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トラブル多発の敷金が正当に返ってくる?民法改正で原状回復のルールが明確に

そなえる 白浜 仁子

トラブル多発の敷金が正当に返ってくる?民法改正で原状回復のルールが明確に

【画像出典元】「iStock.com/JackF」

賃貸の契約時に支払う敷金。本来は退去時にかかった費用が差し引かれ、残りが返ってきますが、この敷金から引かれる費用について借り主と貸し主の間でトラブルとなるケースがよくあります。こういった背景を踏まえて2020年4月から民法が改正され、敷金の取り扱いが明確になりました。既に賃貸契約をしている人、これから検討する人は知っておくと安心です。

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そもそも敷金ってどういうもの?

ワンルームの部屋
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敷金とは、賃貸契約を結ぶとき、大家さんに預ける担保金のようなものです。家賃が払えず滞納した場合や、退去時に部屋を原状回復するのにかかる費用に使われます。つまり敷金は家賃の滞納がなく、原状回復のための修理等が必要なければ全額戻ってくるというわけです。

これまでどんなトラブルが起こっていたの?

敷金から差し引かれるのが家賃の滞納分なら明確ですが、トラブルになるのは「部屋の原状回復はどの程度必要なのか」という点です。独立行政法人国民生活センターへの相談件数は減少傾向ではあるものの2018年度には1万2492件もありました。

たとえば、テレビの後ろの壁紙が電気焼けで黒ずんでしまった場合は壁紙を張り替えるべきか?家具の重みで床にへこみができた場合はどうなのか?畳替えの費用は?家具を移動したときにできた柱のキズは?などあげるとキリがありません。

国民生活センターのHP(2020年3月12日現在)にも最近の相談事例が紹介されています。

「十数年住んだ賃貸アパートを退去したが、大家からの原状回復費用請求が高額である。国交省の原状回復ガイドラインを調べて反論したが、大家は取り合わない。どうしたらよいか」

「賃貸マンションを解約したら、ペット特約を根拠に原状回復費用を過剰に請求された。納得できない」

今回の改正では、敷金について何がどう変わった?

これらは、敷金のルールがあいまいなために起こるトラブルでもあり、今回の民法改正で明確に定義されるようになりました。以下は、改正にともない総務省が作成した賃貸借契約に関するパンフレットの内容です。ここには、原状回復の要否について、通常損耗、経年変化に当たる場合は原状回復の義務がないことが記されており、以下のような事例があげられています。

〈2020年4月に改正される賃貸借契約に関するルール〉

1. 【通常損耗、経年変化に当たる例】
・家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
・テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
・地震で破損したガラス
・鍵の取り替え(破損、鍵紛失のない場合)

2.【通常損耗、経年劣化に当たらない例】
・引っ越し作業で生じたひっかきキズ
・日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備等の毀損
・タバコのヤニ・臭い
・飼育ペットによる柱当のキズ・臭い

賃貸契約に関するルールの見直し(P4)
http://www.moj.go.jp/content/001289628.pdf

1のように普通に生活して自然にできたキズやへこみ、電気ヤケによる壁の黒ずみなどは原状回復の必要はありません。また、鍵の取り替えも破損や紛失をしたのではなく賃貸契約の解消によって生じるものであれば、特に負担する必要はないわけです。ということは、畳替えも通常使用していて摩耗した程度なら負担する必要はなさそうですね。

一方で、原状回復が必要なのは、2のように家具の移動でできたキズや猫が柱で爪とぎをしてしまったときのキズ、タバコの煙で壁紙が黄ばんでしまったとき、備え付けのエアコンに強い衝撃を与えて壊してしまったとき、など故意過失が見受けられる場合です。

今住んでいる賃貸物件には適用されない?

この法律は2020年4月から施行されるため、それ以前の契約には適用されません。ただし、施行後に契約更新の合意がされる場合は新しい民法が適用されます。もし施行前に更新の合意がなされた場合は、改正後の規定は適用されないので気をつけましょう。

知っておきたい、原状回復のガイドライン

悩む女性
【画像出典元】「iStock.com/fotostorm」

そうなると旧契約のままの人は不安に感じると思いますが、安心してください。これまでも、敷金や原状回復についてのトラブルが起こった際は、過去の判例や政府が示す「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を基に判断されてきました。ガイドラインには以下のように記されています。

原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

つまり、原状回復は借りた当時の状態に戻すことではなく、普通に生活をしていて自然に起こった損耗などは借り主が負担する必要はないわけです。明文化される前から、敷金返還のルールは基本的に同じですね。

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まとめ

今回は、賃貸借契約をする場合の敷金と原状回復についてお伝えしました。今後は法律で守られることになり、より安心して住宅が借りられるようになります。いずれにしても大切なのは、契約内容をしっかりと理解すること。専門用語でもあり分かりづらい部分もありますが、不動産会社の担当に確認しながら契約を進めましょう。既に契約を済ませた人は、改めて契約書を読み返し、疑問点を確認しておくとよいでしょう。