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シビアなフリーランス業界で生き残るには?チーム化する手があった!

ふやす 中新 大地

シビアなフリーランス業界で生き残るには?チーム化する手があった!

【画像出典元】「shutterstock.com/Viktoria Kurpas」

こんにちは、ライター/ランサーズ新しい働き方LABコミュニティマネージャーの中新大地です。

私は現在“フリーランス”として働いているのですが、皆さんはこの言葉にどんなイメージを持っていますか?
「自由で気持ち良く働けるのがフリーランス」というイメージを持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

フリーランスは、受ける仕事を選ぶことができたり、働く時間を臨機応変に調整できたりと、自分の仕事のスタイルをコントロールしやすい働き方です。
これだけ聞くと、会社員よりも伸び伸びと働けるような印象を受けるかもしれませんね。

しかし、その自由の裏には、自由であるが故のプレッシャーがあり、フリーランスで働く人は皆、多かれ少なかれ独自のマーケティングを行い、生き残り戦略を実行しています。また、横のつながりがなければ、新しい価値観やスキルを身に着けることも難しいです。
今回はそんな生き残り戦略のなかでも、フリーランスにおける“チーム化”の動きをご紹介いたします。

自由だけどシビアなフリーランス

仕事をする男性
【画像出典元】「stock.adobe.com/BullRun」

冒頭でもお伝えした通り、フリーランスには“自由”というイメージがつきがちです。
しかし、フリーランスである私や周囲の声を集めて表現するなら、フリーランスは自由というより、「選択を柔軟に変えられる働き方」という方が適切なように思います。裏を返せば選択が結果に直結するということであり、ひとりひとりが自分の選択に喜びも悩みもする働き方といえるのです。

クラウドソーシングサービスのランサーズ社の調査によれば、個人事業主だけでなく副業・複業実践者などを含めた、広義のフリーランス人口は2015年には913万人(全人口の14%)で、2020年には1034万人(全人口の15%)になったというデータが出ています。※調査期間は同年2月4日~6日
(参考URL:「ランサーズフリーランス実態調査(2020年度)」詳細版を公開いたします。https://www.lancers.co.jp/news/info/19242/

このようにフリーランスへの注目が集まるなか、一部のフリーランスはシビアな現実を受け止めています。フリーランスが増えることで仕事の奪い合いになったり、大企業の会社員として、ネームバリューもスキルも持つ複業実践者が流れてきたりしていることで、競争が激化しているのです。

すでにフリーランスとして数年以上活動してきた人たちのなかには、「どうすればフリーランスとして生き残ることができるのか」、「どうすれば柔軟に働きつつ収入を上げられるのか」と頭を抱える人が増えています。
そして、その答えが出ずにフリーランスを辞めていく人もいます。

私の周囲でも安定を求めて会社に就職する人、SNS上で頻繁に仕事の話をしていたのに、突然音沙汰がなくなってしまう人、「フリーランスなんてあり得ない働き方だった」と憤慨する人、無理がたたって心や体を病んでしまう人を何度も見てきました。
そのたびに私はフリーランスという働き方の厳しさを再確認するのです。

フリーランスもチーム化することで案件増加、スキルアップにも

困っている女性
【画像出典元】「stock.adobe.com/deagreez」

厳しい現実を受け止めつつも、活動を続けるフリーランスの間でじわじわと始まっている流れが「フリーランスのチーム化」です。この“チーム化”とは、フリーランス同士あるいは副業・複業実践者も含めた複数人が連携して、業務・交流などをともにすることを指します。
フリーランスは生き残りのために、このチーム化を図るケースが増えています。

この項では「何を理由にフリーランスはチーム化するのか、「チーム化の先にどんな目的があるのか」などをご紹介いたします。


1.    仕事のパッケージ化で受注を増やしたい

フリーランスには特定の分野に特化した人材が多くいます。プログラミング、デザイン、ライティング、マーケティング、動画編集…。皆それぞれの道のプロであり、自分の業界に対するスキルや知見を持っています。

しかし、これらの仕事をフリーランスとして獲得する場合は、クライアントから仕事を切り売りしてもらわなくてはなりません。例えばですが、デザイナーは美しいデザインはできても、ライターのように美しいライティングはできないからです。

この例をもう少し詳しく深く掘り下げていきましょう。
クライアントAが自社のホームページをリニューアルしたい時、「ホームページのデザインはデザイナーBに、掲載する文章はライターCに依頼をする必要がある」と考えてください。

この時、クライアントAは発注の手間をできる限り減らしたいので、デザインもライティングも両方できる、デザイナー兼ライターのDを探すことがあります。すると、デザイナーBもライターCも自分の専門分野しか担当できないため、仕事を逃す可能性があるわけです。

しかし、デザイナーBとライターCがお互いの存在を認識していて、業務をともにすることができる「チーム」だとすればどうでしょうか?つまりは“仕事のパッケージ化”です。

この「チーム」に依頼すれば、クライアントAは発注の手間を最小限におさえることができますし、デザイナーBとライターCは仕事を逃す可能性が減ります。
ここにエンジニアやマーケターがチームに追加されていれば、担当できる業務・報酬をさらに増やすことができるでしょう。

2.    より高品質の制作物を納品して評価を高めたい

前項の例で登場したデザイナーBとライターCの例を借りて話を続けましょう。

この2人は独立したフリーランスです。互いの存在は知りませんし、制作物のテイストも知りません。お互いの情報を知るためにはクライアントAを介する必要がありますし、何も知らないまま自分の仕事だけをこなすこともあります。

このような方法で仕事を進めた場合に起こりうるのが、「クライアントに納品された複数の制作物同士の間で、テイストのズレが生じる」という問題です。

これはクライアントとフリーランスとの間での制作方針の食い違いによって起きたズレともいえますが、フリーランス同士の連携がとれていないために起きたズレともいえます。
この結果、クライアントはフリーランスに対するイメージを悪くしてしまったり、フリーランスは頻繁な修正を迫られたりします。仕事にかかわった全員が損をしてしまうケースです。

ですが、最初からデザイナーBもライターCもチームでこの仕事を請けていて、「お互いの制作物のテイストも知っている」、「クライアントから得た情報に対する認識を共有しながら、業務を進めることができる」とすればどうでしょうか?
クライアントには最初から精度の高い制作物を納品することができて、自分たちの評価も高めることができるのではないでしょうか。

フリーランスは評価の積み重ねで仕事を獲得していく働き方です。良い口コミは仕事をしていてお互いに気持ちの良いクライアントと仕事を呼び寄せます。フリーランスがチーム化すれば、業務の効率と評価のどちらも高められるチャンスがあるわけです。

3 フリーランス同士、悩みや知見を共有できる環境で働きたい

すでに述べている通り、フリーランスは個別行動をすることが多い働き方です。
外部との関わりが少ないと、孤独感に苛まれたりストレスを解消しにくくなったりします。その結果、心と体に不調をきたすこともあるでしょう。

しかし、それぞれの専門分野は違っても、同じフリーランスとして仕事だけでなく悩みも共有できる存在がいれば、こうした問題を未然に防ぐこともできます。

私も複数のチームに所属して仕事をしていますが、「仕事で行き詰まりを感じています。お茶をしながらどなたか一緒にお話してくれませんか?」、「〇〇のスキルを磨きたいのですが、どなたか良い講座を教えてもらえませんか?」といったやり取りを行っています。時にはこうしたつながりのなかから、お仕事をいただくこともあります。

私はチームに所属したことで、自身が抱えていた暗い気持ちを解消することができました。最初は「ひとりで全くかまわない」と思っていましたが、フリーランスを続けるにつれて私は自分のキャリアに不安を抱えるようになっていたのです。

できる業務の幅の増やし方、振れ幅のある収入への恐怖、日々抱えるストレスとの向き合い方などは、チームに入ったことで解決の糸口を見つけることができました。個人プレーだった以前とは違い、私には”仲間”と呼べるような人たちがいます。仕事の面でもプライベートの面でも、行き詰まった時には相談をさせていただいています。

また、複数のチームに入るようになった現在では、暗い気持ちを解消するだけでなく、より必要とされる人材になるためのセルフブランディングのほか、お世話になっている周囲の方に提供できる、自分の価値についても考えられるようになりつつあります。
“チームに入ったこと”それは暗いトンネルをひたすら彷徨っていた私にとって、光のさす出口の発見でした。

気になるお金の話とルールづくり

ここまでチーム化するフリーランスについてお話してきましたが、やはり気になるのは“お金の話”ではないでしょうか。

フリーランスのチーム内における報酬の分配ですが、クライアントからの依頼によって発生した報酬は、それぞれの担当業務に応じた金額があらかじめ設定されていることが一般的です。また、チームで仕事を獲得し、クライアントとの窓口として業務全体の指示管理を行う人には、そのディレクション費用として報酬が上乗せされることがあります。

こうしたクライアントからの依頼ではなく、チームで新規事業(各種アプリケーションの提供など)を立ち上げた場合は、その事業によって得た収益や元手金から、それぞれの業務や役職に応じて振り分けるケースが多いようです。
こうなってくると「それはもはや会社なのではないか?」という声も聞こえてきますが、皆同じフリーランスという前提があるため、上下関係に縛られず、それぞれの独立した意見を主張・議論しやすいという特徴があります。

いずれの場合にせよ、チームで仕事をする場合は、仕事がスタートする前に、チーム内でメンバーそれぞれが担当する業務や工数、おおよその費用感を共有しておくこと、仕事を請けるor請けないといった決定をどのように下すのか、どのような工程で仕事を進めていくのかといった“ルール”を作ることが大切です。

また、自分がチームを作る、または入ろうとするときに、そのチームの目的が「お金を稼ぐこと」なのか、「交流」なのかもはっきりさせておくとよいでしょう。

こうしたルールやビジョンの共有ができていないと、チーム内で仕事や金額の分配で衝突が起こったり、チームに入っていることが逆にストレスになったりすることもありますので注意してください。

ちなみに、冒頭でも紹介したランサーズの調査によると、自営業として独立した形をとるフリーランスの平均年収は358万円、すきま時間に副業として取り組むフリーランスの平均年収は63万円となっています。

フリーランスは月ごとの収入の振れ幅があるものです。私もかつては「50万円稼ぐ月もあれば、10万円も稼げない月もある」ということを経験しました。これでは計画的なお金の運用はできませんし、「明日はどうなるかわからない」という不安が常につきまといます。
ですが、チーム化することで、ある程度の仕事量を確保できれば、こうした振れ幅は小さくすることができますし、精神衛生を保つこともできます。

チーム探しのサービス・ツールも

手と手を重ねる人々
【画像出典元】「stock.adobe.com/djile」

他のフリーランスとチームになりたい時は、オフラインとオンラインの両方から情報を収集することをおすすめします。

オフラインでは、過去に取引をした人や知人友人を介して、フリーランスとして自分と同じような課題を持つ人を探してみましょう。そういった人に出会うことができれば、お互いの得意分野を共有することで、課題の解決方法として「チームになる」という選択に至るかもしれません。

オンラインであればSNS上の発信やコミュニティ内での交流などから、すでにチームになりたいと表明している人とつながることができるでしょう。そこから話を進めてみて、お互いの目的やスキルが合うかどうかを総合的に判断しましょう。

また、NTTコミュニケーションズ株式会社は2020年8月11日より「「NeWork(ニュワーク)」という新規サービスの事前登録受付を開始しました。このサービスはリモートワークにおけるコミュニケーションを円滑にすると期待されています。

話しかけたい相手を簡単に選べるチャット・通話機能やAI議事録の作成機能などを備えており、まるで同じオフィスで仕事をしているような環境を作れるようです。チーム化を後押しするような新しいサービスも次々に生まれています。こういったサービス・ツールも上手に使っていきましょう。
(参考URL:リモートワークにおけるコミュニケーション不足を解決するオンラインワークスペース「NeWork™」の提供を開始https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2020/0811.html

チーム化でフリーランスの活路を見出す今

フリーランスがチーム化していく流れは、今後も続いていくと思われます。ある人はより多くの仕事を得るために、ある人は交流を行い気持ち良く働くために、チームの一員になるという選択を取っていくでしょう。

多くの人たちがフリーランスとして生き残るための活路をチームに求め、本当に入る意味があるのかどうか、どういった姿勢で関わっていくのが最適なのかを探っている段階が今です。

チームに入ることで活きるフリーランスもいれば、個人で働く方が活きるフリーランスもいるでしょう。
ですが、「フリーランスとして独りで働くのはもうイヤだ」と思った時、その受け皿としてチームに入るという選択肢があることは、悪い話ではないはずです。

「このままフリーランスを続けていくことに”行き詰まり”を感じている」、「これからフリーランスになりたいけれど、支えとなるような”居場所”を常に持っておきたい」という場合には、今回ご紹介した「チームに入ること」が救いになるかもしれません。
少しでも興味がある方は、まずは情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。

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