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20代学生「親兄弟抱え、少ない収入で家計ひっ迫、それでも資産運用すべき?」

FPにききたいお金のこと 権藤 知弘

20代学生「親兄弟抱え、少ない収入で家計ひっ迫、それでも資産運用すべき?」

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20代女性社会人学生Sさんの相談

現在借り入れができない+両親が高齢で収入が少ない状況です。奨学金の給付型と利子ありと利子無しの最高額を借りながら生活しています。自分の収入はバイト代と奨学金だけなのですが、下に弟たちがいて家計が苦しいです。こんな状況でも、バイト代の一部を株やNISAに運用して増やした方が良いでしょうか?


Sさん、いろいろなご苦労をされていらっしゃいますね。今回のご相談も切実なものであろうかと思います。ご相談の内容の詳細がハッキリと分からないところもありますが、解決策を考えていきましょう。

まずは現在の世帯の収入と支出を把握しましょう

ご本人の収入が、奨学金の給付型と返済が必要な2種類の奨学金を受給+アルバイト収入ということなので、ご自身の収入額を比較的把握をしやすい状況にあると思います。弟さん達の進路に対してSさんが援助をされるのかは不明ですが、ご両親の収入や生活費に関しても合わせて確認すると良いでしょう。お金の出入りがどのようになっているか?をまずは把握しましょう。

今後10年間、本人と家族にどのようなお金が必要かを試算してみましょう

家計がひっ迫して助けを求める女性
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Sさんご自身とご家族で今後10年間にどのようなお金が必要になるかを書き出してみましょう。家賃や住宅ローン・奨学金の返済・弟さんの学費・生活費など大きな項目で良いので1年ごとに並べて10年間の時間軸で見てみましょう。

さらに見込みで良いので今後10年間の収入と合わせてみましょう。そうすることによってお金の出入りを長期的に見ることができます。このことで大まかに「いくら必要なのか?」ということが分かりますので、いたずらに不安になることを避けることができるでしょう。表を作ることは正直なところ、とても怖いことです。ただ現状把握とこの先の見込みを出さないとスタートできません。

公的な支援策や税金に関してはどうでしょうか?

何か使える公的な支援策や税金の制度がないかを調べてみましょう。

ご両親に関して

まずは、お住まいの自治体の役所や社会福祉協議会にご相談されることをおすすめします。自治体には困窮している家庭に対する援助などを案内する窓口が設置されており、各種の公的な支援策を紹介してくれます。

住民税に関してですが、勤務先から源泉徴収されている場合は難しいと思われますが、一度自治体に相談することをおすすめします。医療面に関しては、ご両親が会社の健康保険に加入していれば良いのですが、もし年金受給者で国民健康保険であるということであれば、減額や減免の対象になるかどうか、こちらも相談してみてください。

Sさんご本人に関して

アルバイト先で年末調整をする際に「勤労学生」として申告しましょう。そうすることで103万円の壁がなくなり、年収130万円までは所得税がかかりません。27万円の控除が増えることでSさん本人の税金が1万3500円安くなる可能性があります。(税率5%と仮定した場合)

もし、一年の途中で退職して年末調整を受けていない、二カ所でアルバイトをしているなどであれば、確定申告することで払いすぎた税金が還付される可能性があります。

続いて年金です。日本国内に住むすべての人は、20歳になった時から国民年金の被保険者となり、保険料の納付が義務づけられていますが、学生については申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられています。もしこの制度を活用されていなければ、お近くの年金事務所に相談してください。

いよいよ本題「こんな状況でも、バイト代の一部を株やNISAに運用して増やした方が良いか?」

貯金
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結論としては「今はその時期ではない」というのが率直な意見です。運用というのは増える可能性を期待してスタートさせるものです。ただし残念ながら確実に利益が出るという金融商品はありません。確実性であれば国が発行している個人向け国債などがありますが、2021年2月現在の10年満期の個人向け国債の金利は年率0.05%であり、いわゆる運用の利益は期待できません。(国債1万円に対して、1年間に5円の利息がつくことを表わしています)

株式投資で一攫千金というのも夢があって良いのですが、なかなか難しいのが実情です。ネット上や書店などでは「少ない資金で大儲けした」等の情報があふれていて、とても魅力的に見えるかもしれません。しかしながら逆説的な考えになりますが、レアケースであるからコンテンツになっているという見方もできます。

長期的視点での運用に関してはスタートさせても良いと思いますが、短期間で利益を出すという運用はプロでも難しいことであるということをご理解いただけたらと思います。まずは日々の生活の中で、少しずつで良いので貯金をしていくことが優先でしょう。

また、近年は大学生や若年層の方で「このもうかる情報は内緒なんだけど、あなたは友達なので特別に教えてあげるね。」等の声をかけられ、詐欺行為など金融事件の被害に遭う、場合によっては加害者になってしまうようなニュースも見受けられます。ご注意ください。

まとめ

Sさんのご事情はシリアスなものであると思います。まずは収入と支出の全体像を把握し、受給可能な支援策や公的制度の活用を進めましょう。また奨学金に関しても将来的に返済が必要なお金です。既に行っておられるとは思いますが、日々の生活の中で少しずつでも余裕資金を作る仕組みにチャレンジしてみてください。

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