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「冬のボーナスカット」逆境を生き抜く家計の見直し術をお金のプロが指南

ためる 中村 賢司

「冬のボーナスカット」逆境を生き抜く家計の見直し術をお金のプロが指南

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新型コロナウイルスの影響による経済の悪化が長期化することで、収入が減少する世帯は増加の一途を辿っています。すでに2020年の夏のボーナスでは、前年比9%減となっており、冬のボーナスにはさらに厳しい状況になると見られています。

こうした状況の中ボーナスを想定して予定を組んでいた場合には、家計の見直しが必要。今回は、コロナ禍の長期化、深刻化を見据えた家計の見直し術をファイナンシャルプランナーの視点からお伝えいたします。

夏のボーナス、2019年と2020年を比較

一般社団法人日本経済団体連合会によると、大手企業業種別の2020年夏季賞与・一時金の妥結結果は下表の通りです。


製造業より非製造業の方が新型コロナの影響を受けていることが分かります。さらに業種別に見ると以下の通りとなっています。

※(一社)日本経済団体連合会「2020年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結結果」

また、厚生労働省が毎月発表している「毎月勤労統計調査」の最新版「令和2年夏季賞与の結果」によると、事業所規模5人以上の事業所における令和2年夏季賞与の支給状況は下表の通りです。

※厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和2年夏季賞与の結果」

ニューノーマル時代、2021年以降の日本経済はどうなるのか

2020年は、新型コロナの影響により戦後最悪のマイナス成長となることは確実です。緊急事態宣言後、新型コロナは収束に向かうと見られ、政府は2020年10月からGoToキャンペーンなどを実施して経済を活性化させようとしました。

その結果、企業業績は4~6月期の大幅な落ち込みから、7~9月期の落ち込み幅が縮小し業績も改善傾向にあります。

東証1部の3月期決算企業1331社のうち1031社を対象とした四半期別の売上高は、4~6月期前年同期比▲20%から7~9月期同▲11%と改善、営業利益についても同▲64%から同▲26%に改善しています。

この原稿を書いている11月現在、経済活動は戻りつつありますが、また感染者が増え始め第3波の懸念も出てきました。ワクチンが開発されればすぐに元に戻るのではないかと多くの方が考えていますが、大正時代のスペイン風邪の時は景気が回復するのに3年ぐらいかかったと言います。

今回の新型コロナウイルスの場合も、景気回復までスぺイン風邪の時と同じくらいの期間を要する可能性があります。2021年以降も今と変わらない状態が続くことが予想されますので、景気回復までにはまだまだ我慢の時期と言えるでしょう。

2020年の冬のボーナス支給状況は

通帳を見て悩む夫婦
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前項で見た2020年の夏のボーナスは、昨年度の業績を反映した支給額となっている企業が多いので、そこまで大きな落ち込みはありませんでした。しかし、4~6月は企業業績が大幅に落ち込み、さらに改善したとはいえ7~9月期も前年比ではマイナスの状況が続いています。

そのような背景から、全日空は冬のボーナスの全面カットを提案し、JR西日本はおよそ4割減額(2.69カ月分→1.5カ月分)、国家公務員は今年度10年ぶりの減額(4.5カ月→4.45カ月)となっています。

今年の冬のボーナスは、2020年度上半期の業績を反映させるだけではなく、今後のさらなる経済活動の低迷による企業業績悪化を考えると、どこの企業も軒並み減額、最悪の場合は支給停止となることもありえるでしょう。

FPが伝えたい「ウィズコロナ時代を生き抜く」家計見直し①ボーナス依存度を下げる

こんな時代だからこそ家計を見直す時期だと私は考えます。その第一歩として、まずボーナス依存度を下げることです。

例えば住宅ローン、毎月の支払いに加えボーナス併用払いにしている方が多くいらっしゃいます。今のうちに毎月均等払いへ支払い方法を変更するよう金融機関に交渉するか、もしくは今の低金利を活かし他の金融機関に借り換えをするなど、住宅ローンの返済計画を見直すことが必要になります。

住宅ローンの借り換えは、年内が勝負です。その理由は、今年ボーナスカットや給与ダウンの影響により年収が大幅に下がる方が多いと予想されます。年内に住宅ローンを借り換える場合は、昨年の年収に基づいた源泉徴収票をもとに金融機関は審査しますが、年が明けて翌年に借り換えを行おうとすると、今年の源泉徴収票を見られます。万一、年収が下がっていれば希望する金額を借り入れることが難しくなるかもしれません。

また、毎月の給料でやりくりしていて収支がマイナスというご家庭は、その多くをボーナスで調整して収支をトントンにしています。しかし、その家計の流れをこの機会に見直し、毎月の収入だけでやりくりできるように改善していきましょう。今後ボーナスは無いものと考えて家計をやりくりするほうが良いかもしれません。

FPが伝えたい「ウィズコロナ時代を生き抜く」家計見直し②国や自治体の制度を知る

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新型コロナウイルスの影響で仕事を失ったり、給料が出なかったり、収入がダウンした方のために国はさまざまな支援策を準備しました。国民全員に一律10万円を支給した特別定額給付金、売り上げが下がった企業や個人事業主にそれぞれ200万円、100万円を支給する持続化給付金などです。

その他にも、収入が下がった家計を支援してくれる制度があります。住居確保給付金、ひとり親世帯臨時特別給付金、学生支援緊急給付金、個人向け緊急小口資金の貸し付けなど、これらの制度を詳しく知っておくことは万一の時役に立ちます。

住居確保給付金

離職・廃業から2年以内、またはやむを得ない休業などで失業の場合と同程度に収入が減った人を対象とし、契約者に代わって自治体から賃貸人(賃貸物件を貸す側)や、不動産媒介事業者へ家賃が支払われます。厚労省によると4~8月で支給決定件数は9万6099件、リーマンショック後の2010年度の約2.6倍となっているそうです。

〈支給期間〉
原則3カ月の家賃(延長は2回まで最大9カ月間)
※支給額はお住まいの市区町村および世帯の人数によって異なります。
支給期限:通年
〈対象者〉
次のすべてに当てはまる方
・主たる生計維持者が離職・廃業後2年以内である場合、もしくは、個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合
・直近の月の世帯収入合計額が、市町村民税の均等割が非課税となる額の12分の1と、家賃(ただし上限あり)の合計額を超えていないこと
・現在の世帯の預貯金合計額が各市区町村で定める額を超えていないこと
・誠実かつ熱心に求職活動を行うこと
〈問い合わせ〉
最寄りの自立相談支援機関

ひとり親世帯臨時特別給付金

児童扶養手当の受給水準にあるひとり親世帯を対象とした、給付金です。

〈基本給付〉
児童扶養手当を受給しているひとり親世帯等の方への給付
・1世帯:5万円
・第2子以降ひとりあたり:3万円
〈追加給付〉
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて家計が急変し、収入が減少している方への給付
・1世帯:5万円
〈対象者〉
1.令和2年6月分の児童扶養手当の支給を受けている方
2.公的年金給付等(遺族年金、障害年金、老齢年金、労災年金、遺族補償など)を受給しており、令和2年6月分の児童扶養手当の支給が全額停止される方
3.新型コロナウイルス感染症の影響を受けて家計が急変するなど、収入が児童扶養手当を受給している方と同じ水準となっている方
〈問い合わせ〉
「ひとり親世帯臨時特別給付金」コールセンター:0120-400-903

学生支援緊急給付金

アルバイト収入が大幅に減って大学などでの修学継続が難しくなった学生に対する給付金です。

〈給付額〉
・住民税非課税世帯の学生:20万円
・それ以外の学生:10万円
〈対象者〉
次の要件を満たしたうえで、在籍する学校が、経済的理由により修学の継続が困難であると認める学生
1.家庭から自立してアルバイト収入で学費を賄っている
2.新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、収入が大幅に減少している
3.既存の修学支援制度(民間等による支援制度も含む)を利用していること、または利用申請を行う予定であること
〈問い合わせ〉
在学する学校にお問い合わせください。

個人向け緊急小口資金等の特例(緊急小口資金)

休業などで収入が減少し、生計維持のために資金が必要な世帯へ行う貸付制度です。

〈貸付上限〉10万円以内
※次のいずれかに当てはまる世帯は、貸付上限額が20万円以内となります。
・世帯員の中に新型コロナウイルス感染症の罹患者等がいる時
・世帯員に要介護者がいる時
・世帯員が4人以上いる時
・世帯員に新型コロナウイルス感染症拡大防止策として、臨時休業した学校等に通う子の世話を行うことが必要となった労働者がいる時
・世帯員に風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれのある、小学校等に通う子の世話を行うことが必要となった労働者がいる時
・上記以外で休業等による収入の減少等で生活費用の貸付が必要な時
〈据置期間〉1年以内
〈償還期限〉2年以内
〈貸付利子〉無利子
〈問い合わせ〉お住まいの市区町村の社会福祉協議会

個人向け緊急小口資金等の特例(総合支援資金(生活支援費))

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、収入の減少や失業等により生活に困窮し、日常生活の維持が困難になっている世帯へ行う貸付制度です。
〈貸付上限〉
・2人以上:月20万円以内
・単身:月15万円以内
〈貸付期間〉原則3カ月以内
〈据置期間〉1年以内
〈償還期限〉10年以内
〈貸付利子〉無利子(保証人不要)
〈問い合わせ〉お住まいの市区町村の社会福祉協議会

FPが伝えたい「ウィズコロナ時代を生き抜く」家計見直し③固定費の見直し

家計見直しの基本は、固定費の削減を行うことです。毎月の食費などを少しでも節約しようとやりくりするのはストレスもかかり大変なことです。

そこで毎月引き落としがかかる携帯電話等の通信費、生命保険等の保険料、ガスや電気の光熱費等の固定費を見直して、少しでも減額することができれば、毎月のやりくりはとても楽になります。

これを機に、携帯電話は格安スマホなどの安いキャリアへ変更し、生命保険は無駄なものは解約や減額をする、電気やガスも今は自由化となり価格競争があるので新電力や新ガス会社に変更するなど、見直すことの手間を惜しまず固定費削減に着手しましょう。

まとめ

今まで見てきたように、支出を下げることはとても大切です。その一方で収入を上げることも考えてください。

最近では副業を認めてくれる会社も増えてきました。ただお金のためにだけ副業やアルバイトをするのではなく、自身のキャリアアップのためや、定年後のセカンドキャリアのために新しいことを始めることは今後必要になってくるでしょう。

ひとつの企業で定年まで働き続けるという時代ではなくなってきました。今の仕事のプラスになるような副業や、全く違う業界で仕事をすることは、今の仕事にもきっと活かされるはずです。

そうして家計の収入が増えれば、結果的にボーナスカットにも備えることができます。ウィズコロナの時代を生き抜くために、今こそ家計管理について考えてみましょう。
 

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