フリーランスの老後資金対策どうすれば?【FP家計簿相談】
目次
FPオフィス「フォルテシモ」へ依頼されたお客さまの家計簿を、mymoで診断する【うちの家計簿】。今回はフリーランスで働いており、老後資金をどうやって備えるか迷っている35歳女性、Wさんの家計簿です。
35歳フリーランス女性Wさんの相談内容
フリーランスで毎月収入が安定していません。年収は300万円前後です。実家で生活できる間にできるだけお金を貯めたいと思っています。老後資金を計画的に貯めたくて個人年金保険には加入し、個人年金保険料控除は活用しています。国民年金基金やiDeCoも検討中ですがその他に検討した方がよいものはありますか。
30代Wさんの家計簿は・・・?
手取り17万8050円。今月は手取りの約17%の3万円を貯金しています。そのほか個人年金保険に加入しており保険料は月1万円です。生命保険は貯蓄型のものが多く、65歳で支払いが終わります。
フリーランスの年金は老齢基礎年金のみ
フリーランスの場合、老後資金の基本となる公的年金は国民年金から支払われる老齢基礎年金のみとなります。ただWさんは22歳から30歳まで8年間会社員として厚生年金に加入されていたのでその分に対しては老齢厚生年金が上乗せされることになります。
老齢基礎年金のみの受給額で考えた場合、40年間の加入期間があった場合は令和3年度の年金額で考えると年額78万900円、月額6万5075円です。ただし実際には6万5075円がすべて使えるわけではなく、国民健康保険料と介護保険料を支払った残りが使えることになります。
会社員の場合、国民年金以外に厚生年金にも加入しており、老齢基礎年金以外に老齢厚生年金も受け取ることができます。フリーランスの方は会社員よりも自助努力が必要となりますので、老後のために計画的に老後資金を準備することが求められます。
フリーランスの年金を上乗せする方法「小規模企業共済」
個人年金保険、国民年金基金、iDeCoのほかにフリーランスの方が使える制度として「小規模企業共済」があります。小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための制度です。
国の機関である、中小企業基盤整備機構が運営する制度で、フリーランスの仕事を辞めるとき、退職時の生活資金などのために積み立てる制度です。
個人年金保険は一旦加入すると、契約内容によっては保険料の増額・減額は自由にできませんが、「小規模企業共済」は月額1000円から7万円まで500円単位で自由に設定ができ、加入後の増額・減額も可能です。
Wさんのようにフリーランスの場合、月々の収入が変動することも多いので掛け金が収入に合わせて調整できるのも大きな魅力といえます。
※小規模企業共済とは
「小規模企業共済」は全額が所得控除の対象
小規模企業共済は掛け金が全額所得控除となるため、高い節税の効果があります。最大月7万円まで所得控除の対象になります。
例えば毎月の貯金額3万円のうち1万5000円を小規模企業共済で35歳から65歳まで積み立てていき、Wさんの課税所得金額が320万円だとすると年間の節税額が3万6400円となります。
※小規模企業共済加入シミュレーションより
※平成28年4月1日現在の法令に基づいて試算されます
※加入後の節税額は、掛け金を1年間払い込んだ前提で試算されます
※住民税均等割額は自治体によって異なりますが、ここでは5000円で試算されます
※所得税は、復興特別所得税を含めて計算しています
国民年金基金はiDeCoと合計して月6万8000円を上限に加入でき、小規模企業共済は国民年金基金、iDeCoとは別に、月7万円までの掛け金が全額所得控除となります。
所得に応じて健康保険料や住民税なども大きく変わってくるため、所得控除の効果も確認しておくことをおすすめします。
将来のお金の受け取り方
現在Wさんが検討されているiDeCoは、一時金か年金で受取可能です。国民年金基金は一時金での受け取りはできず、年金として終身年金か確定年金で受け取る必要があります。小規模企業共済は一時金または年金で受取可能で、65歳以前でも廃業したときに受け取ることが可能です。
どのようなときにお金を受け取りたいかということを具体的に検討し、自分の働き方にあった制度を上手に活用しましょう。
ライフプランを考える
Wさんは実家で暮らすことを今は希望していらっしゃいますが、今後も実家で生活される場合、ご両親の介護のサポートなどが必要になるかもしれません。ご両親が希望する今後の生活なども伺いながら、Wさんのライフプランを考えていくことが大切です。
ご自宅の築年数によっては、今後リフォーム費用等が必要になることもあります。Wさんお一人でなくご家族で今後のライフプランについて話し合っておくことをおすすめします。
アドバイスを受けたWさんの感想
国民年金基金、iDeCo以外にも控除の対象となる制度があるんですね。それぞれ限度額や受取方法も違うことが分かりました。よく考えて選択しようと思います。自分自身もずっと実家で生活すると決めているわけでもないのですが、現在60代の両親が老後のことをどう考えているのか話したこともなかったので、聞いてみようと思います。
家計簿診断を終えて
自分の働き方、退職時期を自由に決められることはフリーランスの大きな魅力だと思います。自分の仕事を辞める時期を考え、所得控除のメリット等も含め公的年金の受取額を視野に入れ老後資金計画を検討しましょう。
また、今後もご実家で生活することを考えるならば、ご家族全体のライフプランをイメージし、介護サービスが必要になったときにご両親がどのようなご希望を持たれているかなどを今のうちから話し合っておくことをおすすめします。