固定で試算し変動で借りる?住宅ローン計画のとっかかりを知りたい!/20代相談
目次
20代男性Jさんの相談
来年住宅ローンを組む予定です。頭金を払うべきか、変動金利・固定金利どちらにすべきか悩んでいるのですが、どちらがいいのでしょうか?参考にすべき指標やそれぞれのメリット・デメリットを教えていただきたいです。
お金を借りるときの基本
夢のマイホーム、おめでとうございます。
マイホーム計画の中で大きな割合を占める住宅ローン選び、Jさんにとってどんな住宅ローンが良いのか一緒に考えてみましょう。
住宅ローンに限りませんが、金融機関から融資を受ける際は下記の点に注目しましょう。
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借り入れ金額
返済期間・金利が同条件であれば、借り入れ金額が多いほうが総返済金額は多い -
返済期間
借り入れ金額・金利が同条件であれば、返済期間が長いほうが総返済金額は多い -
金利
借り入れ金額・返済期間が同条件であれば、金利が高いほうが総返済金額は多い
住宅ローンの他にも自家用車をローン返済する場合や、クレジットカードで分割払いをする場合なども、上の3つの組み合わせで総返済金額や毎月の返済金額が変わってきます。
住宅購入時の頭金はいくら用意する?
頭金+住宅ローンの借り入れできる金額=購入できる不動産の最大金額です。
頭金の基本的な考え方は下記のとおりです。
- 金利が高い時期には頭金を多めに用意、できるだけ借り入れ金額を少なくする
- 金利が低い時期には、頭金は少なめでOK、借り入れ金額を多めにする
以前は物件価格の10%~20%程度の頭金が準備できないと住宅ローンを申し込めないといわれていました。しかし現在では金融機関の姿勢も変わってきており、頭金なし・全額をフルローンという契約で住宅を購入するケースも増えてきました。特に今は低金利の状況なので、頭金を貯める時間がもったいないともいわれます。
しかし、「借りられる金額」と「返せる金額」は異なります。特に賃貸物件にお住まいであれば、金融機関からOKが出ても、毎月の返済金額が今の家賃よりも高い場合、本当にその金額を長期間に渡って返済できるかどうかを冷静に考えましょう。
また住宅購入時には、仲介業者や販売会社への手数料や引っ越し費用・家具や家電の買い替えなど、住宅ローンに組みこめない費用も高額です。費用はおおむね物件価格の5%~10%程度になるケースが多く、これらを考えると頭金とは関係なく手元にはなるべくキャッシュを準備する必要があります。
このことから筆者は頭金に関して、下記のように考えます。
- 物件価格の10%程度の現金を準備する
- 生活用の予備資金として最低半年分は別口座で準備しておく
- それ以上の現金が用意できるのであれば、物件価格の10%程度をめどに頭金として使う
- 住宅ローン控除の枠を最大限に活用するため頭金を少なくするという考え方もある
固定金利の特徴と関連する指標
固定金利はその名の通り「返済開始から最終返済まで当初の金利が固定されている」返済方法です。代表的なものとしてフラット35があげられ、途中で金利が変動するリスクがなく返済計画を立てやすいことが大きな特徴です。
ただし、後述する変動金利と比較すると返済開始時の金利が高く、返済する金額も変動金利より高くなります。この固定金利は「新発10年物国債利回り」と連動しています。
国が資金を調達するために発行する10年満期の「10年物国債」という金融商品があります。満期までの間は保有者に利息金を支払い、満期が来ると額面金額を払い戻す金融商品です。この10年物国債の金利は長期金利と呼ばれ、金融機関が1年以上のお金を貸し出す際に適用する金利です。
「長期金利は経済の基礎体温」ともいわれており、景気が悪くなれば金利が低くなり、景気が良くなれば高くなるという傾向があります。住宅ローンの固定金利は、この長期金利に連動して上下します。
変動金利の特徴と関連する指標
変動金利は「適応金利が半年ごとに見直され、返済金額が変動する可能性がある」「途中で金利が上下する可能性があり、返済総額は最後まで分からない」という特徴があります。
返済途中で金利が変動する可能性はありますが、固定金利と比較すると返済開始時の金利は非常に低いです。大手都市銀行やインターネット銀行などでは0.5%前後の金利を採用しているケースが多く、返済期間35年の固定金利が1.4%前後であることを考えると返済金額に大きな違いがあります。(2021年3月現在)
この低金利が長く続けば毎月の返済金額や総返済金額も抑えられることがメリットですが、デメリットも「金利が変動」であることです。変動金利は日本銀行(日銀)の政策によって調整される短期金利の影響を受けます。
日銀が金融緩和をして市場へ積極的に資金を供給している場合の短期金利は低く、景気が過熱している・物価の急騰が経済に悪影響を及ぼす可能性があるなどと日銀が判断し金融引き締めに動くときは短期金利が上昇します。
このことから変動金利は政策金利と呼ばれ、短期的な景気の良し悪しに左右される要素が大きいといえます。
なお変動金利を採用した住宅ローンには1.25倍ルールが定められています。1.25倍ルールとは金利が急激に上昇した場合でも、毎月のローン返済額はそれまでの返済額の1.25倍を上限として、それ以上の返済額にしてはいけないというルールのことです。注意点として毎月の返済額は1.25倍までに抑えられますが、金利や利息額自体は本来の金利で計算されるので残額の減り方は緩やかになり、元金部分の返済がほとんど進まない可能性も考えられることです。
固定金利と変動金利、どちらを選ぶべき?
総返済額を少なくすることを重視するのか、途中で返済金額が変わらないことを重視するのか、返済期間をできるだけ短くしたい・・・など、住宅ローン選びに関していえば、重視するポイントによって変わってくるため「正解は人それぞれ」です。
特にJさんの場合は年齢も若くライフスタイルが大きく変わる時期であり、家族の働き方やライフプランを考えて選択してください。次項のチェックポイントも一つの参考にしてもらえればと思います。
住宅ローンを組む際の考え方
筆者は住宅ローンに関する基本的なスタンスとして下記の点を重視しています。
① 毎月の返済金額を試算するときは、フラット35の固定金利で返済して家計に問題はないかを確認する
② 共働きの家庭なら、奥さんが産休・育休で給与が減るなど収入が変化するタイミングでも大丈夫かどうかを考える
③ 低金利である変動金利で試算をしても毎月の返済が厳しい場合は、そもそも全体の予算の見直しが必要
④ 固定金利で試算して問題なさそうであれば変動金利で借りる。ただし家計のやりくりの中では固定金利で返済しているつもりで固定金利と変動金利の差額は別にプールしておく。プールできた資金は繰り上げ返済や修繕費などに回す。
(例:変動金利で7万円/月、固定金利で8万円/月であれば差額1万円をプールする)
⑤ 返済期間はできるだけ長く設定する。返済期間が短い方が総返済金額は少なくなるが、環境や収入の急変により毎月の返済が厳しくなって返済期間の延長を望んでも金融機関は受付してくれない。後から繰り上げして短くすることは可能。
住宅ローンの返済は長期間に渡ります。「ちょっと無理をすれば、ちょっと頑張れば」という内容を、本当に35年間継続できるか?を考えましょう。不明な点は金融機関に確認し、納得した上でマイホームのプランを進めてくださいね。
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