は、ほとんどない。そうすると、近所のお坊さんは、葬儀や法事のときだけやってきて、高額な布施を請求する悪徳業者に見えてきてしまう。お寺の経済を破綻させている諸悪の根源は、檀家制度という「坊主丸儲け」の仕組み自体。なんとも皮肉である。
お寺の存続は、若い世代の檀家にとって、そのお寺の住職が好きか嫌いか。尊敬できるか、どうか。そんな個人的な関係の維持が、その寺の収入を決定していくことになる。檀家制度の中での、お寺のブランド戦略は、なかなか難しいっ。
その点、神社は、氏子制度というものがあるにしろ・・・お寺ほど人間くさい付き合いにならない。さらには、年間の地域祭事機能を持っているため、氏子の地域を越えた集客が、そのブランド力や戦術によって可能になる。
お寺は、人間くさい関係が、収益を左右する。
しかし、神社は、装置として、ブランドとして、その機能性向上が、収益を上げる。
全国各地の神社に、さらにマーケティング視点が加われば、さらに面白い場になるはずだ。
「ご利益ある?」お賽銭もキャッシュレス!神社でIT化が進む理由とは
福岡の有名な神社からのDM!!!
ワタシの自宅にも、福岡の有名な神社からことあるごとにDMが届く。お祓いのための紙製の人形(ひとがた)が数回に一度は入ってくる。初穂料を送金して、人形におまじないをして名前を書いて送り返す。家族4人分・・・妻は、毎回「捨てられないのよねぇ・・・」と言いながら、律儀に送金+返信を繰り返している。
「怒れない。捨てられない。どうしようもない」
「お気持ちを添えて送り返すしかない」
「DMを止めて、もなかなかいえない」
恐るべし神頼みビジネスなのである。
毎年、お正月になると神様がいちばん怖いのだと思う。