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ロシア経済の抜け穴封じ・ウクライナ支援…存在感増す仮想通貨

経済とお金のはなし 中新 大地

ロシア経済の抜け穴封じ・ウクライナ支援…存在感増す仮想通貨

【画像出典元】「Yalcin Sonat/Shutterstock.com」

こんにちは、ライター/ランサーズ新しい働き方LABコミュニティマネージャーの中新大地です。

グローバル社会と呼ばれて久しいこの時代に、国家間で大規模な戦争が起こってしまいました。
ウクライナとロシア間のこの戦争は、その兵力差から当初はロシア優勢とみる声もありました。しかし、蓋を開けてみれば、国の力を総動員したウクライナの必死の抵抗、ウクライナへの各国の物質的支援、そしてロシアに対する各国・各企業の経済制裁によって長期化し、世界経済を巻き込む事態へと進んでいます。

苦境に立たされるロシアは、経済制裁の抜け穴として仮想通貨を用いるという声もあります。今回は緊迫するウクライナ情勢と経済制裁、そこに紐づく仮想通貨に関する話題をご紹介します。

進むロシアへの経済制裁、法定通貨ルーブル下落の果てに

現在、ロシアによるウクライナ侵攻を深刻に受け止めた各国政府が、続々と経済制裁を課す事態となっています。
イギリス政府によるロシアの主要銀行や重要企業・人物への資産凍結、日本政府によるロシアの最恵国待遇の撤回、EUなどによるSWIFTからのロシア排除など、続々と制裁内容が議論・発表されています。ほかにもVISAやMastercardが、ロシアでの事業停止に踏み切るなど、企業も政府の制裁にあわせて動いています。

ロシアは世界から孤立する格好に。侵攻を開始した2月24日時点の1ルーブルは1,36円でしたが、アメリカとEUによるロシア産原油輸入禁止が検討された3月7日には0.83円へ下落。その後も1ルーブル約1円という低い数値を推移しています。

ルーブルの下落、ロシア経済への信用失墜によって、ロシア政府も国民も経済活動がままならなくなっていることは事実で、その対抗策として仮想通貨を抜け穴にしようという動きが出てきています。「仮想通貨で外貨を獲得しよう」、「資産を仮想通貨に換えて逃がしておこう」「仮想通貨で物資を調達しよう」というものです。

仮想通貨には元来、誰もが時間や場所にとらわれずアクセスできること、匿名性があることなどの自由主義が掲げられてきました。仮想通貨の存在意義は、政府によって管理されている法定通貨へのアンチテーゼ的要素も含んでいると言えるでしょう。

ロシアはメリットもデメリットも抱える仮想通貨の特性を活用し、自国経済への制裁の効果を最小化し、規制の回避をねらっているのです。

抜け穴封じに動く仮想通貨企業、意識するのは政府やユーザーとの関係性?

様々な仮想通貨とビジネス背景
【画像出典元】「stock.adobe.com/rrice」

仮想通貨によって経済制裁から逃れようとするロシアですが、仮想通貨関連企業は抜け穴封じに動いています。

仮想通貨取引所コインベースは、違法活動を行ったと独自に判断した2万5000件を超えるロシア関連の企業・個人のアドレスをブロック 。ブロックチェーン分析企業のチェイナリシスは、サービスを利用するアドレスが、アメリカやEUなどの経済・貿易禁輸リストに記載されているアドレスかどうかを検知するツールを無料提供 。政府の動きに連動しているようです。

また、仮想通貨取引所クラーケンは、ウクライナのユーザーに対して、1000万ドル(約11.6億円)相当のビットコインを配布することを発表。法定通貨への引換手数料も無料にするほか、ロシアのユーザーが2022年上半期に同取引所に支払った取引手数料の全額を寄付することも発表。クラーケンによる国際的な支援金配布は初めてとのことです。

このように、国際経済に対してきわめて自由主義を掲げていたはずの仮想通貨取引所などが、ロシアへの経済制裁への協力、ウクライナの支援に動いているのはなぜでしょうか?
まずは「世界平和を乱そうとするロシアの行いが純粋に許せない」という人道的な理由が第一にあるでしょう。

そしてその次に、「規制を担う各国政府と良好な関係を築くため」、「すでに抱えているユーザー、潜在顧客の仮想通貨ライト層の人々からの反感を買わないため」といった事情もあるはずです。

仮想通貨はすでに世界経済において、重要な位置を占めるようになりました。業界の成熟度やユーザーの増加に合わせて、政府が規制を行っていくのは当然のことです。今後の仮想通貨事業継続のためには、業界のイメージアップをしていかなければなりません。

混乱続くロシア経済、一般国民への影響はどうなるのか

混乱が続くロシア経済下では、ウクライナ侵攻を指揮する政府のトップ層のみならず、一般のロシア国民の生活にも危機が訪れています。

相次ぐ外資企業の事業停止・撤退によって、「今まで手に入った食料・物資が手に入らない」、「物価が急上昇している」、「カードが決済できず国に帰ることができない」といった報道もあります。

仮想通貨業界もこうした一般国民への影響を憂慮して、当初は慎重な姿勢をとっていましたが、結果として前述したように政府に足並みをそろえています。対象が一般国民に向けられないよう配慮はされていますが、ロシア経済の基盤が揺らいでいる以上、影響は避けられそうにありません。

日本においても、金融庁が取引所に対し、制裁対象者の認可なく仮想通貨取引を禁止することや、モニタリングを強化することを要請しています。
これを受け、自主規制団体である一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は、要請への対応や会員への指導や必要な措置を講ずるとしています 。

望まぬ戦争と望まぬ経済制裁、仮想通貨の存在意義

ビットコイン
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本当はこのような戦争も、このような経済制裁も、誰も望んでいなかったはずです。
しかし、深刻な状態にある今、各国・各企業は事態収拾のために動くしかありません。

奇しくも仮想通貨は、今回の混乱をきっかけに、その存在意義をまたひとつ明確にしたような気がします。かつては個人間のグローバルな送金手段として生まれたはずでしたが、今では一国家の行く末を左右するほどの存在となったのです。

「仮想通貨を経済制裁の抜け穴にする」こととそれを封じる術は、今回のウクライナ情勢を契機に議論が進みました。絶対に避けなくてはなりませんが、今後も同様の事例が発生した際には早急に対応できるでしょう。

クラーケンの取り組みのように、ウクライナへの支援金を仮想通貨で送る動きも起こっています。ウクライナ政府も仮想通貨取引所と連携して、仮想通貨で募金することができるサイトを発表しています。

今回は仮想通貨を規制することでロシアをけん制する取り組みをメインで取り上げましたが、仮想通貨によって救われる人がいるという明るい取り組みがあることにも目を向けたいものです。

そして、この戦争によって命と生活が脅かされる方が少しでも減ることを願うばかりです。

戦争はあってはならないものですが、今後もこうした世界を巻き込むような危機が訪れた際には、今回の経験を踏まえ、仮想通貨をさらに上手に扱うこともできるのではないでしょうか。
私たちひとりひとりも、この問題とどう向き合うべきか。対岸の火事ととらえず、何ができるのか考えていきたいものです。