もらえる年金が増える? 2022年の年金制度改正ポイントとは
2022年4月から年金制度が変わります。ご存じでしたか?
年金制度を簡単におさらい
そもそも年金制度とはどのようなものでしょうか?年金とは毎年継続的に給付されるお金のことをいい、公的な年金と私的な年金があります。
- ①老齢年金→65才から受け取れる老後の生活資金になる年金
- ②障害年金→病気や怪我などで障害を負った場合に受け取れる年金
- ③遺族年金→年金加入者が亡くなった場合、残された遺族が受け取れる年金
【働き方による年金の違い】
- ①国民年金→自営業者や学生が対象になる基礎年金
- ②厚生年金→会社員が対象になる年金。基礎年金に加え、報酬に比例する年金部分がある
年金制度はいくつかの種類に分かれますが、今回の改正は主に老齢年金に関する制度が対象です。
年金制度の改正はいつから?目的は何?
年金制度の改正は2022年4月からの予定です。長く働く高齢者やパート・アルバイトで働いている方の年金を増やすことが今回の改正の大きな目的です。年金を受給開始する時期の選択肢が拡大され、自分に合う働き方や生き方により、今よりも柔軟に受給開始年齢を選ぶことができるようになります。
改正される内容は?
改正される主な内容は以下の通りです。
①受給開始する時期の選択肢が拡大
年金の受給開始年齢が伸びて75才からの受給ができるようになり、早めに年金の受け取りを開始する場合の年金の削減率が変わります。
現在の年金受け取り開始年齢は65才が原則で、60才~64才から受け取りを始める「繰り上げ受給」と、66才~70才の期間に受け取りを開始する「繰下げ受給」という仕組みになっています。
65才よりも早く受け取る繰り上げ受給では年金額が削減されますが、2022年の制度改正では年金の削減率が現在の0.5%から0.4%に変更されます。よって早めに受け取る際の年金の減額がこれまでよりも小さくなります。
また繰下げ受給を選ぶと1カ月単位で受け取り開始時期を遅らせることができ、年金額が1カ月あたり0.7%増えます。今回の改正では、繰下げ受給の時期を現在の上限70才から75才まで延長できることになりました。なお、受け取り始めた年金額が基本的には一生涯継続します。
②厚生年金が適用される範囲の拡大
パート・アルバイト勤務者の厚生年金の適用範囲が拡大されます。適用範囲が拡大されることで、扶養の範囲内で働き、厚生年金の対象でなかった人も、事業所の規模により厚生年金や健康保険、いわゆる社会保険の対象になるケースが出てきます。
従業員数が500人を超える企業では2016年10月から既にスタートしている社会保険の適用拡大ですが、2022年10月からは従業員100人超の事業所、2024年10月からは従業員50人超の事業所が段階的に社会保険の適用拡大対象事業所となります。
現在、社会保険に加入せず配偶者の扶養の範囲で働いている人も、要件によっては自分で年金と健康保険の保険料を納める必要が出てきます。社会保険が適用されることで手取り金額が少なくなるという面もありますが、傷病手当金などの保障や産休・育休制度の活用、老後の年金額が増えるなどのメリットがあります。
③在職老齢年金の在り方の見直し
60才以上の老齢厚生年金の受給者を対象に、賃金と年金の合計額が一定金額以上になると年金額が削減される制度があります。現在は60才~64才の対象者が賃金・賞与と年金月額の合計が28万円/月を超えると年金が削減されるようになっていますが、この上限額が28万円/月から47万円/月へと緩和されます。
※現在、在職老齢年金の支給開始年齢が生年月日に応じ65才へ段階的に引き上げられています。従って厚生年金の加入期間がある人全員が60才代前半の老齢厚生年金を受給できるわけではありません。
シニア層の年金が増える?「在職定時年金改正」とは
厚生年金は報酬比例の年金なので、保険料を多く納めることで受け取る年金額がアップします。これまでは、65才以上で働きながら厚生年金保険料を納めているケースでは、厚生年金の年金額は退職するか70才になるまで上乗せされませんでした。
2022年4月の改正では65才以上で厚生年金保険料を納めている方の年金額を毎年10月に改定し、それまで納めた厚生年金保険料を毎年の年金額に反映する制度に変わります。新たに導入されるこの制度を「在職定時改定」と呼びます。この制度が導入されることで、長く働き、保険料を多く納めた効果を早めに受け取ることができます。
給与や年金額が高いと年金がカットされる可能性も
注意する点として老齢在職年金には給与や年金額が高いと年金がカットされる制度があることです。給与・賞与・年金の3つの金額を一定の計算式に当てはめ、その金額が47万円/月を超えると超過金額の2分の1が年金額からカットされます。
また何らかの事情で給与・賞与が下がり上限額の47万円/月を下回るようになったとしても、在職老齢年金を受給し始めてから47万円/月を超えていた期間中にカットされた年金を改めて受け取ることはできません。そのため、せっかく納めた保険料なのにカットされて受け取れないのは嫌だという方は働き方を考える必要がありそうです。
終わりに
年金の保険料を毎月納めても「どうせ将来自分たちは年金を受け取れないし、払っている以上のリターンはない」と思いがちです。しかし老齢年金・障害年金・遺族年金の3つの制度を民間の保険会社で用意しようとすれば、保険料は今の公的保険料よりも高くなる可能性があります。
特に老齢年金は支給がスタートすれば一生涯受け取れる終身年金です。つまり長生きすればするほど恩恵を受けることができ、万が一の時も自分や家族を経済的なリスクから守ってくれます。
2022年4月の改正で特に注目すべきは、受け取り年齢の幅が広がり、繰り上げ受給をする時の削減率も現在のひと月あたり0.5%から0.4%と改善されるという点です。
現在20~30代の人たちが年金を受給するときの制度は、また変わっていることでしょう。少子高齢化が進む中で、年金制度が今よりも良い条件になることは難しく、不足分は自分で準備しなければならないかもしれません。ただ悲観的にはならず、繰り上げ受給・iDeCoの活用・つみたてNISAで運用など、活用できる制度は存分に活用していきましょう。