ビットコインはどこまで上がる?なぜ価格が上がっているの?
監修・ライター
ほんの4年前まで1ビットコイン=10万円を切っていたビットコインが、2021年初頭にはとうとう400万円を突破してしまいました。もし4年前に300万円分のビットコインを購入していれば1億円を超える値を付けていたわけですから、まさに「ビットコイン・ドリーム」とも言える現象が今起きています。
しかし一方で、ビットコインと言えば当時日本最大の取引規模を誇っていたマウントゴックス社が2014年に経営破綻した事件の記憶もまだ新しく、ビットコインに対しては「投機的要素が高く何となくうさん臭い」という世間一般の人が持つイメージが拭えているとは言い難い状況にもあります。
そこで本日は、あらためてビットコインに関する基本的な仕組みと価格の上がるメカニズムについてお話しし、今、仮想通貨の世界の中で何が起こっているのかについて解説してみたいと思います。
そもそもビットコインとは?
そもそも、ビットコインとは何なのでしょうか?まだご存じでない方のために、ビットコイン誕生の歴史とその基本的な仕組みについて簡単に解説していきます。
ビットコインの誕生
ビットコインの歴史は、2008年に「サトシ・ナカモト」と称する人物がネット上で発表した論文から始まります。
ビットコインとはデジタル通貨の一種で、現在世界中で流通しているドルや円といった法定通貨の利便性の悪さや流動性の低さに着目し、デジタル通貨ならではの利便性と汎用性の高さを利用して、より便利な社会を作るためのアイテムとして発表されました。
ビットコインが実際に運用され始めたのは2009年からですが、ビットコインは政府が発行する通貨のようにその価値が保証されているものではないため、当初はゲーム上で得られるコインなどと同様の扱いで、その価値を信じる者はほとんどいませんでした。
ビットコインに価値が生まれる
ビットコインの運用が開始されてから約1年後の2010年5月22日、フロリダ州に住んでいたプログラマーのラズロ・ハニエツ氏が、「ピザ2枚を配達してくれたら1万ビットコインを支払う」という書き込みを掲示板に行いました。
この取引は4日後に成立し、1万ビットコインがピザ2枚(当時で約2,000円の価値)と交換されることとなりました。この瞬間、単なるデータであったビットコインに価値が生まれ、「1万ビットコイン=ピザ2枚=約2,000円」の取引レートが誕生しました。
ちなみに2021年の年始における1ビットコインの価格は400万円を超えています、この時のピザ代をまだ持っていたとしたら、今頃信じられないほどの大金持ちが誕生していたことでしょう。
ビットコインで何ができる?
ビットコインはデジタル通貨のため、まず、一般の通貨のように製造や管理にコストがほとんどかかりません。これが現実に流通している法定通貨とは最も異なる点です。
また、ビットコインは単なるデジタルデータのため、ごく少額の手数料で世界中に送金を瞬時に行うことができます。
さらに、店舗などの決済手段として活用すると、クレジットカードよりもはるかに低い手数料(約1%)で決済することができます。
ビットコインの安全を担保するための取り組み
ビットコインはデジタル通貨ですから、発行枚数を増やすことは簡単にできます。しかしこれを行うとインフレーションが起きてしまうため、ビットコインは発表当初から発行枚数が2,100万枚と決められています。この点は、金本位制に似た性格を持っています。
また、ビットコインによる取引は、そのすべてがデータとして世界中に公表されます。取引履歴はブロックチェーンというシステムを使って管理されているため、「いつ、誰が、誰に、何ビット送ったのか」が完全にガラス張りになっています。
秘匿性に関する問題点
上述のように、ビットコインによる取引はすべてオープン化されています。しかも、その履歴は未来永劫消えることも改ざんされることもないため、「ビットコインはプライバシーがない」とも言われています。
しかし、ブロックチェーンに記載されているビットコインアドレスは単なる英数字による無意味な羅列に過ぎないため、誰が誰に何の目的で送金したのかが分かりにくいという点が問題視されています。
デジタル通貨は取引をデジタル処理するため、どうしても記号や数字を用います。また、セキュリティを高めるため、取引の暗号化も必ず行われます。したがって、このような秘匿性が問題となるのは、デジタル通貨ならではの宿命とも言えます。
ビットコインが上昇する理由
ビットコインは、2009年10月の時点では1ビットコイン=約0.07円といわれていました。これが2021年初頭には400万円を突破するほどに高騰しています。このように急激に価格が上がった理由にはどのような背景があるのでしょうか?
そこでまず、ビットコインなどの仮想通貨の価格が上昇するメカニズムを整理し、その後でビットコインが急騰している背景についてまとめてみたいと思います。
仮想通貨の価格が上昇するメカニズム
ドルや円のような法定通貨とは違い、政府の後ろ盾のない単なる仮想通貨は、どのような場合にその価格が上昇するのでしょうか?
仮想通貨の価格が上昇するおもな理由として、以下の4つを挙げることができます。
- 知名度が上がる
- 仮想通貨の取引所に上場する
- 利便性が高くなり将来需要が高まる
- 経済情勢が不安定になり通貨安が起こる
知名度が上がる
そもそも、仮想通貨それ自体には何の価値もありません。ましてや政府などによる信用保証がなければ、誰も手を出しません。
ビットコイン自体も当初はこれと同じでした。しかし、徐々に知名度が上がっていくと、それにともない社会的な信用能力が上がるため、価格は上昇していきます。
仮想通貨の取引所に上場する
仮想通貨には、株式と同じように取引所があります。上場することで誰でも簡単に買うことができるようになり、利便性が上がるため価格が上昇します。
利便性が高くなり将来需要が高まる
仮想通貨で決済できる場所が増えるようになると、仮想通貨の利便性が高くなります。それにともない利用者が増えるため、将来需要が高まり、価格が上昇していきます。
経済情勢が不安定になり通貨安が起こる
円を使っている私たちにとっては、自国通貨の信用力の方が仮想通貨よりも圧倒的に高いですが、それは世界の中でも一部の国に過ぎません。
後進国の多くが発行している通貨にはまだまだそれほどの信用能力がないため、そういった国々で通貨安がいったん起こると、ドルや円などと並んで仮想通貨などに一時的に避難する傾向があります。
実際に、アルゼンチンのペソが急落した2019年の11月には、他国の取引所よりも32%も高い「1ビットコイン=12,300ドル」の値がついています。「金は不況に強い」と言われていますが、この点もビットコインは金と似た性質を持っています。
ビットコインが急上昇している理由について
近年ビットコイン価格は上がり続けていますが、その価格はここ1カ月間だけでも約2倍に急騰しています。この背景には何があると考えられるのでしょうか?
背景① IMFが事実上デジタル通貨の普及を容認
2020年10月19日に、IMF(国際通貨基金)はデジタル通貨に関する報告書を発表しました。この報告書は、デジタル通貨は今後も普及し続け、それが加速した場合国際金融市場での流動性が高まり、相対的に基軸通貨としてのドルの影響力が弱まる可能性を指摘していました。
この報告書は、IMFによる事実上のデジタル通貨容認と捉えられたため、ビットコインの急激な上昇とドル安を招いていると言われています。
背景② デジタル通貨容認派のバイデン氏が大統領選に勝利
今回のアメリカ合衆国大統領選で勝利した民主党のバイデン氏は、ドルも含めたデジタル通貨に対して容認する発言をたびたび行っています。
ドルも人民元と並びデジタル化へ舵を切ると市場は見ているため、それにともない仮想通貨市場が高騰しています。
背景③ ビットコインは金に近い性質を持っているため
ビットコインの基本設計は、金本位制度における通貨政策と考え方が近いため、インフレに強いと考えられています。
新型コロナウイルスによる経済的なダメージにより、世界各国は大型の財政出動を余儀なくされており、今後金利の上昇によりインフレを招く恐れがあります。そのため、インフレに強い金に近い性質を持つビットコインを保有する流れができていると考えられています。
仮想通貨の今後はどうなるのか?
仮想通貨は、今後もその市場を大きくしていくと考えられます。ただし、現状では市場規模が為替市場や国債先物市場などと比べるとまだまだ小さいため、それほど大きな影響力を及ぼす存在になるとは今のところ考えられていません。
ただし、GAFAの一角を担うフェイスブックは2019年6月に仮想通貨「リブラ」の基本構想を発表し、仮想通貨の発行を虎視眈々と狙っています。フェイスブックの財力と世界中の利用者数に裏打ちされた信用力があれば、発展途上国の通貨の信用力を凌駕することは難しいことではありません。
今後、GAFAのような超巨大企業体が仮想通貨に本格的に進出した場合は、仮想通貨市場が一気に拡大する可能性があります。
まとめ
ビットコインの登場は、社会全体がデジタル化へ向かう流れの中では必然とも言えるものでした。しかし、今のところドルや円などの通貨と比べると市場規模が極めて小さいため、短期的に値動きの幅が大きく、資産運用を行う際にポートフォリオの選択肢の一つとしてビットコインを持つことはまだまだ難しいと言えます。
しかし、急激に変わりゆく社会を生きている一員として、記念に持ってみることには意義があるのかもしれません。